学習トップ / 理由で解く 柔道整復師 / 一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ27P043
理由で解く 柔道整復師
訴えは「右手足が動きにくい」。運動の指令が通る経路と、それがどこで左右に渡るかを思い出せば答えは決まる。右被殻の出血で障害されるのは左の手足であり、この訴えの説明としては左右が合わない。
大脳の運動野から出た指令は皮質脊髄路(錐体路)を下り、延髄下端の錐体交叉で大部分が反対側へ渡って脊髄の前角に至る。したがって、交叉より上(大脳・内包・被殻・中脳・橋・延髄上部)の病変は反対側の手足に麻痺を出し、交叉より下(頸髄以下)の病変は同じ側に出る。この一本の線を頭に置けば、右手足の動かしにくさを錐体路の麻痺として説明できるのは〈左の大脳〜左の脳幹の病変〉か〈右側を巻き込む頸髄の病変〉に絞れる。
ただし注意したいのは、「動きにくい」という訴えが麻痺だけを指すとは限らない点である。無動・寡動や筋強剛、痛み、失調でも患者は同じ言い方をするので、錐体路以外の機序も候補として残しておく必要がある。
本問は「誤っているのはどれか」という否定形なので、選ぶべきは訴えを説明できない選択肢である。四つを順に当てはめると、錐体路の左右関係が明確に破綻するのは右被殻部の脳出血だけで、残る三つはいずれも——錐体路の麻痺として、あるいは麻痺以外の機序で——右手足の動かしにくさを説明しうる。
臨床的には、高齢者が路上で倒れているという状況では原因を一つに決めつけない姿勢が要る。脳血管障害で倒れたのか、転倒の衝撃で頸髄を痛めたのか、もともとの神経疾患のために転びやすかったのか——選択肢1・2・4はいずれもその可能性を並べたものである。現場では頸椎を動かさないよう頭頸部を保持したまま、意識・呼吸・麻痺の左右を確認して救急要請につなぐ。
| 選択肢の病変 | 症状の機序 | 錐体交叉との位置関係 | 症状が出る側 | 「右手足が動きにくい」と合うか |
|---|---|---|---|---|
| 右被殻部の脳出血 | 錐体路(内包後脚)の障害 | 交叉より上(大脳) | 左(反対側)の片麻痺 | 合わない → これが答え |
| 橋左側の脳出血 | 錐体路の障害 | 交叉より上(脳幹) | 右(反対側) | 合う |
| 頸髄損傷(右側優位の不全損傷) | 錐体路の障害 | 交叉より下(脊髄) | 右(同側) | 合う |
| パーキンソン(Parkinson)症候群 | 錐体路の麻痺ではない(無動・筋強剛) | —(左右の法則の対象外) | 左右差をもった無動・筋強剛 | 合いうる(麻痺以外の機序として) |
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