学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §45 柔道整復理論 / QJ26A020

理由で解く 柔道整復師

QJ26A020 必修問題

出典:第26回柔道整復師国家試験(2018)午前 問20
問題
顎関節前方両側脱臼で正しいのはどれか。
選択肢
1 開口不能となる。
2 談話不能となる。
3 外側靱帯損傷を伴う。
4 弾発性固定はみられない。
解答
正解2(談話不能となる。)
解説

顎関節前方両側脱臼は口が開いたまま閉じられなくなる脱臼で、下顎が固定されて言葉を作れず談話不能となる。よって2が正しい。

大きなあくびや長時間の開口、硬い物を噛むなどで下顎頭が関節結節を越えて前方へ滑り出す。下顎頭は外側翼突筋に前方へ、咬筋・側頭筋・内側翼突筋(閉口筋群)に上方へ牽引されるため、関節結節の前方に押し上げられた位置で固定され、自力では戻せなくなる。結果として口は開いたまま固定され、閉口不能となる。整復にHippocrates法(両母指を下顎の臼歯部に当て、いったん下方へ押し下げてから後方へ導く)を用いるのは、この上方への牽引をゆるめて下顎頭を関節結節の後ろへ戻すためである。オトガイは前下方へ突出し、下顎前歯が上顎前歯より前に出る反対咬合様の外観となり、耳珠の前方が陥凹して頬骨弓の下に転位した下顎頭を触れる。他動的に閉じようとすると弾力のある抵抗があり、手を離すと元の開口位に戻る(弾発性固定)。両側性では下顎がまったく動かせないため、談話・咀嚼・嚥下がいずれも行えず、唾液を飲み込めないため流涎がみられる。片側性では下顎が健側へ偏位し、談話は不明瞭ながら可能という違いがある。

✓ 2. 正しい
談話不能となる。
発語は舌と下顎の連続的な動きで音を形づくる作業であり、下顎が開口位に固定されるとその動きが失われる。両側脱臼では左右とも下顎頭が関節結節前方に留まって下顎全体が動かないため、談話は不能となる。片側脱臼では健側の下顎頭が支点として働くため下顎がわずかに動き、不明瞭ながら話すことはできる。この「両側は不能、片側は不明瞭」という差が試験で繰り返し問われる。
✗ 1. 誤り
開口不能となる。
逆で、開口したまま閉口不能となる。下顎頭が関節結節を乗り越えて前方に居座るために口が閉じられないのであって、口が開かないのではない。開口障害(口が開かない)を示すのは顎関節症や下顎骨関節突起骨折、破傷風などであり、前方脱臼とは正反対の所見。「前方脱臼=開口位固定=閉口不能」と一続きで覚えると取り違えない。
✗ 3. 誤り
外側靱帯損傷を伴う。
外側靱帯(外側顎靱帯)は関節包の外側を補強し、主に下顎頭の後方・側方への転位を制動する。前方脱臼はこの靱帯が制動していない方向への転位であり、靱帯や関節包の断裂を伴わずに起こることが多い。損傷を残さないからこそ整復が容易な反面、繰り返して習慣性脱臼へ移行しやすい。整復後は包帯やチンキャップで下顎を支え、大きなあくびを避ける・硬い物を噛まないといった生活指導を行い、反復するようなら歯科口腔外科への紹介につなげたい。
✗ 4. 誤り
弾発性固定はみられない。
弾発性固定はみられる。閉口させようと下顎を押し上げると筋の緊張による弾力性の抵抗を感じ、力を抜くと再び開口位へ戻る。これは脱臼に共通する所見であり、骨折の異常可動性(どこへでも動く)とは対照的で、鑑別の要になる。前方脱臼では開口位のまま弾発性固定を示す、と位置と所見をセットで押さえる。
ポイント
  • 顎関節前方脱臼は開口位で固定され「閉口不能」。開口不能ではない点が最頻出の引っかけ。
  • 下顎頭は外側翼突筋に前方へ、咬筋・側頭筋・内側翼突筋に上方へ牽引されて関節結節の前方に固定される。だから整復は「下方へ押し下げてから後方へ導く」Hippocrates法になる。
  • 両側脱臼は談話・咀嚼・嚥下が不能で流涎を伴う。片側脱臼はオトガイが健側へ偏位し、談話は不明瞭ながら可能。
  • 下顎頭が関節結節前方へ転位するため、耳珠前方が陥凹し頬骨弓下に下顎頭を触知する。外側靱帯(外側顎靱帯)は後方・側方への転位を制動する靱帯で、前方脱臼では通常損傷しない。
  • 関節包・靱帯の断裂を伴わないことが多く、そのぶん習慣性脱臼へ移行しやすい。整復後の固定と生活指導が再脱臼予防の要。
  • 弾発性固定は脱臼共通の所見。骨折の異常可動性との対比で覚える。
比較表
項目前方両側脱臼前方片側脱臼
口の状態開口位で閉口不能開口位で閉口不能
オトガイの位置正中のまま前下方へ突出健側へ偏位
談話不能可能だが不明瞭
咀嚼・嚥下不能(流涎あり)困難
弾発性固定ありあり
外側靱帯(外側顎靱帯)通常は損傷を伴わない(前方は同靱帯が制動していない方向)
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