学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §10 疾患別各論 非感染性軟部・骨関節疾患 / QJ27P060

理由で解く 柔道整復師

QJ27P060 整形外科学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問60
問題
シャルコー(Charcot) 関節の原因疾患となりうるのはどれか。
選択肢
1 糖尿病性神経炎
2 神経痛性筋萎縮症
3 エルプ(Erb)麻痺
4 シャルコー・マリー・トゥース (Charcot-Marie-Tooth)病
解答
正解1(糖尿病性神経炎)
解説

シャルコー関節(神経病性関節症)は、痛覚と深部感覚を失った関節が「痛みという警報」なしに使われ続けて壊れる病態。選択肢のうち高度の感覚脱失を残しうるのは糖尿病性神経障害である。

関節は、痛覚と固有感覚によって「これ以上動かすと危ない」という信号を出し、筋を反射的に働かせて無理な運動を止めている。感覚が脱落するとこの防御機構が働かず、微小外傷と靱帯の弛緩が積み重なって軟骨と軟骨下骨が壊れていく。特徴的なのは、高度の骨破壊と旺盛な骨増殖・遊離体が同居する画像所見と、これほど腫れて変形しているのに痛みが乏しいという症状と所見の解離である。古典的には脊髄癆(梅毒)による膝関節、脊髄空洞症による肩・肘関節が代表とされてきたが、現在の日本で最も多いのは糖尿病性神経障害による足部(リスフラン関節・ショパール関節)の破壊である。糖尿病患者の足が腫れて熱をもったときは、蜂窩織炎や化膿性関節炎との鑑別を要するため自己判断で経過をみず、免荷と装具、血糖管理を含めて専門医と連携して対応する。

✓ 1. 正しい
糖尿病性神経炎
糖尿病では長い神経から侵される遠位対称性の多発神経障害が起こり、足底の痛覚・温度覚・振動覚が失われる。感覚が抜けた足で歩行を続けると、中足部の関節に微小外傷が蓄積して崩れ、足底のアーチが落ちる特徴的な変形(揺り椅子状変形)に至る。潰瘍を伴えば感染も加わるため、定期的な足の観察(フットケア)と適切な履物、免荷が予防の柱になる。
✗ 2. 誤り
神経痛性筋萎縮症
肩や上肢の激痛が先行し、痛みが引く頃に腕神経叢支配筋の麻痺と萎縮が現れる病態で、障害の主体は運動枝にある。感覚障害があっても限局的で、関節を壊すほどの痛覚脱失には至らない。多くは数か月から数年で回復に向かうため、可動域維持と筋力の再教育が中心になる。
✗ 3. 誤り
エルプ(Erb)麻痺
エルブ(Erb)麻痺は分娩麻痺の上位型(C5・C6)で、三角筋・棘上筋・上腕二頭筋などが麻痺し、上肢が内転・内旋・前腕回内位をとる。問題になるのは肩関節の拘縮や後方亜脱臼、成長に伴う変形であり、感覚脱失に起因して関節が破壊される神経病性関節症とは成り立ちが異なる。早期からの良肢位保持と可動域訓練が要となる。
✗ 4. 誤り
シャルコー・マリー・トゥース (Charcot-Marie-Tooth)病
名前は似ているが別の疾患で、遺伝性の運動感覚ニューロパチーである。下腿遠位から進む筋萎縮(逆シャンパンボトル様の下腿)、凹足、槌趾、下垂足と鶏歩が特徴で、感覚障害は遠位優位かつ比較的軽度にとどまる。関節破壊を主症状とはせず、装具による下垂足への対応と変形に応じた足部の管理が中心になる。
ポイント
  • 本態は痛覚・深部感覚の脱失で関節の防御機構が失われ、微小外傷が反復して関節が破壊される。
  • 「高度の破壊+旺盛な骨増殖・遊離体」が同居し、変形の割に痛みが乏しい(症状と所見の解離)。
  • 古典的原因は脊髄癆(膝)と脊髄空洞症(肩・肘)。現在の最多は糖尿病性神経障害による足部。
  • Charcot-Marie-Tooth病は名前が似るだけの別疾患(凹足・下垂足・鶏歩)。
  • 糖尿病患者の足の腫脹・熱感は感染との鑑別が必要。免荷・装具・血糖管理を専門医と進める。
比較表
原因疾患失われる感覚好発する関節
糖尿病性神経障害足の痛覚・温度覚・振動覚(遠位対称性)足部(リスフラン・ショパール関節)
脊髄癆(梅毒)後索障害による深部感覚膝、股、足
脊髄空洞症解離性感覚障害(温痛覚)肩、肘(上肢)
二分脊椎・脊髄損傷損傷高位以下の感覚足部、膝
ハンセン病末梢神経障害による痛覚足部、手
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