学習トップ理由で解く 柔道整復師外科学概論 ▸ §9 麻酔 / QJ24P048

理由で解く 柔道整復師

QJ24P048 外科学概論

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問48
問題
麻酔で誤っているのはどれか。
選択肢
1 胃液の誤嚥による肺炎をメンデルソン(Mendelson)症候群という。
2 悪性高熱症ではアルカローシスを起こす。
3 筋弛緩薬使用時は呼吸管理が必要である。
4 前投薬の目的の一つに気道分泌の抑制がある。
解答
正解2(悪性高熱症ではアルカローシスを起こす。)
解説

「誤っているのはどれか」を問う設問です。悪性高熱症は骨格筋の代謝が暴走して二酸化炭素と乳酸が過剰に産生される病態なので、傾くのはアルカローシスではなくアシドーシスです。

全身麻酔の周術期合併症は、原因と結果をひとつながりで理解すると迷いません。誤嚥性肺炎(Mendelson症候群)は酸性の胃液が気道に入って起こる化学性肺炎で、だからこそ術前の絶飲食が重視されます。悪性高熱症は、揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬(スキサメトニウム)を引き金に骨格筋細胞内へカルシウムが放出され続け、筋の代謝亢進から高体温・筋強直・頻脈が起こる病態です。代謝亢進はCO2産生と乳酸産生を増やすため、呼気終末CO2の上昇とともに呼吸性・代謝性のアシドーシスをきたします。この設問は、他の3肢が麻酔の基本事項として正しいぶん、悪性高熱症の酸塩基平衡の向きを知っているかで決まります。

✓ 2. これが誤っている記述(=正答)
悪性高熱症ではアルカローシスを起こす。
悪性高熱症では骨格筋の代謝が著しく亢進し、CO2の産生増加による呼吸性アシドーシスと、嫌気性代謝による乳酸蓄積からの代謝性アシドーシスが重なります。したがって「アルカローシス」は向きが逆です。麻酔中に呼気終末CO2の上昇、体温の急上昇、筋強直、頻脈がそろえば本症を疑い、原因薬剤を直ちに中止して純酸素での過換気、全身冷却、ダントロレンの投与を行う——という一連の対応が要点になります。
✗ 1. 正しい記述(設問の答えではない)
胃液の誤嚥による肺炎をメンデルソン(Mendelson)症候群という。
記述のとおりです。酸性の胃内容物を気道に吸い込むことで生じる化学性肺炎(酸吸引性肺炎)をMendelson症候群と呼びます。麻酔導入時や意識障害時に起こりやすいため、待機手術では術前の絶飲食を守り、緊急手術や満腹状態では迅速導入や輪状軟骨圧迫など、逆流を防ぐ手順で臨みます。
✗ 3. 正しい記述(設問の答えではない)
筋弛緩薬使用時は呼吸管理が必要である。
記述のとおりです。筋弛緩薬は神経筋接合部の伝達を遮断しますが、その作用は横隔膜や肋間筋といった呼吸筋にも及ぶため、自発呼吸が止まります。使用時は気管挿管などで気道を確保し、人工呼吸で換気を担保することが前提です。
✗ 4. 正しい記述(設問の答えではない)
前投薬の目的の一つに気道分泌の抑制がある。
記述のとおりです。麻酔前投薬には、不安の軽減(鎮静薬)、迷走神経反射の抑制と気道分泌の抑制(アトロピンなどの抗コリン薬)、鎮痛、胃液の酸度・量の低下などの目的があります。気道分泌を減らすのは、分泌物による気道閉塞や喉頭痙攣を避けて換気を安定させるためです。
ポイント
  • 悪性高熱症=骨格筋の代謝暴走。CO2産生増加+乳酸蓄積で「アシドーシス」に傾く(アルカローシスではない)。
  • 引き金は揮発性吸入麻酔薬とスキサメトニウム。常染色体顕性遺伝の素因があり、家族歴の聴取が重要。
  • 対応は、原因薬の中止 → 純酸素での過換気 → 全身冷却 → ダントロレン投与。
  • Mendelson症候群=酸性胃液の誤嚥による化学性肺炎。予防の柱は術前絶飲食と逆流を防ぐ導入手順。
  • 筋弛緩薬は呼吸筋も麻痺させるため、気道確保と人工呼吸が必須。前投薬の抗コリン薬は気道分泌と迷走神経反射を抑える。
比較表
用語何が起きているか特徴的な所見まず行うこと
Mendelson症候群酸性胃液の誤嚥による化学性肺炎誤嚥後の呼吸困難、低酸素、肺浸潤影気道確保と酸素化、吸引、呼吸管理
悪性高熱症骨格筋のCa2+放出亢進による代謝暴走体温急上昇、筋強直、頻脈、呼気終末CO2上昇、アシドーシス原因薬中止、過換気、冷却、ダントロレン
筋弛緩薬の作用神経筋接合部の遮断(呼吸筋も含む)自発呼吸の消失気管挿管と人工呼吸
麻酔前投薬鎮静・鎮痛・分泌抑制・迷走神経反射抑制抗コリン薬で口渇、頻脈目的に応じた薬剤選択
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