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理由で解く 柔道整復師

QJ28P043 一般臨床医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問43
問題
後天性免疫不全症候群(AIDS)で正しいのはどれか。
選択肢
1 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染後、数日で発症する。
2 進行すると日和見感染症を合併する。
3 CD8陽性T細胞数が著しく減少する。
4 母子間感染は起こらない。
解答
正解2(進行すると日和見感染症を合併する。)
解説

正解は2。HIVはCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)を壊して細胞性免疫を低下させるため、進行すると健康な人では問題にならない病原体による日和見感染症を合併します。「CD4が減る」を軸にすれば他の選択肢も判定できます。

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、細胞表面のCD4分子を足がかりに侵入するため、司令塔役のCD4陽性Tリンパ球が主な標的になります。感染から2〜6週で発熱・咽頭痛・皮疹などインフルエンザ様の急性期症状が出ることがありますが数週で自然に軽快し、その後は自覚症状の乏しい無症候期が数年から10年前後続きます。この間もCD4陽性T細胞は少しずつ減り続け、おおむね200/μLを下回るころからニューモシスチス肺炎・カンジダ症・サイトメガロウイルス感染症・クリプトコッカス髄膜炎・カポジ肉腫などの指標疾患が現れ、後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断されます。感染経路は性的接触・血液を介する感染・母子感染の3つで、日常生活の接触では感染しません。この設問が出された2020年の時点で、多剤併用の抗HIV療法により免疫機能を保ち長期に安定した生活を送れるようになっており、母子感染も妊婦健診でのスクリーニング、妊娠中・分娩時の抗HIV薬投与、選択的帝王切開、人工乳への切り替えによって大きく減らせます。施術の場では、すべての人の血液・体液を感染性があるものとして扱う標準予防策を徹底することが基本です。

✓ 2. 正しい
進行すると日和見感染症を合併する。
CD4陽性T細胞の減少で細胞性免疫が働かなくなると、通常は発症しない弱毒の病原体でも感染症を起こします。ニューモシスチス肺炎、食道カンジダ症、サイトメガロウイルス網膜炎、クリプトコッカス髄膜炎、非結核性抗酸菌症などが代表で、これらの指標疾患の出現をもってAIDSと診断されます。抗HIV療法に加え、感染症ごとの予防投薬・治療が行われます。
✗ 1. 誤り
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染後、数日で発症する。
感染後2〜6週ごろにインフルエンザ様の急性感染期症状が出ることはありますが、これはAIDSの発症ではありません。その後、無治療でも数年から10年前後の無症候期を経てAIDSに至ります。この長い無症候期があるため、検査を受けなければ感染に気づきにくく、その間も他者への感染が起こりうる点が重要です。
✗ 3. 誤り
CD8陽性T細胞数が著しく減少する。
HIVはCD4分子を受容体として利用するため、減少するのはCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)です。CD8陽性T細胞(細胞傷害性T細胞)は著減せず、その結果CD4/CD8比が低下します。CD4数は病期の判定と治療効果の指標として測定され、200/μL未満が日和見感染症の起こりやすさの目安になります。
✗ 4. 誤り
母子間感染は起こらない。
経胎盤(子宮内)、分娩時の産道での血液曝露、母乳の3つの経路で母子感染は起こります。ただし妊婦健診でのHIV検査、妊娠中と分娩時の抗HIV薬投与、選択的帝王切開、母乳を避けて人工乳とする対応を組み合わせることで、感染のリスクは大幅に下げられます。早期に検査を受け適切な管理につなげることが有効な対策です。
ポイント
  • HIVの標的はCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)。CD8ではない。CD4/CD8比は低下する。
  • 経過は「急性感染期(2〜6週)→無症候期(数年〜10年前後)→AIDS期」。数日で発症はしない。
  • CD4がおおむね200/μL未満で日和見感染症(ニューモシスチス肺炎、カンジダ症など)が起こりやすい。
  • 感染経路は性的接触・血液・母子感染の3つ。母子感染は検査と治療で大きく減らせる。
  • 施術現場では、すべての人の血液・体液を感染性があるものとして扱う標準予防策を徹底する。
比較表
病期時期の目安主な状態
急性感染期感染後2〜6週発熱・咽頭痛・皮疹・リンパ節腫脹などインフルエンザ様。数週で自然に軽快
無症候期数年〜10年前後自覚症状に乏しいが、CD4陽性T細胞は徐々に減少。他者への感染は起こりうる
AIDS期CD4が200/μL前後を下回るころニューモシスチス肺炎、食道カンジダ症、サイトメガロウイルス感染症、カポジ肉腫などの指標疾患が出現
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