学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §3 リハビリテーション医学の基礎医学 / QJ26P013

理由で解く 柔道整復師

QJ26P013 リハビリテーション医学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午後 問13
問題
末梢神経麻痺で正しいのはどれか。
選択肢
1 筋トーヌスの増強
2 軽微な筋萎縮
3 腱反射の消失
4 病的反射の出現
解答
正解3(腱反射の消失)
解説

末梢神経麻痺は下位運動ニューロン(脊髄前角細胞から末梢神経まで)の障害であり、麻痺は「弛緩性」となる。反射弓そのものが断たれるため腱反射は減弱〜消失し、正解は3である。

腱反射は、腱をたたく伸張刺激がIa線維(求心路)→脊髄→α運動ニューロン(遠心路)→筋、という反射弓をひとまわりして起こる。末梢神経が障害されるとこの弓のどこかが途切れるので、反射は出したくても出せない(腱反射の減弱〜消失)。筋トーヌス(安静時の筋の張り)も、随意運動の指令によってではなく、この伸張反射弓(筋紡錘→Ia線維→α運動ニューロン)によって保たれている。したがって弓が断たれれば筋の緊張を保つ仕組みそのものが働かなくなり、トーヌスは亢進ではなく低下する。一方、Babinski徴候などの病的反射は、上位運動ニューロン(錐体路)が障害されて脊髄反射がその抑制から解放されたときに現れる「解放現象」である。末梢神経麻痺では上位運動ニューロンが健常であり、そもそも解放現象が起こる条件がないため病的反射は出現しない(陰性)。反射弓の遮断で説明されるのは腱反射の消失と筋トーヌスの低下であって、病的反射の陰性ではない点を区別しておきたい。また筋は神経の栄養的支配を失うため、除神経後2〜3週ごろから筋萎縮が明らかになり始め、その後数か月かけて高度な神経原性萎縮へ進行する。同じ2〜3週前後から、針筋電図では線維自発電位がとらえられ、電気診断上は変性反応を示すようになる(なお、肉眼で観察できる線維束性収縮は脊髄前角細胞レベルの障害(ALSなど)で目立つ所見であり、末梢神経そのものの麻痺では通常みられない)。この問題は「弛緩性か痙性か」をまず判定すれば、4つの所見が自動的に決まる構造になっている。ただし中枢性麻痺でも発症直後は弛緩性を呈する時期があり(脳卒中の弛緩期=Brunnstrom stage I、脊髄損傷の脊髄ショック期)、この時期は腱反射が消失し筋トーヌスも低下するため、反射と緊張だけでは末梢性と鑑別できない。そのときは病的反射の有無と、麻痺の分布が末梢神経の走行・支配領域に一致するか(それとも片麻痺・対麻痺か)、感覚障害の分布はどうかをセットで確認して障害部位を絞る。

✓ 3. 正しい
腱反射の消失
反射弓の求心路・遠心路のいずれかが断たれるため、障害神経の支配領域に一致して腱反射は減弱〜消失する。弛緩性麻痺を示す最も基本的な他覚所見であり、左右差をみることで障害高位の推定にもつながる。
✗ 1. 誤り
筋トーヌスの増強
筋トーヌスの増強(痙縮)は、錐体路など上位運動ニューロンが障害されて脊髄反射が抑制を失ったときに起こる所見である。筋トーヌスは随意運動の指令によって保たれているのではなく、筋紡錘→Ia線維→α運動ニューロンという伸張反射弓によって維持されている。末梢神経麻痺ではこの反射弓が断たれ、筋の緊張を保つ仕組みそのものが働かなくなるため筋トーヌスは低下し、触れると柔らかい弛緩性麻痺となる(腱反射の消失と同じ機序で説明できる)。
✗ 2. 誤り
軽微な筋萎縮
末梢神経麻痺では筋が神経の栄養的支配を失うため、除神経後2〜3週ごろから筋萎縮が目立ち始め、数か月かけて高度な神経原性萎縮に至る。「軽微な筋萎縮」でとどまるのはむしろ中枢性麻痺でみられる廃用性の萎縮であり、この選択肢は両者の特徴が入れ替わっている。
✗ 4. 誤り
病的反射の出現
Babinski徴候などの病的反射は、上位運動ニューロン(錐体路)が障害されて脊髄反射が抑制から解放されることで出現する解放現象である。末梢神経麻痺では上位運動ニューロンが健常なため解放現象そのものが起こらず、病的反射は陰性となる(例えば橈骨神経麻痺の患者でも足底の刺激によるBabinski徴候は通常どおり検査でき、結果は陰性である)。病的反射が陽性なら障害部位は中枢側と考えて評価をやり直す。
ポイント
  • 末梢神経麻痺=下位運動ニューロン障害=弛緩性麻痺。反射弓が断たれるので腱反射は減弱〜消失する。
  • 筋トーヌスは低下。トーヌスは随意運動の指令ではなく伸張反射弓(筋紡錘→Ia線維→α運動ニューロン)で保たれているため、弓が断たれれば緊張を保つ仕組みごと失われる。だから上位運動ニューロン障害では随意運動が失われてもトーヌスは亢進する。
  • 病的反射は陰性。病的反射は上位運動ニューロン障害の解放現象なので、上位が健常な末梢神経麻痺では出現しない(反射弓の遮断で説明されるのは腱反射消失と筋トーヌス低下のほう)。これらが亢進・陽性なら中枢性障害を疑う。
  • ただし中枢性麻痺でも急性期(脳卒中の弛緩期=Brunnstrom stage I、脊髄損傷の脊髄ショック期)は弛緩性を呈し、腱反射は消失し筋トーヌスも低下する。この時期は反射・トーヌスだけでは鑑別できないので、病的反射の有無と麻痺の分布で判断する。
  • 筋萎縮は高度(神経原性萎縮)。除神経後2〜3週ごろから明らかになり、数か月かけて高度に進行する。同じ2〜3週前後から針筋電図で線維自発電位がとらえられ、変性反応を示す。
  • 線維束性収縮(肉眼でみえるぴくつき)は脊髄前角細胞障害(ALS、脊髄性筋萎縮症など)で目立つ所見であり、末梢神経麻痺では通常みられない。線維自発電位(針筋電図でのみ検出)と混同しない。
  • 末梢神経は混合神経が多く、運動麻痺に加えて支配領域に一致した感覚障害を伴うことが多い。
  • 評価は「腱反射・筋トーヌス・筋萎縮・感覚障害の分布」を一組で確認し、神経の走行に一致するかで障害部位を絞る。
比較表
所見末梢神経麻痺(下位運動ニューロン/弛緩性)中枢性麻痺(上位運動ニューロン/痙性)
筋トーヌス低下(弛緩。伸張反射弓の遮断による)亢進(痙縮・折りたたみナイフ現象) ※急性期(弛緩期・脊髄ショック期)は低下
腱反射減弱〜消失(反射弓の遮断による)亢進(クローヌスを伴うことがある) ※急性期(弛緩期・脊髄ショック期)は減弱〜消失
病的反射陰性(上位運動ニューロンが健常で解放現象が起こらない)陽性(Babinski徴候など=解放現象)。急性期の鑑別ではこれと分布が手がかりになる
筋萎縮高度(神経原性)。2〜3週ごろから出現し数か月で高度に軽度・遅発(廃用性)
その他線維自発電位(針筋電図)、変性反応、支配領域の感覚障害。線維束性収縮は通常みられない(前角細胞障害の所見)連合反応・共同運動パターン、随意性の低下
麻痺の分布障害された神経の支配領域に一致片麻痺・対麻痺など中枢の病巣に応じた分布
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