学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §38 運動学 / QJ25A008

理由で解く 柔道整復師

QJ25A008 必修問題

出典:第25回柔道整復師国家試験(2017)午前 問8
問題
翼状肩甲に関与するのはどれか。
選択肢
1 前鋸筋
2 菱形筋
3 鎖骨下筋
4 胸鎖乳突筋
解答
正解1(前鋸筋)
解説

翼状肩甲は、肩甲骨の内側縁と下角が背中から浮き上がって翼のように見える所見です。代表的な原因は前鋸筋の麻痺(長胸神経麻痺)で、答えは1です。

前鋸筋は第1〜9肋骨の外側面から起こり、肩甲骨内側縁の前面(肋骨に向いた面)に付きます。働きは、肩甲骨を胸郭に押しつけながら前方へ引くことと、上方回旋を助けることです。この筋が働かないと、腕を前へ押し出す動作や肩を90度以上挙げる動作のときに肩甲骨が胸郭から離れ、内側縁が浮き上がります。このとき肩甲骨下角は内側(脊柱側)へ寄る形をとり、壁を両手で強く押させると誘発されるので、健側と見比べると分かりやすい所見です。支配する長胸神経(C5〜C7)は頸部から胸壁の表層近くを長い距離下行するため、リュックや荷物による長時間の圧迫、頸部・腋窩の手術、外傷、ウイルス感染後の神経炎などで麻痺を起こします。なお、肩甲骨を胸郭に引き寄せる働きをもつ菱形筋や僧帽筋が麻痺しても肩甲骨の浮き上がりは生じえますが、その場合は下角が外側へ振れる型となり、腕を外転させたときに目立つという違いがあります。所見をとらえたら、圧迫要因を取り除き、原因の評価のために医療機関の受診につなげたうえで、肩甲帯周囲の筋の再教育を段階的に進めていきます。

✓ 1. 正しい
前鋸筋
肩甲骨を胸郭に押しつけて固定する主役です。長胸神経麻痺で機能が失われると、下角が内側へ寄りながら肩甲骨内側縁が浮き上がり、壁押しなど前方への押し出し動作で顕著になる典型的な翼状肩甲となります。
✗ 2. 誤り
菱形筋
肩甲背神経支配で、肩甲骨を内上方に引く(内転・挙上・下方回旋)筋です。麻痺すれば肩甲骨は外側へ偏位し、下角が外側へ振れて内側縁が浮く型の翼状肩甲を生じうるものの、これは腕を外転させたときに目立つ所見で、前方への押し出しで顕著になる前鋸筋麻痺の型とは区別されます。加えて菱形筋単独の麻痺自体がまれであり、翼状肩甲の代表的な原因は長胸神経麻痺による前鋸筋麻痺です。
✗ 3. 誤り
鎖骨下筋
第1肋骨と鎖骨下面を結び、鎖骨を引き下げて胸鎖関節を安定させる小さな筋です。肩甲骨を胸郭に固定する働きは担っていません。
✗ 4. 誤り
胸鎖乳突筋
副神経(と頸神経)支配で、頭頸部を反対側へ回旋・同側へ側屈させます。障害されると頸部の運動に影響しますが、肩甲骨の胸郭への固定には関与しません。
ポイント
  • 翼状肩甲=肩甲骨内側縁・下角が胸郭から浮き上がる所見。
  • 代表的原因は前鋸筋麻痺(長胸神経C5〜C7の障害)。下角が内側へ寄り、前方への押し出しで顕著になる。
  • 菱形筋・僧帽筋の麻痺でも浮き上がりは生じうるが、下角が外側へ振れる型で外転位に目立つ。
  • 前鋸筋の働きは肩甲骨の胸郭への固定・前方引き出し・上方回旋。
  • 誘発法:壁を両手で押させる(壁押しテスト)。健側と比較する。
  • 長胸神経は表層を長く走るため、圧迫・牽引・術後・神経炎で麻痺しやすい。
比較表
支配神経主な作用麻痺したときの所見
前鋸筋長胸神経肩甲骨を胸郭に固定・前方引き・上方回旋翼状肩甲。下角が内側へ寄る型で、壁押しなど前方への押し出しで顕著
菱形筋肩甲背神経肩甲骨の内転・挙上・下方回旋肩甲骨が外側へ偏位。下角が外側へ振れる型の浮き上がりを生じうる(外転位で目立つ)。単独麻痺はまれ
僧帽筋副神経肩甲骨の挙上・内転・上方回旋肩の下垂、外転制限。下角が外側へ振れる型の浮き上がりを伴うことがある
鎖骨下筋鎖骨下筋神経鎖骨の引き下げ・胸鎖関節の安定肩甲骨位置には影響しない
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