学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §3 病因 / QJ26A097

理由で解く 柔道整復師

QJ26A097 病理学概論

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問97
問題
生物学的外因と疾患の組合せで誤っているのはどれか。
選択肢
1 ウイルスハンセン(Hansen) 病
2 スピロヘータ•梅毒
3 クラミジアトラコーマ
4 リケッチアツツガムシ病
解答
正解1(ウイルスハンセン(Hansen) 病)
解説

ハンセン病の病原体はらい菌(Mycobacterium leprae)で、結核菌と同じ抗酸菌=細菌であり、ウイルスではない。したがって組合せとして誤っているのは1である。

生物学的外因は、病原体を大きさと構造で階層的に並べて整理すると取りこぼしがない。大きい順に、寄生虫・原虫・真菌 > 細菌 > スピロヘータ・リケッチア・クラミジア > ウイルス、となる。ここで落とし穴になるのが、スピロヘータ・リケッチア・クラミジアはいずれも細菌の仲間だという点である。スピロヘータはらせん状に長く伸びた細菌、リケッチアとクラミジアは細胞内でしか増殖できない小型の細菌で、ウイルスと混同されやすい。ウイルスは細胞構造を持たず、核酸と蛋白の殻だけからなり、宿主細胞の合成装置を借りて増える点で他と決定的に異なる。らい菌は末梢神経と皮膚を好んで侵し、宿主の細胞性免疫が強ければ神経症状主体の類結核型(TT型)、弱ければ皮膚に菌が充満するらい腫型(LL型)となる。増殖が非常に遅く、潜伏期は数年に及ぶ。なおらい菌は人工培地では培養できず、アルマジロやマウス足蹠への接種でしか増やせない。同じ抗酸菌でも梅毒トレポネーマとともに培養困難な例外であり、「人工培地で増えるかどうか」は細菌とウイルスを見分ける物差しにはならない点に注意したい。

✓ 1. これが答え(組合せが成り立たない)
ウイルスハンセン(Hansen) 病
ハンセン病の原因はらい菌という抗酸菌で、細菌である。抗酸菌はチール・ネールゼン染色などの抗酸菌染色で赤く染まり、結核菌・非結核性抗酸菌と同じ仲間にあたる。人工培地で培養できないという性質はあるが、それでも分類上は細菌であり、ウイルスとの組合せは成り立たない。
✗ 2. 組合せは正しい(答えではない)
スピロヘータ•梅毒
梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)はらせん状のスピロヘータで、性行為や経胎盤(先天梅毒)で感染する。無痛性の初期硬結・硬性下疳から始まり、放置すると全身の発疹、さらに晩期にはゴム腫や大動脈炎、脊髄癆へ進む。こちらも人工培地では培養できない細菌である。
✗ 3. 組合せは正しい(答えではない)
クラミジアトラコーマ
トラコーマはクラミジア・トラコマチスによる結膜の慢性炎症で、瘢痕による眼瞼内反・角膜混濁を起こし、世界的な失明原因の一つである。同じ菌の別の血清型が、性器クラミジア感染症を起こす。
✗ 4. 組合せは正しい(答えではない)
リケッチアツツガムシ病
ツツガムシ病はオリエンチア・ツツガムシ(リケッチアの仲間)が、ツツガムシ(ダニ)の幼虫に刺されることで媒介される。刺し口・発熱・発疹が三徴で、節足動物が媒介するという点はリケッチア感染症に共通する特徴である。
ポイント
  • スピロヘータ・リケッチア・クラミジアは細菌の仲間。ウイルスではない、が最頻出の引っかけ。
  • ハンセン病=らい菌(抗酸菌)。結核菌と同じグループで、末梢神経と皮膚を侵す。
  • リケッチア症は節足動物が媒介(ツツガムシ病=ダニ、発疹チフス=シラミ、日本紅斑熱=マダニ)。
  • らい菌は人工培地で培養できず、動物接種でしか増やせない。梅毒トレポネーマも同様。細菌でも培養できないものがある。
  • クラミジアとリケッチアは偏性細胞内寄生で、通常の人工培地では増えない(それでも細菌である)。培養の可否は細菌とウイルスを分ける軸ではない
  • ウイルス性疾患の代表:麻疹、風疹、インフルエンザ、肝炎(A〜E)、後天性免疫不全症候群、成人T細胞白血病。
比較表
病原体の種類特徴代表疾患
細菌細胞構造をもち、多くは人工培地で増える(らい菌・梅毒トレポネーマは例外で培養できない結核、ハンセン病、破傷風、コレラ
スピロヘータらせん状の細長い細菌(梅毒トレポネーマは培養不能)梅毒、ワイル病(レプトスピラ)、回帰熱
リケッチア細胞内でのみ増殖/節足動物が媒介ツツガムシ病、発疹チフス、日本紅斑熱
クラミジア細胞内でのみ増殖/独自の増殖環トラコーマ、性器クラミジア感染症、オウム病
真菌核膜をもつ真核生物カンジダ症、白癬、アスペルギルス症
ウイルス細胞構造なし。宿主細胞内でのみ増殖麻疹、風疹、インフルエンザ、ウイルス性肝炎

※「人工培地で増えるか」は細菌とウイルスを見分ける基準にはならない。細菌でも、らい菌・梅毒トレポネーマ(培養不能)、リケッチア・クラミジア(偏性細胞内寄生)のように培地で増えないものがある。分類の決め手は細胞構造をもつか(細菌)/もたないか(ウイルス)である。

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