学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §19 腹部外傷(救急法) / QJ27P053

理由で解く 柔道整復師

QJ27P053 外科学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問53
問題
交通外傷により損傷を受けた臓器と胸腹部CT 検査所見の組合せで誤っているのはどれか。
選択肢
1 肺気胸
2 肝腹腔内出血
3 脾後腹膜出血
4 消化管 -腹腔内遊離ガス像
解答
正解3(脾後腹膜出血)
解説

脾臓は腹膜に包まれた腹腔内の臓器なので、損傷すれば腹腔内出血になる。後腹膜出血としている選択肢3が誤り。

腹部外傷のCTを読むときは、まず「傷ついた臓器が腹膜の内側にあるのか、後ろ(後腹膜腔)にあるのか」を思い出すと、血液がどこに溜まるかを予想できる。肝、脾、胃、小腸、横行結腸などは腹腔内臓器で、破れれば血液は腹腔に広がり、横隔膜下、モリソン窩(肝腎陥凹)、ダグラス窩といった低い場所に貯留する。これに対し腎、尿管、膵、十二指腸の大部分、上行・下行結腸、腹部大動脈、下大静脈は後腹膜にあり、損傷すると後腹膜血腫となる。本問には画像が添えられているが、判断の軸はこの解剖学的な位置関係であり、臓器名と出血の場所が対応しているかを照らし合わせれば答えは出る。

✓ 3. 誤り(これが答え)
脾後腹膜出血
「脾—腹腔内出血」であれば正しい組合せになる。脾臓は左上腹部で腹膜に包まれた腹腔内臓器なので、破裂すれば出血は腹腔内に広がる。左側胸部から左季肋部を強打した際に、左第9〜11肋骨骨折を伴って損傷しやすく、腹腔内に溜まった血液が左横隔膜を刺激すると左肩へ放散する痛み(ケーア徴候)が出る。出血量が多ければ出血性ショックに至るため、左側胸部・左季肋部の強打では脾損傷を念頭に置き、バイタルの変化に注意して速やかに医療機関へつなぐ。後腹膜出血をきたす代表は腎損傷、膵損傷、骨盤骨折、腹部大動脈損傷である。
✗ 1. 正しい(答えではない)
肺気胸
肋骨骨折の骨片が肺を刺したり、肺自体が裂けたりすると、胸腔へ空気が漏れて肺が虚脱する(外傷性気胸)。CTでは胸腔内の空気と虚脱した肺として捉えられる。臓器と所見の対応として正しい。
✗ 2. 正しい(答えではない)
肝腹腔内出血
肝臓は右上腹部の腹腔内臓器で、右側胸部から右季肋部の強打で損傷しやすい。破裂すれば腹腔内出血となり、モリソン窩などに血液が溜まる。実質臓器で血流が豊富なため、出血量が多く重症化しやすい。
✗ 4. 正しい(答えではない)
消化管 -腹腔内遊離ガス像
消化管が破れると内腔のガスが腹腔へ漏れ、CTでは横隔膜下や肝表面に遊離ガス像として写る。汚染した内容物が腹腔に広がって腹膜炎に進むため、緊急手術の適応となる。
ポイント
  • 脾は腹腔内臓器。損傷すれば腹腔内出血となり、後腹膜出血にはならない。
  • 後腹膜にあるのは腎・尿管・膵・十二指腸の大部分・上行下行結腸・腹部大動脈・下大静脈。損傷すると後腹膜血腫。
  • 脾損傷は左側胸部〜左季肋部の強打+左第9〜11肋骨骨折で起こりやすく、左肩への放散痛(ケーア徴候)が手がかり。
  • 腹腔内遊離ガス像は消化管穿孔のサイン。腹膜炎に進むため緊急手術の適応。
  • 腹部外傷の所見は「臓器が腹腔内か後腹膜か」で出血の溜まる場所が決まる。この一点で組合せ問題は解ける。
比較表
臓器位置損傷時の主な所見
腹腔内腹腔内出血(モリソン窩などに貯留)
腹腔内腹腔内出血、左肩への放散痛(ケーア徴候)
消化管腹腔内腹腔内遊離ガス像、腹膜炎
後腹膜後腹膜血腫、血尿
膵・十二指腸後腹膜後腹膜出血。症状が遅れて出やすい
胸腔気胸・血胸
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