学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §20 臨床実地問題 / QJ27P054

理由で解く 柔道整復師

QJ27P054 外科学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問54
問題
28歳の男性。バイクを運転中に転倒し右側胸部を強打した。意識は清明。右側胸部に著明な疼痛があり、呼吸困難を訴えている。胸部エックス線検査で右第5・6肋骨骨折と右肺完全虚脱がみられた。まず行うべき治療はどれか。
選択肢
1 外固定
2 開胸手術
3 気管内挿管
4 胸腔ドレナージ
解答
正解4(胸腔ドレナージ)
解説

肋骨骨折に伴って右肺が完全に虚脱し、呼吸困難が出ている外傷性気胸。まず胸腔ドレナージで空気を抜き、肺を再膨張させる。

肋骨骨折の骨片が肺を傷つけると、胸腔内へ空気が漏れて胸腔の陰圧が失われ、肺が縮む(外傷性気胸)。本例は右第5・6肋骨骨折に右肺の完全虚脱を伴い、しかも呼吸困難を訴えている。つまり、そのままでは酸素化を保てない段階にある。さらに空気の漏れ口が一方向弁のように働くと緊張性気胸となり、胸腔内圧が上がって縦隔が健側へ偏位し、静脈還流が絶たれて短時間で心停止に至る。したがって治療の第一手は、胸腔にドレーンを入れて空気を持続的に抜き、肺を膨らませることである。中腋窩線上の第4〜5肋間あたりから挿入し、水封式の低圧持続吸引につなぐ。空気漏れが止まって肺が膨らめば、肋骨骨折そのものは保存的に治癒する。

✓ 4. 正しい
胸腔ドレナージ
胸腔に溜まった空気(血液があれば血液も)を体外へ導いて胸腔内の陰圧を回復させ、虚脱した肺を再膨張させる。呼吸困難という最も緊急度の高い問題に直接効く唯一の選択肢であり、同時に緊張性気胸への進展も防げる。挿入後は排液量と空気漏れ(エアリーク)の有無、呼吸状態を継続して観察し、肺の再膨張を胸部エックス線で確認する。
✗ 1. 誤り
外固定
肋骨骨折の疼痛を和らげる目的でバストバンドなどを用いることはあるが、胸腔に漏れた空気は抜けず、虚脱した肺は膨らまない。むしろ強く締めれば胸郭の動きを妨げ、換気量が減って無気肺や肺炎を招く。本例でまず行うべき治療にはならない。
✗ 2. 誤り
開胸手術
ドレナージでは制御できない大量の血胸や持続する出血、太い気管支・大血管・横隔膜の損傷が疑われる場合に検討する。本例は意識清明で、まず脱気して肺を膨らませれば改善が見込める段階であり、いきなり開胸する適応ではない。まずドレナージを行い、その反応を見て判断する。
✗ 3. 誤り
気管内挿管
本例は意識清明で自発呼吸があり、気道そのものは保たれている。この状態で挿管して陽圧換気を始めると、胸腔への空気漏れが増えて気胸が悪化し、緊張性気胸を誘発しかねない。仮に呼吸不全が進んで挿管や陽圧換気が必要になる場合でも、先に胸腔ドレーンを入れて脱気の経路を確保してから行う。
ポイント
  • 肋骨骨折+呼吸困難+肺の虚脱=外傷性気胸。まず行うのは胸腔ドレナージによる脱気と肺の再膨張。
  • 空気の漏れ口が一方向弁になると緊張性気胸。縦隔偏位と静脈還流の途絶で急速にショック・心停止に至る。
  • 気胸のある患者への陽圧換気(気管内挿管)は気胸を悪化させる。行うならドレーンを先に入れる。
  • 胸郭の外固定は疼痛緩和にとどまり、締めすぎると換気を妨げて無気肺・肺炎を招く。
  • 開胸手術は、ドレナージで制御できない大量出血や気管支・大血管損傷が疑われる場合に検討する。
比較表
選択肢何ができるか本例での位置づけ
胸腔ドレナージ胸腔の空気を抜き、陰圧を回復して肺を再膨張させるまず行う治療
外固定肋骨骨折の疼痛を和らげる気胸は改善しない。締めすぎは換気を妨げる
開胸手術大血管・気管支損傷や制御できない出血に対処するドレナージで改善しないときに検討
気管内挿管気道確保と陽圧換気陽圧で気胸が悪化しうる。必要ならドレーンを先に
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