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理由で解く 柔道整復師

QJ27P042 一般臨床医学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午後 問42
問題
33歳の女性。5年前から日光過敏を自覚していた。1年前から口内炎を繰り返し、6か月前から両側の手関節の関節痛と脱毛を認めた。1か月前から発熱が持続したため来院した。体温 38.2°C。尿所見では、タンパク陽性、潜血陽性。血液検査では、血小板減少、抗二本鎖DNA 抗体陽性を認めた。最も考えられる疾患はどれか。
選択肢
1 皮膚筋炎
2 全身性強皮症
3 全身性エリテマトーデス
4 ベーチェット(Behçet)病
解答
正解3(全身性エリテマトーデス)
解説

若い女性に、日光過敏・口内炎・両側の手関節痛・脱毛・発熱がそろい、さらに尿の異常(タンパク陽性・潜血陽性)、血小板減少、抗二本鎖DNA抗体陽性がある。これだけ多くの臓器がまとめて障害される病気は全身性エリテマトーデス(SLE)である。

SLEは自己抗体と免疫複合体が全身のあちこちに沈着して炎症を起こす膠原病で、20〜40代の女性に圧倒的に多い(男女比はおよそ1対9)。この症例を臓器ごとに並べ直すと、皮膚(日光過敏・脱毛)、粘膜(繰り返す口内炎=口腔潰瘍)、関節(両側手関節の関節痛)、腎(タンパク尿・血尿=ループス腎炎)、血液(血小板減少)、全身(持続する発熱)となり、どれか一つの臓器の病気では説明できない。この「多臓器にまたがる」という形そのものがSLEの姿である。
決定打は抗二本鎖DNA(抗ds-DNA)抗体である。抗核抗体は膠原病全般で広く陽性になるためスクリーニング向きだが、抗ds-DNA抗体と抗Sm抗体はSLEをほぼ名指しする特異度の高い抗体で、とくに抗ds-DNA抗体はループス腎炎の活動性と並んで上下する。活動期には補体(C3・C4・CH50)が消費されて低下することもあわせて覚えたい。
柔道整復の現場では、若い女性が手関節の痛みを訴えて来院したとき、発熱・皮疹・脱毛・尿の異常が重なっていないかを問診で拾いたい。外傷歴のない両側性の関節痛に全身症状が伴う場合は、施術を続けるのではなく内科(膠原病内科・リウマチ科)の受診をすすめるのが適切な対応である。

✓ 3. 正しい
全身性エリテマトーデス
提示された所見が、SLEの分類基準に挙げられる項目とほぼ一対一で対応する。日光過敏、口腔潰瘍(繰り返す口内炎)、両側手関節の関節痛、脱毛、腎障害(タンパク尿・血尿)、血液異常(血小板減少)、発熱、そして抗ds-DNA抗体陽性——ここまでそろえば他の疾患を考える余地はない。好発年齢・性別(33歳女性)も典型的である。なお一般論として、SLEの関節症状は関節リウマチと違って変形やびらんを残しにくい非びらん性関節炎が特徴とされる(本症例では画像所見の記載がないため、びらんの有無は判定できない)。紫外線は増悪因子なので、確定後は遮光の生活指導が基本になる。
✗ 1. 誤り
皮膚筋炎
皮膚筋炎の主役は「筋」と「特有の皮疹」である。上眼瞼の紫紅色の腫れ(ヘリオトロープ疹)、手指関節背面の角化性紅斑(ゴットロン徴候)に、階段が上れない・髪が結えないといった近位筋優位の筋力低下が加わり、血液ではCK・アルドラーゼなど筋原性酵素が上昇する。本症例には筋力低下も筋酵素上昇も記載がなく、抗ds-DNA抗体は皮膚筋炎の指標ではない。なお中高年発症では悪性腫瘍の合併検索が必須という点も、SLEとは性格が異なる。
✗ 2. 誤り
全身性強皮症
全身性強皮症は「硬くなる」病気で、ほぼ全例に先行するレイノー現象(寒冷で指が白→紫→赤と変色する)があり、手指の先端から始まる皮膚硬化が中心症状となる。進行すると嚥下障害や間質性肺炎、腎クリーゼを来す。自己抗体は抗トポイソメラーゼI(抗Scl-70)抗体や抗セントロメア抗体で、抗ds-DNA抗体ではない。本症例にはレイノー現象も皮膚硬化も記載がなく、逆に日光過敏・口腔潰瘍・血小板減少という強皮症らしくない所見が並んでいる。
✗ 4. 誤り
ベーチェット(Behçet)病
口内炎を繰り返す点だけはベーチェット病を思わせるが、ベーチェット病の口腔アフタは強い痛みを伴う。診断は四主症状——再発性の口腔アフタ性潰瘍、皮膚症状(結節性紅斑・毛嚢炎様皮疹)、眼症状(ぶどう膜炎による視力低下・眼痛)、外陰部潰瘍——を軸に行い、四つがすべてそろえば完全型、一部にとどまれば不全型として扱う。特異的な自己抗体はなく、HLA-B51との関連や針反応陽性が補助所見となる。本症例には外陰部潰瘍も眼症状も記載がなく、逆に日光過敏、脱毛、腎炎を思わせる尿所見、抗ds-DNA抗体陽性という、ベーチェット病では説明できない所見が並んでいる。
ポイント
  • 「若年女性+多臓器」でまずSLEを疑う。20〜40代の女性に好発し、男女比はおよそ1対9。
  • 典型の組み合わせ——皮膚・粘膜(日光過敏、蝶形紅斑、無痛性の口腔潰瘍、脱毛)/関節(変形を残しにくい非びらん性関節炎)/腎(タンパク尿・血尿)/血液(白血球減少・血小板減少・溶血性貧血)/全身(発熱)。
  • 抗体の使い分け——抗核抗体はスクリーニング(陰性ならSLEはまず考えにくい)、抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体が確定に効く。抗ds-DNA抗体は疾患活動性と連動し、活動期には補体(C3・C4・CH50)が低下する。
  • 予後を左右するのは腎(ループス腎炎)と中枢神経。だからこそ尿タンパク・尿潜血の記載を読み飛ばさない。
  • ベーチェット病は完全型・不全型で診断する。四主症状(再発性口腔アフタ・皮膚症状・眼症状・外陰部潰瘍)がすべてそろえば完全型、一部のみなら不全型。「全部そろわないと診断できない」わけではない。
  • 紫外線は増悪因子。遮光の指導が生活面の柱。外傷歴のない両側性関節痛に発熱・皮疹・尿異常が重なるときは、施術を継続せず内科受診をすすめる。
比較表
疾患好発皮膚・粘膜の特徴特徴的な検査所見見分けの決め手
全身性エリテマトーデス20〜40代の女性(男女比約1対9)日光過敏、蝶形紅斑、無痛性の口腔潰瘍、脱毛抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体陽性、補体低下、血小板減少腎・血液・関節など多臓器に同時に及ぶ
皮膚筋炎中高年(小児にも一峰)、女性にやや多いヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候CK・アルドラーゼ上昇、筋電図・筋生検異常近位筋の筋力低下+特有の皮疹
全身性強皮症30〜50代の女性レイノー現象、指先から始まる皮膚硬化抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体、抗セントロメア抗体「硬くなる」+レイノー現象
ベーチェット(Behçet)病20〜40代、男女差は小さい有痛性の再発性口腔アフタ、外陰部潰瘍、結節性紅斑特異的自己抗体なし。HLA-B51、針反応陽性口腔アフタ+眼症状(ぶどう膜炎)。四主症状が全部そろえば完全型、一部なら不全型
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