学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §13 筋肉の機能 / QJ27A082

理由で解く 柔道整復師

QJ27A082 生理学

出典:第27回柔道整復師国家試験(2019)午前 問82
問題
誘発筋電図におけるH波で正しいのはどれか。
選択肢
1 脊髄を介して発生する。
2 M波より短い潜時で発生する。
3 筋を電気刺激することで発生する。
4 α運動神経を電気刺激することで発生する。
解答
正解1(脊髄を介して発生する。)
解説

H波(Hoffmann反射)は、末梢神経の電気刺激でIa群求心性線維が興奮し、そのインパルスが脊髄でα運動ニューロンに単シナプス性に伝わって筋を収縮させる反射性の応答である。したがって「脊髄を介して発生する」が正しい記述となる。

下腿三頭筋(ヒラメ筋)で記録する場合を例にとると、膝窩部で脛骨神経という混合神経を刺激する。弱い刺激では、太くて電気刺激の閾値が低いIa群求心性線維が先に興奮し、そのインパルスは後根から脊髄に入り、α運動ニューロンと単シナプスで結合したのち、運動線維を下行して筋に達する。この遠回りの経路を通るぶん、H波はM波より遅れて出現する。刺激強度を上げていくとH波はまず振幅を増して最大値(Hmax)に達し、さらに強めるとα運動線維も直接興奮して、刺激点から筋へまっすぐ向かうインパルスが潜時の短いM波をつくる。このとき運動線維を中枢向きに逆行するインパルスが反射で下行してくるインパルスと衝突して打ち消すため、Hmaxを過ぎるとM波が増大する一方でH波は減衰し、最大上刺激ではM波が最大となってH波は消失する。つまりH波は増大相から減衰相へと二相性の経過をたどるのであって、刺激を強めれば初めから一方的に小さくなるわけではない。H波は腱反射(伸張反射)の電気生理学的な対応物であり、Ia線維からα運動ニューロンへ至る経路の興奮性を客観的に評価する目的で用いられる。

✓ 1. 正しい
脊髄を介して発生する。
Ia群求心性線維→後根→脊髄でα運動ニューロンと単シナプス接続→運動線維→筋、という反射弓をたどって生じる。中枢(脊髄)を必ず経由する点がH波の本質であり、刺激点から筋へ直行するM波との決定的な違いである。この経路を意識しておけば、潜時が長いことも刺激部位が神経であることも芋づる式に説明できる。
✗ 2. 誤り
M波より短い潜時で発生する。
逆で、H波の潜時はM波より長い。M波は刺激点から筋へ直行するのに対し、H波は脊髄まで上行してシナプスを1つ介し、再び下行するぶん経路が長く、シナプス遅延も加わるためである。実際の記録でも、先に立ち上がるのがM波、遅れて出るのがH波と潜時の順で見分ける。振幅は刺激強度によって変わり、H波が出やすい弱い刺激域ではH波のほうがM波より大きいこともあるので、波の大小は目印にならない。
✗ 3. 誤り
筋を電気刺激することで発生する。
刺激するのは筋ではなく、その筋を支配する末梢の神経幹(混合神経)である。筋そのものを刺激しても求心性線維を選択的に興奮させられないため反射は成立しない。記録の手順としては、神経幹を弱い刺激から始めてH波を確認し、徐々に強度を上げてHmaxとM波の出現、さらにH波の減衰・消失を追うという進め方をとる。
✗ 4. 誤り
α運動神経を電気刺激することで発生する。
α運動線維(遠心性線維)を直接刺激して得られる直接応答はM波のほうである。H波の起点はあくまでIa群求心性線維の興奮であり、弱い刺激ほどIa線維が選択的に興奮してH波が出やすい。「求心性線維から始まればH波、運動線維から始まればM波」と入口の線維で整理すると混同しない。
ポイント
  • H波=Hoffmann反射。Ia群求心性線維→後根→脊髄でα運動ニューロンと単シナプス接続→運動線維→筋。腱反射を電気刺激で再現したものと理解する。
  • 潜時はH波 > M波。脊髄までの往復とシナプス遅延のぶん遅れる。振幅は刺激強度で変わるため、両者の識別は潜時で行う。
  • 刺激するのは筋ではなく末梢の混合神経。弱い刺激ではIa線維(太く閾値が低い)が先に興奮するのでH波が出やすい。
  • 刺激を強めるとH波はまず増大してHmaxに達し、それを過ぎると運動線維を逆行するインパルスとの衝突で減衰し、最大上刺激では消失する。M波はこれと対照的に増大して最大となる。
  • 成人では下腿三頭筋(ヒラメ筋)で脛骨神経を刺激する記録が代表的で、Ia-α運動ニューロン経路の興奮性の評価に用いられる。
比較表
比較項目M波H波
興奮の起点となる線維α運動線維(遠心性)を直接刺激Ia群求心性線維
経路刺激点→運動線維→筋(直接)刺激点→後根→脊髄→α運動ニューロン→運動線維→筋
脊髄を介するか介さない(直接応答)介する(単シナプス反射)
潜時短い長い
刺激強度を上げると増大し、最大上刺激で最大となるまず増大してHmaxに達し、さらに強めると衝突により減衰・消失する
出現しやすい刺激強度強い刺激(閾値が高い運動線維を興奮させる)弱い刺激(閾値が低いIa線維が先に興奮する)
対応する生理現象運動神経の直接刺激による筋収縮腱反射(伸張反射)
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