学習トップ理由で解く 柔道整復師生理学 ▸ §6 栄養と代謝 / QJ26A068

理由で解く 柔道整復師

QJ26A068 生理学

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問68
問題
インスリン分泌の有無に関わらずグルコースを取り込む臓器および組織はどれか。
選択肢
1
2 肝臓
3 骨格筋
4 脂肪組織
解答
正解1(脳)
解説

インスリンがあってもなくても常にグルコースを取り込むのはである。血液脳関門と神経細胞にはインスリン非依存性の糖輸送体GLUT1・GLUT3が備わっている。

細胞へのグルコースの取り込みは糖輸送体(GLUT)が担い、その種類によってインスリンへの反応性が異なる。骨格筋と脂肪組織がもつGLUT4は、ふだんは細胞内の小胞に格納されており、インスリンが受容体に結合して初めて細胞膜へ移動(トランスロケーション)して糖を取り込む=インスリン依存性である。これに対しGLUT1やGLUT3はもともと細胞膜に配置され、グルコースへの親和性が高いため、血糖が低めでも一方向に取り込みを続けられる。脳はエネルギー源をほぼグルコースに依存し、貯蔵もほとんどできないため、供給がホルモンの都合で途切れない仕組みになっている。それでも血糖が下がり続ければ脳への供給は不足し、意識障害やけいれんといった中枢神経症状(神経低糖症状)が現れる。ただし症状の出現には順序があり、まず血糖およそ70mg/dL前後で発汗・動悸・振戦・不安・顔面蒼白といった交感神経刺激症状(警告症状)が先行し、さらに約50mg/dL以下へ低下して初めて頭痛・傾眠・異常行動・けいれん・昏睡といった中枢神経症状に至る。警告症状の段階で糖分を摂ることが低血糖の初期対応の要点である。逆に高血糖が続くと、脳・赤血球・水晶体・腎尿細管などには糖が入り続けることになる。

✓ 1. 正しい
血液脳関門の内皮細胞にGLUT1、神経細胞にGLUT3が常時発現しており、いずれもインスリンによる調節を受けない。どちらも高親和性の輸送体で、血糖の高低やインスリンの有無にかかわらず一方向にグルコースを取り込み続ける。生命維持に直結する臓器だからこそ、ホルモンの分泌状況に左右されずに糖を確保できる設計になっている、と理解すると忘れにくい。
✗ 2. 誤り
肝臓
肝細胞のGLUT2はインスリンで細胞膜へ動かされるタイプではないが、両方向性かつ低親和性の輸送体である点が脳とは決定的に違う。血糖が高いときは糖を取り込む一方、血糖が低いときは糖新生やグリコーゲン分解でつくったグルコースを同じGLUT2から血中へ放出する。しかも取り込んだ糖を貯蔵へ回す過程(グルコキナーゼやグリコーゲン合成酵素の活性化、糖新生の抑制)はインスリンの作用に依存しており、インスリンがなければ正味ではむしろ放出側に傾く。したがって肝臓は「分泌の有無に関わらず取り込み続ける」組織とはいえない。
✗ 3. 誤り
骨格筋
GLUT4を用いる代表的なインスリン依存性組織。体重に占める割合が大きく、食後の血糖処理の最大の受け皿となる。なお運動(筋収縮)によってもGLUT4は細胞膜へ移動するため運動は血糖を下げるが、これはインスリンとは別の経路であって、常時取り込んでいるという意味ではない。
✗ 4. 誤り
脂肪組織
同じくGLUT4によるインスリン依存性の組織。インスリンは糖の取り込みに加え、リポ蛋白リパーゼを活性化して脂肪の蓄積を促し、脂肪分解を抑制する。インスリンが不足すると脂肪分解が進み、遊離脂肪酸からケトン体が産生されるようになる。
ポイント
  • インスリン非依存性に糖を取り込む:脳・神経、赤血球、腎尿細管、小腸粘膜、水晶体、血管内皮など。
  • インスリン依存性(GLUT4):骨格筋・心筋・脂肪組織。この3つを覚えれば、残りは非依存性と整理できる。
  • 輸送体の分布:GLUT1=赤血球・血液脳関門、GLUT2=肝臓・膵β細胞・腎、GLUT3=神経細胞、GLUT4=筋・脂肪。GLUT1・GLUT3は高親和性で一方向に取り込むのに対し、GLUT2は低親和性・両方向性で血糖が低いときは放出にも働く点が対照的。
  • 脳はグルコースをほぼ唯一のエネルギー源とする(飢餓が続くとケトン体も利用する)。低血糖が進行すると中枢神経症状(神経低糖症状)が現れるのはこのため。ただし先行するのは発汗・動悸・振戦などの交感神経症状(警告症状:約70mg/dL)で、さらに血糖が低下(約50mg/dL以下)してから意識障害・けいれんに至る、という順序で押さえる。
  • 骨格筋では運動によってもGLUT4が細胞膜へ移動する。運動療法が血糖を下げる生理学的な根拠として押さえる。
比較表
臓器・組織おもな糖輸送体インスリン依存性ポイント
脳・神経GLUT1(血液脳関門)/GLUT3(神経細胞)非依存高親和性・一方向で常時取り込み。低血糖が進むと中枢神経症状が出現(交感神経性の警告症状が先行する)
赤血球GLUT1非依存ミトコンドリアがなく解糖系のみでATPを得る
肝臓GLUT2輸送体自体は非依存だが代謝はインスリンで制御低親和性・両方向性。血糖が低いときは糖新生・グリコーゲン分解でグルコースを放出する側に働く(合成・糖新生抑制はインスリン作用)
骨格筋GLUT4依存運動(筋収縮)でも膜へ移動する
脂肪組織GLUT4依存脂肪合成促進・脂肪分解抑制も受ける
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