学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §16 部位別各論 肩・肩甲帯 / QJ26P055

理由で解く 柔道整復師

QJ26P055 整形外科学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問55
問題
スポーツ障害肩で正しいのはどれか。
選択肢
1 インピンジメント症候群は上腕二頭筋と関節窩の衝突で生じる。
2 スラップリージョンは関節窩下方の骨棘である。
3 ベネット(Bennett) リージョンは下方関節唇の骨棘である。
4 肩甲上神経麻痺は肩鎖靱帯による絞扼で生じる。
解答
正解3(ベネット(Bennett) リージョンは下方関節唇の骨棘である。)
解説

投球やオーバーヘッド動作で生じる肩の障害は、「どの組織が」「どこで」傷むのかを部位で整理すると迷わない。正解は3で、ベネット病変は関節窩の後下縁に生じる骨棘である。

肩峰下(外側)インピンジメントは、挙上時に上腕骨大結節と棘上筋腱・肩峰下滑液包が烏口肩峰アーチ(肩峰前下縁と烏口肩峰靱帯)に挟み込まれて起こる。SLAP損傷は上腕二頭筋長頭腱の付着部を含む上方の関節唇が前方から後方へ剥離するもので、骨の棘ではない。ベネット病変は投球のフォロースルーで後下方の関節包・関節唇に牽引が繰り返し加わり、関節窩後下縁に骨化が生じたものである。肩甲上神経は肩甲切痕を上肩甲横靱帯の下でくぐるため、絞扼はこの切痕部(あるいは棘窩切痕)で起こる。覚え方は病名ごとに分けたい。SLAPは語頭のS=superiorが部位そのものを示すので、語から「上方関節唇」を引き出せる。一方ベネットは報告者の人名に由来する呼称で、語からは部位を一切読み取れない。そのため「投球のフォロースルー=後下方への牽引=関節窩後下縁の骨棘」と、機序と部位をひとつながりにして覚える。

✓ 3. 正しい
ベネット(Bennett) リージョンは下方関節唇の骨棘である。
ベネット病変は投球障害肩でみられる骨棘で、下方関節唇が付着する関節窩の後下縁に生じる。フォロースルー期に後方の関節包・関節唇へ繰り返し牽引力が働くことによる牽引性の骨化と考えられ、投球後の肩後方痛や後方関節包の拘縮(内旋可動域の低下)を伴いやすい。単純X線の腋窩像などで関節窩後下方の骨性隆起として確認し、投球フォームの見直しと肩後方のタイトネス改善を並行して進める。
✗ 1. 誤り
インピンジメント症候群は上腕二頭筋と関節窩の衝突で生じる。
誤っているのは「上腕二頭筋」の部分である。肩峰下(外側)インピンジメントで挟み込まれるのは上腕骨大結節・棘上筋腱・肩峰下滑液包と、その上を覆う烏口肩峰アーチ(肩峰前下縁+烏口肩峰靱帯)であって、上腕二頭筋長頭腱は二次的に炎症を起こすことはあっても機序の主体ではない。なお投球肩には、外転外旋位で腱板の関節面と関節窩後上縁とが衝突するインターナルインピンジメント(後上方インピンジメント)が別に存在し、関節窩が関与する病態もある。これは本問のSLAP損傷やベネット病変と併存しやすい投球障害肩の病態だが、接触するのは腱板の関節面と関節窩後上縁であって、やはり上腕二頭筋との衝突ではない。したがって「関節窩は肩のインピンジメントに一切関与しない」と覚えるのではなく、本肢は肩峰下インピンジメントの機序として挟まれる側に「上腕二頭筋」を置いている点が誤り、と押さえるとよい。評価は挙上60〜120度で痛む有痛弧(painful arc)やNeer徴候・Hawkins徴候で行い、肩甲骨の動きと腱板機能を整える運動療法から進める。
✗ 2. 誤り
スラップリージョンは関節窩下方の骨棘である。
SLAP損傷(Superior Labrum Anterior and Posterior)は、上方の関節唇が上腕二頭筋長頭腱の付着部を巻き込んで前方から後方へ剥離する軟部組織の損傷である。部位は上方であり、骨棘でもない。投球やスパイク動作での長頭腱の牽引、転倒時に手や肘を突く外力で生じ、深部痛やクリック感を訴える。名称の頭文字S=superiorを部位の目印にすると取り違えを防げる。
✗ 4. 誤り
肩甲上神経麻痺は肩鎖靱帯による絞扼で生じる。
肩甲上神経の絞扼部位は、上肩甲横靱帯が架かる肩甲切痕と、棘上筋・棘下筋の間を回り込む棘窩切痕(ガングリオンによる圧迫が多い)である。肩鎖靱帯は肩鎖関節の上面を補強する靱帯で、神経の通り道ではない。棘上筋・棘下筋の萎縮、外転・外旋筋力の低下を確認し、切痕部の圧痛や画像でのガングリオンの有無を調べる。
ポイント
  • 肩峰下(外側)インピンジメント=上腕骨大結節・棘上筋腱・肩峰下滑液包と烏口肩峰アーチ(肩峰前下縁+烏口肩峰靱帯)の衝突。挟まれる側に上腕二頭筋を置く記述は誤り。
  • 投球肩には、外転外旋位で腱板関節面と関節窩後上縁が衝突するインターナルインピンジメント(後上方インピンジメント)が別にある。SLAP損傷やベネット病変と併存しやすく、肩峰下型とは衝突する部位・組織で区別する(いずれも上腕二頭筋との衝突ではない)。
  • SLAP損傷=上方関節唇が上腕二頭筋長頭腱付着部を含んで前後に剥離する軟部組織損傷。骨棘ではない。
  • ベネット病変=関節窩後下縁の骨棘。投球のフォロースルーでの牽引が原因で、肩後方痛と内旋制限を伴いやすい。
  • 肩甲上神経の絞扼部位は肩甲切痕(上肩甲横靱帯の下)と棘窩切痕。棘上筋・棘下筋の萎縮を目印にする。
  • 覚え方は病名で分ける。SLAPはS=superiorと語から部位が分かる。ベネットは人名由来で語からは部位が読めないため、「フォロースルーの牽引→関節窩後下縁の骨棘」と機序ごと覚える。
比較表
病態部位本態手がかりとなる所見
肩峰下(外側)インピンジメント肩峰下(烏口肩峰アーチ)大結節・腱板・滑液包の挟み込み有痛弧、Neer徴候・Hawkins徴候
参考:インターナルインピンジメント関節窩後上縁腱板関節面と関節窩後上縁の衝突(投球肩)外転外旋位(コッキング後期)での肩後方痛。SLAP損傷・ベネット病変と併存しやすい
SLAP損傷上方関節唇関節唇の剥離(軟部組織)上腕二頭筋長頭腱の牽引、クリック感
ベネット病変関節窩後下縁骨棘・骨化(骨性変化)投球フォロースルーでの肩後方痛、内旋制限
肩甲上神経絞扼肩甲切痕・棘窩切痕神経の絞扼棘上筋・棘下筋の萎縮、外転・外旋力低下
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