学習トップ理由で解く 柔道整復師衛生学・公衆衛生学 ▸ §3 感染症 / QJ24A117

理由で解く 柔道整復師

QJ24A117 衛生学・公衆衛生学

出典:第24回柔道整復師国家試験(2016)午前 問117
問題
院内感染対策として優先度が低いのはどれか。
選択肢
1 破傷風
2 ウイルス性肝炎
3 後天性免疫不全症候群(AIDS)
4 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
解答
正解1(破傷風)
解説

院内感染対策で重視されるのは、人から人へ、あるいは器材や環境を介して医療現場で広がる病原体である。破傷風はヒトからヒトへ伝播しないため、院内感染対策としての優先度は低い。正答は1。

B型・C型肝炎ウイルスやHIVは血液・体液を介して伝播し、針刺し切創が主な職業曝露経路になる。MRSAをはじめとする薬剤耐性菌は医療者の手指や器材、環境表面を介した接触感染で広がり、免疫力の落ちた入院患者に重症感染を起こす。いずれも標準予防策(すべての血液・体液を感染性があるものとして扱う)、確実な手指衛生、鋭利器材の適切な取り扱いと廃棄、器材の洗浄・消毒・滅菌、必要に応じた接触予防策とB型肝炎ワクチン接種が対策の柱となる。これに対し破傷風はClostridium tetaniの芽胞が土壌や動物の糞便中に広く分布し、汚染創の内部で嫌気的条件が整うと発芽して毒素を産生することで発症する。病態は毒素によるもので、患者から周囲の人へうつることはないため、隔離や接触予防策の対象にはならず、対策は個々の患者管理、すなわち創の十分な洗浄とデブリドマン、予防接種歴の確認、必要に応じた破傷風トキソイドの追加接種や抗破傷風ヒト免疫グロブリンの投与になる。柔道整復の現場でも、土や砂で汚染された擦過創や刺創を扱う際は、洗浄と破傷風予防歴の確認を行い、判断に迷えば医師へ紹介する流れを平時から決めておきたい。

✓ 1. これが優先度が低い=正答
破傷風
土壌由来の芽胞が汚染創で発芽して発症する創傷感染症で、ヒトからヒトへの伝播がない。したがって院内で広がる感染としての対策優先度は低い。対策は感染対策としての隔離ではなく、創処置とトキソイド・免疫グロブリンによる個別の予防が中心になる。
✗ 2. 優先度が高い(答えではない)
ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎ウイルスは血液を介して伝播し、針刺し切創や汚染器材の使い回しが感染源となる代表例。標準予防策、鋭利器材の安全な取り扱い、医療従事者へのB型肝炎ワクチン接種が必須で、院内感染対策の優先度は高い。
✗ 3. 優先度が高い(答えではない)
後天性免疫不全症候群(AIDS)
HIVも血液・体液を介する。日常的な接触では感染しないが、針刺し切創による職業曝露のリスクがあり、曝露後の速やかな報告と曝露後予防内服(PEP)の体制整備が求められる。
✗ 4. 優先度が高い(答えではない)
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
医療者の手指や器材を介した接触感染で広がる、院内感染の代表格。抗菌薬の選択肢が限られ、易感染患者では重症化しやすい。手指衛生の徹底、接触予防策、抗菌薬の適正使用が対策の中心となる。
ポイント
  • 院内感染対策で重視されるのは、人・器材・環境を介して医療現場で広がる病原体
  • 血液媒介:HBV・HCV・HIV → 標準予防策、鋭利器材対策、B型肝炎ワクチン、曝露後対応
  • 接触感染:MRSA、VRE、多剤耐性緑膿菌など → 手指衛生、接触予防策、抗菌薬の適正使用
  • 破傷風は土壌の芽胞による創傷感染でヒト–ヒト感染なし → 院内感染対策としての優先度は低い
  • 破傷風の予防は創の洗浄・デブリドマン+トキソイド(人工能動)+抗破傷風ヒト免疫グロブリン(人工受動)
比較表
疾患主な感染経路ヒト–ヒト感染院内感染対策上の位置づけ
破傷風土壌中の芽胞による創傷感染なし優先度は低い(個別の創処置と予防接種で対応)
ウイルス性肝炎(B・C)血液媒介(針刺し切創など)あり優先度が高い
AIDS(HIV)血液・体液あり優先度が高い
MRSA感染症接触(手指・器材・環境)あり優先度が高い
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