学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §21 臨床実地問題 / QJ26P043

理由で解く 柔道整復師

QJ26P043 一般臨床医学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問43
問題
65歳の男性。3年前からの歩行障害を主訴に来院した。四肢の振戦、固縮、体の動きにくさ及び姿勢反射障害を認めた。考えられる診断はどれか。
選択肢
1 ハンチントン (Huntington) 病
2 パーキンソン(Parkinson)病
3 アルツハイマー(Alzheimer) 病
4 クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt-Jakob)病
解答
正解2(パーキンソン(Parkinson)病)
解説

安静時振戦・筋固縮・動きにくさ(無動/寡動)・姿勢反射障害は、パーキンソン病の四大徴候である。3年かけて緩徐に進行した歩行障害という経過も合致し、正解は 2 である。

パーキンソン病では、中脳黒質緻密部のドパミン作動性神経細胞が変性・脱落し、そこから線条体へ供給されるドパミンが減少する。ドパミンは大脳基底核のループで「運動を出しやすくする」向きに働くため、これが枯れると運動の始動と実行にブレーキがかかり、動作が小さく遅くなる(寡動・無動)。同時に、他動的に関節を動かすとカクカクと段階的な抵抗を感じる歯車様固縮が現れ、力を抜いた安静時に4〜6Hzの振戦(丸薬を丸めるような指の動き)が出る。ここに姿勢反射障害が加わると、前傾前屈姿勢・小刻み歩行・すくみ足・突進現象といった特徴的な歩行障害となり、本例のように歩行障害が主訴となる。神経細胞内にはα-シヌクレインを主成分とするレビー小体が出現し、症状は片側優位に始まって次第に両側へ広がるのが典型である。なお、同じ四徴候は薬剤性パーキンソニズム(抗精神病薬・制吐薬など)や、進行性核上性麻痺・多系統萎縮症といったパーキンソン症候群でも出そろうため、片側優位の発症・年単位の緩徐な進行・L-ドパへの良好な反応といった裏づけを合わせて診断する。重症度はホーエン・ヤール(Hoehn-Yahr)分類で表し、治療はL-ドパによるドパミン補充が中心となる。転倒リスクが高いため、施術では起立・方向転換時の介助と動線の環境整備を行い、主治医やリハビリテーション担当と連携して運動機能の維持を図ることが大切である。

✓ 2. 正しい
パーキンソン(Parkinson)病
四肢の振戦、固縮、体の動きにくさ、姿勢反射障害という記載は、パーキンソン病の四大徴候そのものである。歩行障害を主訴とし、3年という年単位で緩徐に進行している点も、黒質のドパミン神経が徐々に脱落していく神経変性疾患の経過に一致する。発症年齢も中高年(一般に50〜65歳頃)に多いという特徴と合う。本問は与えられた4つの選択肢のなかで比較する形式であり、残る3疾患がいずれも不随意運動の増加・認知症・急速進行といった別の病像であるため、2が正解となる。
✗ 1. 誤り
ハンチントン (Huntington) 病
ハンチントン病は常染色体顕性(優性)遺伝で、原因遺伝子のCAGリピート伸長により線条体(とくに尾状核)が変性する。中年期に、手足が踊るように勝手に動く舞踏運動という「動きが増える」不随意運動で始まり、進行に伴って性格変化や認知症を伴う。固縮・無動という「動きが減る」本例の病像とは方向が逆で、家族歴の記載もない。
✗ 3. 誤り
アルツハイマー(Alzheimer) 病
アルツハイマー病は大脳皮質から海馬にかけてアミロイドβによる老人斑と神経原線維変化が蓄積する変性疾患で、新しいことを覚えられない近時記憶障害を中核症状とする認知症である。歩行は初期には保たれ、振戦・固縮・姿勢反射障害といった錐体外路徴候は目立たない。本例には記憶障害や見当識障害の記載がなく、主訴も歩行障害であるため合致しない。
✗ 4. 誤り
クロイツフェルト・ヤコブ(Creutzfeldt-Jakob)病
クロイツフェルト・ヤコブ病は異常プリオン蛋白が脳に蓄積するプリオン病で、急速に進行する認知症とミオクローヌス(ピクッとした瞬間的な不随意運動)を特徴とし、脳波で周期性同期性放電を認める。発症から数か月で無動性無言に至るほど進行が速く、3年かけて緩やかに歩行障害が進んだ本例とは経過の時間軸がまったく異なる。
ポイント
  • パーキンソン病の四大徴候=安静時振戦・筋固縮(歯車様)・無動/寡動・姿勢反射障害。4つがそろえばまずパーキンソン病を疑うが、それだけで確定はできない。薬剤性パーキンソニズムや進行性核上性麻痺・多系統萎縮症などのパーキンソン症候群でも同じ所見が出そろうため、片側優位の発症・年単位の緩徐進行・L-ドパへの反応で裏づける(とくに発症早期から姿勢反射障害と易転倒が前景に立つ場合は、非定型パーキンソニズムを疑う手がかりになる)。
  • 病変の本体は中脳黒質緻密部のドパミン神経の変性による線条体ドパミン減少。細胞内にはα-シヌクレインからなるレビー小体が出現する。
  • 歩行は前傾前屈姿勢・小刻み歩行・すくみ足・突進(加速)現象。転倒リスクが高く、起立や方向転換時の介助が要点。
  • 基底核の病気は「動きが減る(パーキンソン病)」と「動きが増える(ハンチントン病の舞踏運動)」で対にして覚えると混同しない。
  • 進行の速さで切り分ける。年単位=パーキンソン病月単位で急速=クロイツフェルト・ヤコブ病記憶障害から始まる=アルツハイマー病
比較表
疾患主な障害部位・病理中核症状経過
パーキンソン病中脳黒質緻密部のドパミン神経/レビー小体安静時振戦・固縮・無動・姿勢反射障害年単位で緩徐に進行。片側優位に発症しL-ドパが奏効(本例に合致)
パーキンソン症候群(薬剤性・進行性核上性麻痺・多系統萎縮症など)薬剤によるドパミン遮断/黒質以外を含む多系統の変性四徴候は同様に出そろうが、左右差に乏しい・早期からの転倒・眼球運動障害・自律神経障害などを伴う薬剤性は原因薬中止で改善、非定型例はL-ドパ反応に乏しく進行が速い
ハンチントン病線条体(尾状核)/CAGリピート伸長・常染色体顕性遺伝舞踏運動、性格変化、認知症中年発症、緩徐進行だが「動きが増える」
アルツハイマー病大脳皮質・海馬/老人斑・神経原線維変化近時記憶障害を中心とした認知症緩徐進行、初期に運動症状は目立たない
クロイツフェルト・ヤコブ病脳全般/異常プリオン蛋白急速進行性認知症、ミオクローヌス、脳波の周期性同期性放電数か月で無動性無言に至る急速な経過
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