学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §19 腹部外傷(救急法) / QJ28P055

理由で解く 柔道整復師

QJ28P055 外科学概論

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問55
問題
腹部外傷で腹腔内遊離ガス像を認めるのはどれか。
選択肢
1 肝損傷
2 腎損傷
3 脾損傷
4 消化管穿孔
解答
正解4(消化管穿孔)
解説

腹腔内遊離ガス(free air)は、本来ガスが存在しない腹腔にガスが漏れ出た所見であり、消化管の内腔と腹腔がつながったこと、すなわち消化管穿孔を意味する。よって4が正解。

消化管の内腔には常にガスが存在するため、壁に穴があけばガスが腹腔内に漏れる。ガスは腹腔内で上方に移動するので、立位の胸部・腹部X線では横隔膜下に三日月状の透亮像として写る。立位がとれない患者では左側臥位での撮影が有用で、CTならごく少量のガスも検出できる。これに対し肝・脾・腎などの実質臓器はガスを含まないため、損傷しても遊離ガスは生じず、問題となるのは出血である。腹腔内の血液貯留はエコー(FAST)で無エコー域として、また造影CTで評価される。腹部外傷後に腹膜刺激症状(筋性防御、反跳痛)と遊離ガスが揃えば消化管穿孔を強く疑い、緊急手術の対象となる。柔道整復の現場では、腹部の強い打撲後に持続する腹痛やこうした所見を認めた場合、施術で経過をみずに直ちに医療機関へつなぐ判断が求められる。

✓ 4. 正しい
消化管穿孔
消化管内腔のガスが破綻部から腹腔へ漏れ、横隔膜下の遊離ガス像として描出される。消化液が腹腔内に流出するため汎発性腹膜炎をきたし、緊急手術の適応となる。
✗ 1. 誤り
肝損傷
肝はガスを含まない実質臓器で、損傷しても遊離ガスは生じない。問題となるのは腹腔内出血で、出血性ショックに至ることがある。右季肋部の打撲で疑い、エコーやCTで評価する。
✗ 2. 誤り
腎損傷
腎は後腹膜に位置する実質臓器で、損傷の主徴は血尿と後腹膜血腫である。遊離ガスを伴うことはなく、腹腔内へのガス漏出とは病態が異なる。
✗ 3. 誤り
脾損傷
脾も実質臓器でガスを含まない。左季肋部の鈍的外傷で損傷されやすく、大量の腹腔内出血をきたす。受傷後しばらくしてから破裂する遅発性脾破裂もあり、経過観察が重要である。
ポイント
  • 腹腔内遊離ガス(free air)=管腔臓器(消化管)の穿孔を示す所見。実質臓器の損傷では生じない。
  • 立位胸部・腹部X線で横隔膜下の三日月状透亮像。立位がとれなければ左側臥位撮影やCTを用いる。
  • 実質臓器(肝・脾・腎・膵)の損傷では出血が主体。エコー(FAST)や造影CTで評価する。
  • 脾は鈍的腹部外傷で損傷されやすく、遅発性破裂に注意する。腎は後腹膜臓器で血尿が手がかり。
  • 腹部打撲後の持続する腹痛・腹膜刺激症状は緊急性が高い。施術で経過をみず速やかに医療機関へつなぐ。
比較表
臓器の種類代表例損傷時の主病態特徴的な画像所見
実質臓器肝・脾・腎・膵出血(腎は後腹膜血腫)、出血性ショックエコーでの液体貯留、造影CTでの実質断裂・血腫
管腔臓器胃・十二指腸・小腸・大腸穿孔による消化液の漏出、腹膜炎腹腔内遊離ガス(横隔膜下の三日月状透亮像)
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