学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §8 疾患別各論 感染性疾患 / QJ25P058

理由で解く 柔道整復師

QJ25P058 整形外科学

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問58
問題
化膿性骨髄炎で誤っているのはどれか。
選択肢
1 感染経路に骨付近の化膿創からの波及がある。
2 初発時から骨膜反応を認める。
3 化膿巣の周囲は骨柩を形成する。
4 成人では基礎疾患として糖尿病がある。
解答
正解2(初発時から骨膜反応を認める。)
解説

化膿性骨髄炎は黄色ブドウ球菌などが骨に感染して起こる疾患で、感染経路は「血行性」「隣接する化膿巣からの波及」「外傷・手術による直達」の3つ。最大の注意点は、単純X線の骨膜反応が発症直後には写らないことである。

小児の急性血行性骨髄炎は長管骨の骨幹端に好発する。骨幹端の毛細血管はヘアピン状に折り返して血流が緩やかなうえ、血管内皮の隙間が大きく細菌が停滞しやすいためである。骨髄内に膿がたまると髄内圧が上がり、膿は Volkmann 管・Havers 管を通って骨膜下へ抜けて骨膜を持ち上げる。骨膜からの血流を絶たれた皮質骨は壊死して腐骨となり、持ち上げられた骨膜の内側には新生骨が殻状に作られる。これが骨柩である。一方、単純X線で骨膜反応・骨透亮像・骨硬化像が読めるようになるのは、骨が十分に脱灰されるまで待つ必要があり、発症からおよそ2週間前後を要する。つまり初発時のX線はほぼ正常に見える。したがって発症早期は「X線が正常だから骨髄炎ではない」と決めつけず、局所の激しい疼痛・熱感・腫脹と発熱、白血球数・CRP・赤沈の上昇を重くみて、MRIや骨シンチグラフィによる早期診断につなげる。なお好発部位はあくまで骨幹端であるが、乳児期は骨幹端と骨端の血管が交通しているため、病巣が骨端・関節内へ波及して化膿性関節炎を合併することがある。柔道整復の現場では、外傷後や小児で患肢を動かさず(仮性麻痺)、発熱を伴う長管骨骨幹端の強い限局性疼痛・圧痛をみたら、施術で経過をみるのではなく速やかに医師へ紹介し、血液培養・穿刺培養に基づく抗菌薬投与とドレナージにつなげることが求められる。

✓ 2. 誤り(=これが答え)
初発時から骨膜反応を認める。
骨膜反応は「X線に写る所見」であり、実際に骨膜下で新生骨ができ始めても、画像として判別できるまでには発症からおよそ2週間かかる。初発時の単純X線は軟部組織の腫脹陰影がわかる程度で骨自体はほぼ正常に見えるため、「初発時から」という点が誤りで、これが設問の答えとなる。早期に病変を捉えたいときは、骨髄の浮腫を高信号として描出するMRIや骨シンチグラフィが有用である。
✗ 1. 正しい記述(答えではない)
感染経路に骨付近の化膿創からの波及がある。
感染経路は血行性のほか、隣接する軟部組織の化膿巣(蜂窩織炎、感染創、褥瘡、糖尿病足潰瘍など)からの直接波及、そして開放骨折・手術・刺創による直達感染がある。骨の近くの化膿創から連続して骨に及ぶのは典型的な経路であり、記述は正しいので設問の答えにはならない。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
化膿巣の周囲は骨柩を形成する。
血流を絶たれて壊死した皮質骨が腐骨、それを包み込むように骨膜下にできる新生骨の殻が骨柩(involucrum)である。慢性化すると骨柩に穴(骨瘻孔)があき、そこから皮膚へ瘻孔をつくって排膿を繰り返す。化膿巣の周囲が骨柩で囲まれるという記述は正しく、設問の答えにはならない。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
成人では基礎疾患として糖尿病がある。
成人の骨髄炎は、宿主の抵抗力が落ちた状況で発症しやすい。糖尿病、透析、ステロイドや免疫抑制薬の使用、悪性腫瘍、末梢動脈疾患、静注薬物使用などが背景となる。とくに糖尿病は末梢神経障害で創に気づきにくく、血流障害と易感染性が重なるため足部の骨髄炎の代表的な基礎疾患である。記述は正しく、設問の答えにはならない。
ポイント
  • 感染経路は3つ ―― 血行性(小児では長管骨の骨幹端に好発)、隣接化膿巣からの波及、外傷・手術による直達。起炎菌は黄色ブドウ球菌が最多。
  • 単純X線の骨膜反応・骨透亮像は発症から約2週間後に現れる。初発時のX線が正常でも骨髄炎は否定できない。
  • 早期診断はMRI(骨髄浮腫が高信号)・骨シンチグラフィ。臨床では長管骨骨幹端の強い限局性疼痛・圧痛+発熱+白血球数・CRP上昇を手がかりにする。
  • 腐骨=壊死した皮質骨、骨柩=それを包む骨膜下新生骨の殻、骨瘻孔=骨柩にあく排膿の穴。この3語をセットで覚える。
  • 成人例は糖尿病・透析・免疫抑制状態などが背景。疑ったら早期に医師へ紹介し、培養に基づく抗菌薬とドレナージにつなげる。
比較表
発症からの時期単純X線MRI・骨シンチ臨床・血液所見
発症〜数日(初発時)骨には変化なし。軟部組織の腫脹陰影がわかる程度MRIは骨髄浮腫を早期から高信号として描出。骨シンチも早期から集積骨幹端に限局した激痛・圧痛・熱感・腫脹、発熱、患肢を動かさない(仮性麻痺)
約2週前後骨膜反応(骨膜下新生骨)・骨透亮像が出現膿瘍や骨髄内の広がりを評価白血球数・CRP・赤沈の高値が持続
慢性期腐骨(周囲より白く硬化して見える)、骨柩、骨瘻孔残存病巣・瘻孔の評価瘻孔からの排膿と再燃を繰り返す
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