学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §5 診察各論 聴診 / QJ28P028

理由で解く 柔道整復師

QJ28P028 一般臨床医学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午後 問28
問題
聴診所見で正しいのはどれか。
選択肢
1 胸水貯留では声音が増強する。
2 心膜液貯留では心音が増強する。
3 急性心膜炎では心膜摩擦音を聴取する。
4 甲状腺機能亢進症では心音が減弱する。
解答
正解3(急性心膜炎では心膜摩擦音を聴取する。)
解説

正解は3。急性心膜炎では、炎症でざらついた壁側心膜と臓側心膜がこすれ合い、「心膜摩擦音」が聴こえます。聴診の問題は「音源」と「音の通り道」の2つに分けて考えると整理できます。

音が体表まで届くには、発生源から胸壁までの通り道を伝わる必要があります。液体や空気が途中に入り込むと音は伝わりにくくなり(胸水・気胸・心膜液貯留=減弱)、逆に空気を失って硬く詰まった肺実質は音をよく伝えます(大葉性肺炎の硬化期=声音伝導の増強)。ただし肺が音をよく伝えるには気管支が開通していることが前提で、気管支が詰まって肺が虚脱した無気肺では、呼吸音も声音伝導も減弱します。一方、音源そのものが強くなる状況もあります。甲状腺機能亢進症や貧血・発熱では心拍出量が増えて心臓の動きが激しくなるため、心音は増強します。摩擦音は「2枚の膜がこすれる」という特有の音で、心膜炎・胸膜炎に特徴的です。心膜炎では滲出液がたまってくると2枚の膜が離れてしまい、摩擦音がかえって消えることもあるため、経過中の音の変化にも注意します。

✓ 3. 正しい
急性心膜炎では心膜摩擦音を聴取する。
炎症を起こした心膜の表面がざらつき、心臓が拍動するたびに2枚の膜がこすれて、こするような・ひっかくような音が生じます。胸骨左縁下部で、患者に前傾坐位をとらせて呼気で息を止めてもらうと聴き取りやすくなります。前胸部痛(前傾で軽くなり、臥位や深呼吸で強くなる)を訴える人にこの音を聴いたら、心膜炎を疑って速やかに医療機関へつなぎます。
✗ 1. 誤り
胸水貯留では声音が増強する。
胸水は肺と胸壁の間に液体の層をつくるため、声の振動が体表まで伝わりにくくなり、声音伝導(声音振盪)は減弱します。呼吸音も減弱し、打診では濁音になります。声音伝導が増強するのは、肺胞の空気が滲出液に置き換わって肺が硬く詰まった大葉性肺炎の硬化期などで、気管支が開通していることが条件です。逆に気管支が閉塞して起こる無気肺では、音の通り道そのものが断たれるため、呼吸音も声音伝導も減弱します(圧迫性無気肺のように気管支が開通したまま肺が縮む場合には増強しうるという例外はありますが、国家試験で問われる無気肺は気管支閉塞によるもの=減弱側と整理しておきます)。
✗ 2. 誤り
心膜液貯留では心音が増強する。
心嚢内にたまった液体が緩衝材となって振動を吸収するため、心音はむしろ減弱し、遠くで鳴っているように聴こえます。急速に貯留して心タンポナーデに至ると、血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱の三徴(ベック三徴)がそろい、緊急を要する状態です。この所見に気づいたら直ちに救急対応につなげます。
✗ 4. 誤り
甲状腺機能亢進症では心音が減弱する。
甲状腺ホルモンの過剰により代謝と交感神経の働きが高まり、頻脈・心拍出量増加といった循環動態の亢進が起こります。その結果、心音は増強し、血流の増加による機能性の収縮期雑音を聴くこともあります。減弱ではなく増強と覚えます。ただし「亢進症だから何でも増える」わけではありません。ネガティブフィードバックによるTSHの低下、代謝亢進に伴う血中コレステロールの低下、体重の減少といった「下がる項目」も頻出なので、増える項目と減る項目を対にして押さえます。
ポイント
  • 音の通り道に液体や空気が入る(胸水・気胸・心膜液)と、音は減弱する。
  • 空気を失って硬く詰まった肺は音をよく伝えるため、大葉性肺炎の硬化期では声音伝導が増強する(気管支の開通が条件)。気管支閉塞による無気肺は減弱側。
  • 摩擦音は「2枚の膜がこすれる音」。急性心膜炎=心膜摩擦音、胸膜炎=胸膜摩擦音。
  • 心タンポナーデのベック三徴は「血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱」。緊急搬送の対象。
  • 甲状腺機能亢進症では代謝と交感神経活動が高まり、頻脈・心拍出量増加を介して心音が増強する(一方でTSH・血中コレステロール・体重は低下する。増える項目と減る項目を対で覚える)。
比較表
聴診所見増強する(強く聴こえる)状態減弱する(弱く聴こえる)状態
声音伝導・声音振盪大葉性肺炎の硬化期(肺胞が滲出液で置換され、かつ気管支が開通している状態)胸水貯留、気胸、肺気腫、胸膜肥厚(間に液体・空気・厚い膜が入る)、無気肺(気管支閉塞によるもの)
心音甲状腺機能亢進症、貧血、発熱、運動後(心拍出量が増える)心膜液貯留・心タンポナーデ、高度肥満、肺気腫(心臓と胸壁の間に緩衝物)
摩擦音急性心膜炎(心膜摩擦音)、胸膜炎の初期(胸膜摩擦音)液体が多量にたまって2枚の膜が離れると消失することがある
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