学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §16 主要な疾患 内分泌・代謝疾患 / QJ24P032

理由で解く 柔道整復師

QJ24P032 一般臨床医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問32
問題
甲状腺機能低下症にみられるのはどれか。
選択肢
1 甲状腺腫
2 眼球突出
3 手指振戦
4 発汗過多
解答
正解1(甲状腺腫)
解説

甲状腺機能低下症でみられるのは甲状腺腫である。眼球突出・手指振戦・発汗過多はいずれも甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状で、正解は1である。

ここでの鍵は、甲状腺腫が「機能」ではなく「形態」の所見だという点である。腺が腫れているという事実だけを表すので、ホルモンが多い状態でも少ない状態でも起こりうる。成人の甲状腺機能低下症で最も多い橋本病(慢性甲状腺炎)では、自己免疫性の慢性炎症によって甲状腺がびまん性に腫大し、表面が硬く不整に触れる。加えて、甲状腺ホルモンが不足するとネガティブフィードバックが外れて下垂体からTSHが過剰に分泌され、これが甲状腺を刺激し続けることも腫大を後押しする。一方、残る3つは機序を分けて理解する必要がある。手指振戦と発汗過多は、甲状腺ホルモン過剰による代謝亢進と、カテコラミンに対する感受性の亢進から生じる症状であり、代謝が落ちる低下症では動作緩慢・寒がり・皮膚の乾燥という正反対の所見になる。これに対して眼球突出はやや性質が異なり、代謝亢進や交感神経活動の結果ではなく、TSH受容体抗体が眼窩内の線維芽細胞・脂肪組織や外眼筋を刺激して眼窩内容を増やす自己免疫性の眼窩病変(甲状腺眼症)による。だからこそ甲状腺中毒症一般(無痛性甲状腺炎や中毒性多結節性甲状腺腫など)ではみられず、バセドウ病に固有の所見として鑑別に使える。低下症での対比所見も動作緩慢ではなく、眼瞼が浮腫んで腫れぼったくなる粘液水腫様顔貌である。そのほか低下症では全身の代謝が下がるため、徐脈・体重増加・便秘・嗄声・無気力・浮腫がみられ、アキレス腱反射では弛緩相の遅れが特徴的である。施術所で頸部の腫大や強い寒がり、原因のはっきりしない徐脈や浮腫に気づいたら、内科での検査を勧めるとよい。

✓ 1. 正しい
甲状腺腫
低下症の代表である橋本病では、自己免疫性の慢性炎症により甲状腺がびまん性に腫大し硬く触れる。さらにホルモン不足によるTSHの上昇が甲状腺を刺激することも腫大の一因となる。甲状腺腫は形態の所見なので、亢進症・低下症のどちらでも生じうる点を押さえておきたい(逆に萎縮性甲状腺炎や甲状腺全摘後、下垂体性の低下症では甲状腺腫を伴わない)。
✗ 2. 誤り
眼球突出
眼球突出はバセドウ病に伴う甲状腺眼症の所見で、TSH受容体抗体が眼窩内の線維芽細胞・脂肪組織や外眼筋を刺激して腫大させ、眼球が前方へ押し出されて起こる。代謝亢進や交感神経の亢進による症状ではないため、同じ甲状腺中毒症でも無痛性甲状腺炎や中毒性多結節性甲状腺腫では眼球突出はみられない。低下症ではむしろ眼瞼が浮腫んで腫れぼったくなり、粘液水腫様顔貌と呼ばれる状態になる。
✗ 3. 誤り
手指振戦
手指の細かい震えは、甲状腺ホルモン過剰によって交感神経系(カテコラミン)への反応性が高まった結果であり、亢進症の所見である。低下症では逆に動作が緩慢になり、反応も鈍くなる。
✗ 4. 誤り
発汗過多
代謝亢進により熱産生が増えるため、亢進症では暑がりで汗が多く、皮膚は温かく湿っている。低下症は熱産生が減るので寒がりとなり、発汗は減って皮膚は乾燥し、しばしば粗く冷たくなる。
ポイント
  • 甲状腺腫は「腺が腫れている」という形態の所見であり、機能亢進でも機能低下でも生じる。
  • 成人の甲状腺機能低下症で最多は橋本病(慢性甲状腺炎)で、びまん性で硬い甲状腺腫を伴う。ただし萎縮性甲状腺炎・術後・下垂体性では甲状腺腫を伴わない。
  • ホルモン不足→TSH上昇という負のフィードバックの解除も、甲状腺腫大に関与する。
  • 手指振戦・発汗過多は代謝亢進+カテコラミン感受性の亢進による症状。低下症では動作緩慢・寒がり・皮膚乾燥という正反対の所見になる。
  • 眼球突出はTSH受容体抗体による甲状腺眼症(自己免疫性の眼窩病変)で、代謝亢進や交感神経亢進の結果ではない。バセドウ病に固有で、低下症の対比所見は眼瞼浮腫・粘液水腫様顔貌である。
  • 低下症は代謝低下の症状:徐脈・寒がり・体重増加・便秘・皮膚乾燥・嗄声・無気力・浮腫。
  • アキレス腱反射の弛緩相が遅れるのは低下症に特徴的。頸部腫大や説明のつかない徐脈・浮腫に気づいたら内科受診を勧める。
比較表
項目甲状腺機能亢進症(バセドウ病)甲状腺機能低下症(橋本病など)
甲状腺腫あり(びまん性・軟らかめ)橋本病ではあり(びまん性・硬く不整のことが多い)。萎縮性甲状腺炎や術後・二次性(下垂体性)では甲状腺腫を伴わない
眼球突出(TSH受容体抗体による甲状腺眼症=バセドウ病に固有)眼瞼浮腫、粘液水腫様顔貌
手指振戦(代謝亢進・カテコラミン感受性の亢進)動作緩慢
発汗・体温感覚発汗過多、暑がり(代謝亢進)発汗減少、寒がり、皮膚乾燥
脈拍・体重頻脈、体重減少徐脈、体重増加
消化管・精神下痢傾向、いらいら便秘、無気力
アキレス腱反射亢進傾向弛緩相の遅延
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