学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §13 疾患別各論 四肢循環障害 / QJ28P062

理由で解く 柔道整復師

QJ28P062 整形外科学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問62
問題
静脈血栓塞栓症のリスクが低いのはどれか。
選択肢
1 上肢手術
2 人工股関節手術
3 大腿骨骨折手術
4 多発外傷
解答
正解1(上肢手術)
解説

静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症)は下肢の血流がうっ滞する状況で起こります。上肢手術は下肢を動かせるため、股関節・大腿骨・多発外傷に比べてリスクが明らかに低くなります。

血栓形成はウィルヒョウの三徴(血流のうっ滞、血管内皮の損傷、血液凝固能の亢進)で説明できます。人工股関節置換術や大腿骨骨折手術では、術中の下肢の過度な屈曲・回旋操作によって大腿静脈が圧迫・屈曲し、さらに骨髄操作や骨折そのもので血管内皮が傷つきます。術後は患肢の安静とベッド上生活で下腿の筋ポンプが働かず、外傷・手術侵襲で凝固能が高まるという三拍子がそろいます。多発外傷では加えて長期臥床や脊髄損傷、抗凝固が使いにくい出血リスクが重なり、リスクは最も高くなります。一方、上肢手術では早期に歩行でき、下肢の静脈還流が保たれるため発生は少数です。対策としては、可能な範囲で早期離床と足関節の自動運動、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫、リスクに応じた抗凝固療法を組み合わせます。術後に片側の下腿の腫脹・熱感・把握痛を認めたら、自己判断でマッサージせず速やかに医師に連絡することが大切です。

✓ 1. リスクが低い(これが答え)
上肢手術
下肢の静脈還流が保たれ、術後早期から歩行できるため血流うっ滞が起こりにくく、静脈血栓塞栓症の発生率は低い手術です。したがって「リスクが低い」ものとしてこれが正解です。
✗ 2. リスクが高い(答えではない)
人工股関節手術
術中の下肢の屈曲・回旋操作による静脈の圧迫と内皮損傷、骨髄操作、術後の患肢安静が重なり、下肢整形外科手術の中でも高リスクに分類されます。理学的予防と薬物的予防の適応となる代表例です。
✗ 3. リスクが高い(答えではない)
大腿骨骨折手術
高齢者に多く、受傷から手術までの臥床期間、骨折そのものによる血管内皮損傷と凝固能亢進が加わるため高リスクです。早期手術と早期離床が予防としても重要になります。
✗ 4. リスクが高い(答えではない)
多発外傷
広範な組織損傷による凝固能亢進、長期臥床、脊髄損傷や骨盤骨折の合併、出血のため抗凝固薬を使いにくい事情が重なり、最高リスク群とされます。
ポイント
  • 血栓形成の三条件=ウィルヒョウの三徴(血流うっ滞・内皮損傷・凝固能亢進)。
  • 高リスク:人工股関節/人工膝関節置換術、大腿骨近位部骨折手術、多発外傷、脊髄損傷
  • 上肢手術は下肢が動かせるためリスクが低い。
  • 予防=早期離床+足関節の自動運動+弾性ストッキング/間欠的空気圧迫+(適応があれば)抗凝固薬。
  • 片側下腿の腫脹・熱感・把握痛、突然の呼吸困難や胸痛は肺塞栓を疑い、直ちに医師へ連絡する。
比較表
状況血流うっ滞内皮損傷凝固能亢進リスク
上肢手術少ない下肢になし軽度
人工股関節手術ありありあり
大腿骨骨折手術あり(術前臥床も)ありあり
多発外傷強い(長期臥床)広範強い最高
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