学習トップ理由で解く 柔道整復師リハビリテーション医学 ▸ §5 リハビリテーションの治療 / QJ24P016

理由で解く 柔道整復師

QJ24P016 リハビリテーション医学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午後 問16
問題
人工股関節置換術後に人工関節が脱臼しやすい肢位をとらないように指導されているため、靴下がうまく履けないとの訴えがあった。正しい対応はどれか。
選択肢
1 下肢の関節可動域を拡大し靴下を履けるようにする。
2 家族の介助で靴下を履くように指導する。
3 自助具を用いて靴下を履く訓練を行う。
4 靴下を履かないように指導する。
解答
正解3(自助具を用いて靴下を履く訓練を行う。)
解説

脱臼肢位を避けながら動作を成立させるのがリハビリテーションの原則です。ソックスエイドなどの自助具を使って自分で履く訓練を行うのが最も適切な対応です。

人工股関節置換術では、術式によって脱臼を起こしやすい肢位が決まっています。頻用される後方アプローチでは屈曲・内転・内旋の組み合わせ、特に深い屈曲が危険で、低い椅子・和式トイレ・横座り・足を組む・しゃがみ込みなどが禁止動作になります。靴下を履く動作はまさに股関節を深く曲げ、内転・内旋を伴いやすいため、そのままの方法では脱臼リスクが高い動作です。ここで大切なのは「危ない動作を禁止して終わり」にしないこと。ソックスエイド(靴下を広げて足に導く自助具)、長柄の靴べら、リーチャー(マジックハンド)などを使えば、股関節を深く曲げずに足元へ届き、禁忌肢位を避けたまま自分で履けるようになります。前方アプローチでは伸展・外旋が脱臼肢位になるなど注意点が変わるため、実際の指導では術式と主治医の指示を確認したうえで、動作方法と環境(椅子や便座の高さ、寝具)を合わせて整えます。

✗ 1. 誤り
下肢の関節可動域を拡大し靴下を履けるようにする。
靴下を履くのに必要な深屈曲そのものが脱臼肢位です。可動域を広げても禁忌肢位に入りやすくなるだけで、脱臼予防とは逆方向の対応になります。
✗ 2. 誤り
家族の介助で靴下を履くように指導する。
自助具を使えば本人で行える動作を介助に置き換えると、自立度と生活の満足度を下げ、家族の負担も増やします。介助は、自助具や動作の工夫でも成立しない場合に検討する次の手段です。
✓ 3. 正しい
自助具を用いて靴下を履く訓練を行う。
ソックスエイドやリーチャーを使えば、股関節を深く曲げずに足部へ届き、禁忌肢位を避けたまま自分で履けます。安全性と自立の両方を満たす対応で、椅子の高さなど環境調整と組み合わせるとさらに確実です。
✗ 4. 誤り
靴下を履かないように指導する。
保温、靴ずれの予防、整容といった生活上の意味がある動作をあきらめさせる対応です。目的の動作を捨てるのではなく、達成する別のやり方を用意します。
ポイント
  • 後方アプローチの脱臼肢位は屈曲+内転+内旋。「深く曲げて内へひねる」が合図。
  • 前方アプローチでは伸展+外旋が注意肢位。術式で禁忌が変わるので必ず確認する。
  • 危険な動作は禁止するだけでなく、自助具と環境調整で安全に達成する道を用意する。
  • 代表的な自助具=ソックスエイド、長柄靴べら、リーチャー、長柄ブラシ。合わせて椅子・便座を高くする。
  • 禁止したい生活動作の例=低い椅子への着座、しゃがみ込み、横座り、足を組む、和式トイレ。
比較表
進入路脱臼肢位注意が必要な動作対応策
後方アプローチ屈曲+内転+内旋靴下・爪切り、しゃがみ込み、低い椅子、横座り、足を組むソックスエイド・リーチャー・長柄靴べら、座面と便座を高くする
前方(前側方)アプローチ伸展+外旋(内転を伴う場合も)立位で体を後ろへ反らす、患側を軸にした急な方向転換方向転換は小刻みに、後ろの物は体ごと向き直って取る
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