学習トップ理由で解く 柔道整復師運動学 ▸ §6 歩行 / QJ28A114

理由で解く 柔道整復師

QJ28A114 運動学

出典:第28回柔道整復師国家試験(2020)午前 問114
問題
正常の立脚期で歩行を加速させるのはどれか。
選択肢
1 前脛骨筋
2 大腿四頭筋
3 ハムストリングス
4 下腿三頭筋
解答
正解4(下腿三頭筋)
解説

立脚終期に足関節を底屈させて身体を前方へ押し出すのは下腿三頭筋である。したがって正解は4。

歩行の推進力は、立脚後半に支持脚の足関節が底屈して床を蹴り出す局面(踵離地から足趾離地にかけての蹴り出し、push-off)でつくられる。腓腹筋とヒラメ筋からなる下腿三頭筋が求心性に収縮して踵を持ち上げ、身体重心を前上方へ送り出す。これが歩行における主要な加速源であり、下腿三頭筋が「加速筋」と呼ばれるゆえんである。これに対して前脛骨筋・大腿四頭筋・ハムストリングスは、いずれも踵接地の前後に遠心性収縮で働き、落下する足部や屈曲する膝、振り出された下腿の勢いを受け止める「減速筋(制動筋)」である。筋名を並べて丸暗記するより、「その筋が働く時期に身体は速くなっているのか、遅くなっているのか」で仕分けると取り違えにくい。

✓ 4. 正しい
下腿三頭筋
立脚終期から前遊脚期にかけて求心性に収縮し、足関節を底屈させて踵を床から離し、身体を前上方へ押し出す。歩行速度を上げようとしたときにまず活動が高まるのもこの筋で、歩行を加速させる筋の代表である。
✗ 1. 誤り
前脛骨筋
踵接地から荷重応答期に遠心性収縮し、足部が急に底屈して足底が床に叩きつけられるのを制動する。遊脚期には足関節を背屈位に保ってつま先が床に引っかからないようにする。制動と足部の引き上げが役割で、前方への推進力は生まない。
✗ 2. 誤り
大腿四頭筋
荷重応答期に遠心性収縮して膝の屈曲を制御し、体重を受け止めて衝撃を吸収する。立脚初期の支持に不可欠だが、働く方向は膝の伸展であって身体を前へ送り出す推進力にはならない。
✗ 3. 誤り
ハムストリングス
遊脚終期に振り出された下腿の伸展を遠心性に制動し、続く踵接地から荷重応答期には股関節を伸展方向に働かせて体幹を安定させる(この時期は求心性〜等尺性の活動である)。前方への振り出しにブレーキをかける、代表的な減速筋である。
ポイント
  • 加速(推進)を担うのは下腿三頭筋。立脚終期の足関節底屈=蹴り出しが歩行の主要な推進源。
  • 減速(制動)を担うのは前脛骨筋・大腿四頭筋・ハムストリングス。いずれも遠心性収縮で衝撃吸収や行き過ぎの制動を行う(ハムストリングスは荷重応答期には股関節伸展筋として求心性〜等尺性にも働くが、これは支持の安定化であって前方への推進力ではない)。
  • 前脛骨筋が働かないと(総腓骨神経麻痺)、踵接地直後に足底が落ちる現象と遊脚期のつま先の引っかかりが生じ、下垂足・鶏歩となる。
  • 下腿三頭筋が働かないと(脛骨神経麻痺、アキレス腱断裂)踵離地が起こらず蹴り出しが弱まり、歩幅と歩行速度が低下する。
  • 「働く時期」と「収縮様式(求心性か遠心性か)」をセットで覚えると、加速筋・減速筋の区別が自動的につく。収縮様式は同じ筋でも時期によって変わるので、時期とセットで押さえるのがこつ。
比較表
主に働く時期収縮様式役割加速/減速
下腿三頭筋立脚終期〜前遊脚期(踵離地〜足趾離地)求心性足関節底屈で身体を前上方へ押し出す加速
前脛骨筋踵接地〜荷重応答期/遊脚期遠心性(遊脚期は求心性)足部の落下を制動、遊脚期の背屈保持減速
大腿四頭筋荷重応答期(立脚初期)遠心性膝屈曲を制御し体重を受け止め衝撃吸収減速
ハムストリングス遊脚終期〜荷重応答期遠心性(遊脚終期)/求心性〜等尺性(荷重応答期)下腿の振り出しを制動(遊脚終期)、股関節伸展で支持を安定(荷重応答期)減速
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