学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §8 手術 / QJ25P049

理由で解く 柔道整復師

QJ25P049 外科学概論

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午後 問49
問題
結紮縫合法で正しいのはどれか。
選択肢
1 女結びは男結びより緩みにくい。
2 体幹部は顔面より抜糸時期が早い。
3 糸の周囲に炎症が及ぶときは早めに抜糸する。
4 人工血管吻合に吸収性縫合糸を用いる。
解答
正解3(糸の周囲に炎症が及ぶときは早めに抜糸する。)
解説

結紮縫合は「どう結ぶか・どの糸を使うか・いつ抜くか」の3点が問われる。糸の周囲に炎症が及んだときは予定の抜糸日を待たず早めに抜いて排膿・洗浄へ切り替えるのが原則で、正しいのは3。

結び目の強さは結び方で決まる。男結び(本結び)は2段目を1段目と逆向きにかけるため輪どうしが噛み合い、張力がかかるほど締まって緩みにくい。一方、女結び(縦結び)は同じ向きに重ねるだけなので、糸が結び目の中を滑って緩みやすい。抜糸の時期は「血流の豊富さ」と「創にかかる張力」で決まり、血流がよく張力の小さい顔面・頸部は3〜5日と早く、体幹は7〜10日、張力が大きく動きの多い下肢や関節をまたぐ部位は10〜14日と遅くなる。そして縫合糸は組織にとって異物であり、留置期間が長いほど縫合糸膿瘍や瘢痕のリスクが上がるため、感染徴候が出たら「異物を早く取り除く」方向に舵を切る。

✓ 3. 正しい
糸の周囲に炎症が及ぶときは早めに抜糸する。
縫合糸は異物なので、感染が糸に沿って広がると抗菌薬だけでは制御しにくい。発赤・腫脹・熱感・疼痛・排膿がみられたら予定の抜糸日を待たずに該当部の糸を抜き、膿の逃げ道を作って洗浄・ドレナージを行う。全部抜くと創が離開しそうな場合は一針おきに抜く(間欠抜糸)など、段階的に減らして対応する。
✗ 1. 誤り
女結びは男結びより緩みにくい。
逆で、緩みにくいのは男結びのほう。男結び(本結び)は2段目を1段目と逆向きに掛けるので結び目が互いに噛み合い、糸に張力がかかっても解けにくい。女結び(縦結び)は同じ向きに重ねるため糸が滑って緩みやすいので、結紮では男結びを確実に作り、必要なら追加結紮で補強する。
✗ 2. 誤り
体幹部は顔面より抜糸時期が早い。
早いのは顔面のほう。顔面は血流が豊富で創にかかる張力も小さいため3〜5日で抜糸でき、早く抜くことで縫合糸痕(はしご状の跡)も残しにくい。体幹は7〜10日が目安で、顔面より遅い。部位ごとの治癒速度と張力を考えて時期を決めるとよい。
✗ 4. 誤り
人工血管吻合に吸収性縫合糸を用いる。
人工血管は自己組織のように治癒して母床と一体化するわけではないため、糸が吸収されて消えると吻合部が離開し、大出血や仮性動脈瘤を起こす。血管吻合には非吸収性のモノフィラメント糸(ポリプロピレンなど)を用い、吻合を永続的に保持する。吸収糸が向くのは、治癒後に糸が不要になる皮下組織や消化管吻合などである。
ポイント
  • 男結び(本結び)=緩みにくい/女結び(縦結び)=緩みやすい。 結紮は男結びが基本。
  • 抜糸時期は血流の豊富さと創にかかる張力で決まる。顔面3〜5日<上肢・体幹7〜10日<下肢・関節部10〜14日。
  • 糸の周囲に炎症・感染徴候が出たら予定日を待たず早期抜糸し、洗浄・ドレナージへ。離開が心配なら一針おきに抜く。
  • 縫合糸は異物。留置が長引くほど縫合糸膿瘍・縫合糸痕のリスクが上がる。
  • 糸の使い分け:吸収性=役目が終われば消えてよい部位(皮下・消化管など)/非吸収性=支持を残す必要がある部位(血管吻合・人工物・腱・皮膚表面)。
比較表
部位別の抜糸時期(目安)
部位抜糸までの日数理由
顔面・頸部3〜5日血流が豊富で治癒が速く、張力が小さい。瘢痕を目立たせないため早く抜く
上肢7日前後血流は比較的よいが可動により張力がかかる
体幹(胸腹部・背部)7〜10日面積が広く呼吸・体動で張力がかかる
下肢・関節をまたぐ部位・足底10〜14日血流が相対的に乏しく、荷重と可動で張力が最も大きい
吸収性縫合糸と非吸収性縫合糸
吸収性縫合糸非吸収性縫合糸
体内での運命加水分解・酵素分解で消失するほぼ永久に残る
代表例カットグット、ポリグリコール酸、ポリジオキサノンなど絹糸、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルなど
主な用途皮下・筋膜・消化管吻合など、治癒後は支持が不要な部位血管吻合、人工物の固定、腱縫合、抜糸する皮膚縫合
人工血管吻合不可(吸収後に吻合部が離開する)これを用いる(モノフィラメントのポリプロピレンなど)
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