学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §18 胸部外傷(救急法) / QJ25P053

理由で解く 柔道整復師

QJ25P053 外科学概論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問53
問題
高所からの転落による右第5~8肋骨の連続多発骨折で奇異呼吸を認める。誤っているのはどれか。
選択肢
1 骨折部胸壁は吸気時に膨隆する。
2 縦隔は吸気・呼気で左右に動揺する。
3 人工呼吸の陽圧:換気が有効である。
4 弾性包帯固定で胸郭を補強する。
解答
正解1(骨折部胸壁は吸気時に膨隆する。)
解説

誤っているのは1。フレイルチェスト(動揺胸郭)の奇異呼吸では、骨折部の胸壁は吸気時に陥凹し、呼気時に膨隆します。

連続する肋骨がそれぞれ複数箇所で折れると、その範囲の胸壁が肋骨の連続性を失って「浮いた板」のようになります。正常な胸郭では吸気時に胸腔内が陰圧になると胸壁全体が外へ広がりますが、支えを失った部分だけは陰圧に引き込まれて内側へ落ち込みます。逆に呼気時は胸腔内圧が相対的に上がるため外へ押し出されて膨隆します。この胸壁全体と逆の動きが奇異呼吸で、換気効率の低下、縦隔動揺による静脈還流障害、しばしば合併する肺挫傷が重なって呼吸不全に至ります。対応は酸素投与、十分な鎮痛(肋間神経ブロックや硬膜外鎮痛)、動揺部の固定、そして必要に応じた陽圧換気による内固定です。

✓ 1. これが誤り(=答え)
骨折部胸壁は吸気時に膨隆する。
吸気と呼気が逆になっています。吸気時は胸腔内が陰圧になるため、支えを失った骨折部は内側へ引き込まれて陥凹し、呼気時に膨隆します。観察では胸壁の左右差と動きの向きを確認し、酸素投与と鎮痛を行いながら呼吸状態を継続的に評価します。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
縦隔は吸気・呼気で左右に動揺する。
左右の胸腔内圧のバランスが呼吸のたびに崩れるため、縦隔が振り子のように左右へ振れます(縦隔動揺)。大血管が屈曲して静脈還流が妨げられ、心拍出量の低下につながるため、循環動態の監視が欠かせません。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
人工呼吸の陽圧:換気が有効である。
陽圧換気を行うと吸気時に胸腔内が陽圧となり、浮いた胸壁が内側へ引き込まれなくなります。これが内固定(internal pneumatic stabilization)と呼ばれる考え方で、奇異呼吸を消失させて換気を確保できます。呼吸不全や広範な肺挫傷を伴う重症例で選択されます。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
弾性包帯固定で胸郭を補強する。
応急処置としては、動揺部を厚いガーゼなどで覆って弾性包帯やテープで外固定し、胸壁の異常な動きを抑えます。ただし胸郭全体を強く締めつけると換気そのものを妨げるため、動揺部を支える程度にとどめ、呼吸状態を確認しながら行います。
ポイント
  • フレイルチェスト=連続する複数肋骨がそれぞれ2か所以上で骨折し、胸壁の一部が浮いた状態。
  • 奇異呼吸は吸気時に陥凹・呼気時に膨隆。胸壁全体と逆に動くのが本質。
  • 縦隔動揺により静脈還流が妨げられ、循環にも影響する。
  • 陽圧換気は浮いた胸壁を内側に引き込ませない内固定として有効。
  • 合併する肺挫傷が呼吸不全の主因になることが多く、酸素投与と十分な鎮痛が重要。
比較表
呼吸相胸腔内圧正常な胸壁フレイル部分
吸気陰圧が強まる外側へ拡張内側へ陥凹
呼気相対的に陽圧内側へ戻る外側へ膨隆
陽圧換気中吸気時に陽圧外側へ拡張陥凹せず動揺が消失(内固定)
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