学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §10 先天性異常 / QJ26A108

理由で解く 柔道整復師

QJ26A108 病理学概論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問108
問題
奇形成立の臨界期はどれか。
選択肢
1 妊娠3〜10週
2 妊娠11〜20週
3 妊娠21〜30週
4 妊娠 31週以降
解答
正解1(妊娠3〜10週)
解説

器官の原基が次々に形づくられる器官形成期(胎芽期)に催奇形因子が働くと形態異常が残る。この感受性が最も高い臨界期にあたるのが、本問の表記では妊娠3〜10週である。

胎内での発育は三つの時期に分けて考える。第一は着床前後までの前胚子期で、この時期に強い傷害を受けると流産に至るか、細胞が入れ替わって完全に修復されるかのどちらかとなり、中間の「奇形」という形では残りにくい(all or none の法則)。第二が器官形成期で、心臓・中枢神経・眼・耳・四肢・口蓋などの原基が短期間に次々と作られる。細胞の分裂・移動・分化が最も盛んなこの時期に、薬物・放射線・ウイルス感染・アルコールなどの催奇形因子が加わると、その時点で作られている器官に応じた形態異常が残る。ここが臨界期(感受性期)である。第三の胎児期は器官が大きくなり機能を完成させていく時期で、傷害は奇形よりも発育遅延や機能障害として現れる。ここで週数の数え方に注意したい。発生学では受精を起点とする受精後週数(胎齢)を用い、器官形成期は受精後3〜8週にあたる。一方、産科臨床で用いる妊娠週数は最終月経の初日を起点とするため胎齢より約2週先行し、器官形成期は妊娠5〜10週ごろに相当する。本問の「妊娠3〜10週」という表記は受精後の数え方に近く、臨床の妊娠週数とは約2週のずれがあることを知っておくと、実習で混乱しない。実例として、妊娠初期の風疹感染では白内障・難聴・心奇形を伴う先天性風疹症候群が、サリドマイドの服用ではアザラシ肢症が生じた。臨床上は、妊娠の可能性がある時期には市販薬を含めて服用前に医師・薬剤師へ相談し、風疹の抗体価を確認して必要なら妊娠前にワクチン接種を済ませ、葉酸の摂取や禁酒を心がけることが具体的な備えとなる。

✓ 1. 正しい
妊娠3〜10週
主要な器官の原基が形成される器官形成期(胎芽期)にあたり、催奇形因子に対する感受性が最も高い臨界期である。心臓・中枢神経・四肢・顔面など、その時期に作られている器官に対応した奇形が生じる。受精後週数(胎齢)でいえば3〜8週、臨床の妊娠週数(最終月経起算)でいえば5〜10週ごろにあたる。
✗ 2. 誤り
妊娠11〜20週
主要な器官形成はおおむね終わり、胎児が成長していく時期に入る。口蓋・外性器・中枢神経など発達が続く部位では影響が残ることもあるが、奇形成立の感受性が最も高い臨界期とはいえない。
✗ 3. 誤り
妊娠21〜30週
胎児の発育と各臓器の機能成熟が主体となる時期である。この時期の傷害は形態異常ではなく、子宮内発育遅延や中枢神経の機能障害といった形で現れやすい。
✗ 4. 誤り
妊娠 31週以降
さらに成長と成熟が進む時期で、肺の成熟など出生後の生活に向けた準備が中心となる。奇形成立の臨界期ではなく、この時期の問題は早産や胎児発育不全として扱われる。
ポイント
  • 奇形成立の臨界期=器官形成期(胎芽期)。本問の表記では妊娠3〜10週、受精後週数(胎齢)では3〜8週、臨床の妊娠週数(最終月経起算)では5〜10週ごろ。
  • 週数には受精後(胎齢)最終月経起算の妊娠週数の二通りがあり、後者は前者より約2週先行する。どちらの数え方かを確認する。
  • 着床前後の前胚子期(受精後約2週)はall or none(流産するか完全に修復されるか)。
  • 胎児期の傷害は奇形ではなく発育遅延・機能障害として現れる。
  • 催奇形因子:ウイルス(風疹・サイトメガロウイルス)、原虫(トキソプラズマ)、薬物(サリドマイド、ワルファリン、抗てんかん薬)、放射線、アルコール。トキソプラズマは原虫であってウイルスではない。
  • 備え:妊娠の可能性がある時期は服薬前に医師・薬剤師へ相談、風疹抗体価の確認とワクチン、禁酒。
比較表
時期受精後週数(胎齢)臨床の妊娠週数(最終月経起算)起こりうること
前胚子期受精〜着床(受精後約2週)妊娠2〜4週ごろ流産するか完全に修復される(all or none)
器官形成期(胎芽期)受精後3〜8週妊娠5〜10週ごろ奇形(臨界期)。心・中枢神経・四肢・顔面など
胎児期受精後9週〜出生妊娠11週〜出生発育遅延、機能障害(中枢神経・生殖器など)

※本問の選択肢「妊娠3〜10週」は受精後(胎齢)に近い数え方による表記である。臨床で用いる妊娠週数は最終月経の初日を起点とし胎齢より約2週先行するため、同じ器官形成期が妊娠5〜10週と表される。国家試験ではこの表記のまま「妊娠3〜10週」を選べばよいが、実習・臨床では起算の違いを必ず確認すること。

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