学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §16 各論(骨折) 上肢 / QJ26P081

理由で解く 柔道整復師

QJ26P081 柔道整復理論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問81
問題
上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
選択肢
1 内旋転位の残存はリモデリングが期待できる。
2 前方傾斜角の減少によって屈曲制限をきたす。
3 バウマン角の増大は内反肘変形を示唆する。
4 積極的な他動運動によって関節可動域訓練を行う。
解答
正解2(前方傾斜角の減少によって屈曲制限をきたす。)
解説

伸展型では遠位骨片が後方へ転位・傾斜するため前方傾斜角が減少し、その結果として肘の屈曲が制限される。

上腕骨遠位端は骨幹部の長軸に対して前方に約30〜50度傾いており(前方傾斜角)、この傾きがあるおかげで肘は深く曲げられる。伸展型顆上骨折で遠位骨片が後方に傾いたまま癒合すると前方傾斜角が減少し、尺骨の鉤状突起が上腕骨前面に早くぶつかるようになって屈曲制限が残る。一方、矢状面(前後屈方向)の軽度な残存転位は成長に伴うリモデリングである程度改善しうるが、内外反や回旋の転位は矯正されにくく、内反肘(銃床状変形)として遺残する。したがって整復では回旋・側方転位を確実に取ることが最優先で、後療法では骨化性筋炎や可動域悪化を避けるため自動運動を主体に進める。

✗ 1. 誤り
内旋転位の残存はリモデリングが期待できる。
回旋(内旋)転位はリモデリングによる自家矯正がほとんど期待できず、残せば内反肘変形の主因となる。リモデリングが期待できるのは矢状面の軽度な残存転位であり、内旋転位は整復時に確実に矯正しておく必要がある。
✓ 2. 正しい
前方傾斜角の減少によって屈曲制限をきたす。
伸展型では遠位骨片が後方へ転位・後方傾斜するため前方傾斜角が減少する。肘を深く曲げるための「前方への逃げ」が失われ、鉤状突起が上腕骨前面に当たりやすくなって屈曲が制限される。整復では側面像で前方傾斜角が回復しているかを確認する。
✗ 3. 誤り
バウマン角の増大は内反肘変形を示唆する。
バウマン角は正面像で、上腕骨骨幹部の長軸に立てた垂線と上腕骨小頭(外側顆)の骨端線とがなす角であり、正常値は約20度前後。内反肘変形では遠位骨片が内反するため、この角は減少する。したがって「増大が内反肘を示唆する」は誤りで、内反肘を示唆するのは減少のほうである。なお、垂線ではなく骨幹部の長軸そのものを基準にする流儀(正常約72度)では、同じ変形が「増大」と表現されて向きが逆になる。数値や増減を丸暗記せず、必ず健側と同一条件で撮影・計測して左右差で判定すること。
✗ 4. 誤り
積極的な他動運動によって関節可動域訓練を行う。
肘関節に強い他動運動を加えると、疼痛と炎症の再燃、骨化性筋炎、かえって可動域が悪化する結果を招く。後療法は自動運動を中心に、疼痛のない範囲で徐々に範囲を広げるのが原則で、日常生活動作を利用した反復運動も有効である。
ポイント
  • 前方傾斜角(約30〜50度)の減少=遠位骨片の後方傾斜 → 屈曲制限。増大すれば伸展制限。
  • リモデリングが期待できるのは矢状面の軽度な転位のみ。回旋・内外反転位は自家矯正されない
  • 内反肘(銃床状変形)の主因は内旋・内反転位の残存。
  • バウマン角=骨幹部の長軸に立てた垂線と上腕骨小頭骨端線のなす角(正常約20度前後)。内反肘では減少する。骨幹長軸そのものを基準にする流儀(正常約72度)では増減の表現が逆になるため、必ず健側と同一条件で撮影・比較する。
  • 紛らわしい用語:銃床状変形=内反肘(gunstock deformity)/銃剣状変形=コーレス骨折を正面から見た変形(側面像はフォーク状変形)。まったくの別物なので取り違えない。
  • 合併症は上腕動脈損傷・正中神経(前骨間神経)障害・フォルクマン拘縮。固定後は末梢の5Pを必ず確認。
  • 後療法は自動運動主体。強い他動運動は骨化性筋炎・可動域悪化のもとになるため行わない。
比較表
伸展型(大多数)屈曲型
受傷機転肘伸展位で手を衝く肘屈曲位で肘頭部を衝く
遠位骨片の転位後方(上方)へ前方(上方)へ
前方傾斜角減少増大
残りやすい可動域制限屈曲制限伸展制限
遺残変形内反肘=銃床状変形(内旋・内反転位の残存。バウマン角は減少)同様に変形を残しうる
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