学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §10 先天性異常 / QJ27A108

理由で解く 柔道整復師

QJ27A108 病理学概論

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午前 問108
問題
催奇形因子の説明で正しいのはどれか。
選択肢
1 妊娠3か月以降の風疹感染で胎児奇形発生率が高くなる。
2 妊婦は低線量放射線曝露でも避けるべきである。
3 妊娠後期の母体のショック、出血、貧血は催奇形因子である。
4 胎児は薬剤など化学物質に対する感受性が低い。
解答
正解2(妊婦は低線量放射線曝露でも避けるべきである。)
解説

放射線は低線量でも発癌などの確率的影響に明確な閾値がないと考えられているため、妊婦への不必要な曝露は避けるのが原則です。他の3肢は、感受性の高い時期や胎児の薬物感受性についての記述が事実と逆になっています。

催奇形因子が形態異常を起こすかどうかは、曝露の時期によって大きく変わります。受精から妊娠3週末頃までは、障害を受ければ流産に至るか完全に修復されるかのどちらかで奇形を残しにくい時期(all or none)です。続く妊娠4〜10週頃は心臓・中枢神経・四肢などの器官がつくられる器官形成期で、催奇形性が最も高い臨界期にあたります。妊娠11週以降は器官の形は完成しているため、影響は形態異常よりも発育遅延や機能障害として現れます。この時間軸を先に描いてから各肢を照合すると判断がぶれません。実務としては、妊娠の可能性がある女性には施術や画像検査の前に月経・妊娠の状況を問診で確認し、必要な検査は適応を吟味したうえで防護具を用い、判断に迷うときは主治医や産科と連携して進めることが大切です。

✓ 2. 正しい
妊婦は低線量放射線曝露でも避けるべきである。
放射線の影響のうち発癌や遺伝的影響といった確率的影響には明確な閾値がないと考えられており、線量が低くてもリスクをゼロとはみなしません。したがって放射線防護では、正当化(本当に必要か)と最適化(必要最小限に)の原則に立ち、妊婦への不必要な曝露を避けます。実際には妊娠の可能性を問診で確認し、防護具の使用と適応の吟味を徹底する対応につながります。
✗ 1. 誤り
妊娠3か月以降の風疹感染で胎児奇形発生率が高くなる。
時期の関係が逆です。先天性風疹症候群のリスクが最も高いのは妊娠初期、とくに器官形成期にあたる妊娠12週(3か月)までの初感染で、それ以降は妊娠週数が進むほどリスクは下がります。主な障害は白内障、感音難聴、動脈管開存や肺動脈狭窄などの心奇形です。予防には妊娠前の抗体価確認とワクチン接種が有効です。
✗ 3. 誤り
妊娠後期の母体のショック、出血、貧血は催奇形因子である。
妊娠後期はすでに器官形成期を過ぎているため、これらは形態異常(奇形)を新たにつくる催奇形因子には当たりません。母体の循環障害や低酸素は胎児発育不全、胎児機能不全、中枢神経の機能障害などを招く重大な要因ですが、影響の現れ方が形態異常ではなく発育・機能の障害である点で区別します。
✗ 4. 誤り
胎児は薬剤など化学物質に対する感受性が低い。
事実は逆で、胎児の感受性はむしろ高いといえます。薬物代謝酵素や排泄機能が未熟なうえ、細胞分裂と分化がさかんな時期にあるため、少量でも重大な影響を受けやすいのです。サリドマイドによるアザラシ肢症、ワルファリンや抗てんかん薬、レチノイドによる奇形、アルコールによる胎児性アルコール症候群がその実例です。
ポイント
  • 臨界期の時間軸:受精〜妊娠3週末=all or none、妊娠4〜10週=器官形成期で催奇形性が最大、11週以降=発育遅延・機能障害が主体。
  • 風疹は妊娠初期(およそ12週まで)の初感染でリスク最大。白内障・感音難聴・心奇形が三徴。
  • 放射線の確率的影響には閾値がないとの考え方に立ち、正当化と最適化の原則で不必要な曝露を避ける。
  • 胎児は代謝・排泄機能が未熟で化学物質への感受性が高い。サリドマイド、ワルファリン、抗てんかん薬、レチノイド、アルコールが代表的な催奇形因子。
  • 妊娠の可能性がある女性には問診で状況を確認し、必要な検査は防護と適応の吟味のうえで、迷うときは主治医・産科と連携する。
比較表
時期週数の目安曝露で起こること
着床前期受精〜妊娠3週末all or none。流産に至るか完全修復されるかで奇形は残りにくい
器官形成期妊娠4〜10週頃臨界期。形態異常(奇形)が最も起こりやすい
胎児期妊娠11週以降形態異常より発育遅延・機能障害が中心
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