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理由で解く 臨床医学各論

Q34A078 整形外科疾患

出典:あマ指 第34回(2026) 問題78
問題
「6歳の男児。鉄棒から転落し地面に左手をついて受傷。左肘関節部の疼痛と変形を認め動かすことができず、同部の腫脹も著明であった。」本症例の骨折について正しいのはどれか。
選択肢
1 肘関節屈曲位で手をついたときに起こりやすい。
2 重大な合併症に阻血性拘縮がある。
3 変形が遺残した場合には外反肘になりやすい。
4 遅発性橈骨神経麻痺を起こしやすい。
解答
正解2(重大な合併症に阻血性拘縮がある。)
解説

手をついて受傷した小児の肘の変形・腫脹という前問の症例、すなわち上腕骨顆上骨折についての正しい記述を選ぶ設問で、答えは「重大な合併症に阻血性拘縮がある」である。

上腕骨の顆上部の前方には上腕動脈と正中神経が接して走っている。骨折による転位・出血・腫脹や、きつすぎる固定が加わると、前腕屈筋群の入った区画(コンパートメント)の内圧が上がって筋への血流が絶たれ、筋が壊死して線維化した結果、手指が屈曲したまま伸びなくなる変形が残る。これが阻血性拘縮(フォルクマン拘縮)で、いったん完成すると回復が難しいため、受傷直後から手指の激痛(とくに他動的に伸ばしたときの痛み)・蒼白・脈拍触知不良・知覚異常・運動麻痺を繰り返し確認する。脈が触れていても阻血は否定できない。疑ったらただちに固定を緩めて整形外科の緊急対応につなぐ。

✗ 1. 誤り
肘関節屈曲位で手をついたときに起こりやすい。
上腕骨顆上骨折の大多数は、肘を伸ばした状態(伸展位)で手をついたときに顆上部が後方へ折れる伸展型である。肘を曲げた状態で肘頭を打ちつけて折れる屈曲型もあるが、頻度はごく少ない。本症例のように手をついて受傷したという経過も伸展型を支持する。
✓ 2. 正しい
重大な合併症に阻血性拘縮がある。
顆上部の前方を走る上腕動脈が、骨片の転位・出血・腫脹やきつい固定によって圧迫されると、前腕屈筋群が血流不足で壊死・線維化し、手指が屈曲位で拘縮する阻血性拘縮(フォルクマン拘縮)を残す。本骨折で最も警戒すべき合併症であり、手指の激痛(とくに他動伸展時痛)・蒼白・脈拍触知不良・知覚異常を早期に見つけて緊急に対応する必要がある。脈が触れていても阻血は否定できない。
✗ 3. 誤り
変形が遺残した場合には外反肘になりやすい。
肘関節は伸展位で軽度の外反(肘角)を示すが、変形が残った場合、過度の外反すなわち外反肘になりやすいのは小児期の上腕骨外顆骨折の後である。上腕骨顆上骨折の後に残りやすいのは内反肘であり、外反肘とするのは逆になっている。
✗ 4. 誤り
遅発性橈骨神経麻痺を起こしやすい。
遅れて神経麻痺が出るのは橈骨神経ではなく尺骨神経である。尺骨神経は内側上顆の後方の尺骨神経溝を骨に接して走るため障害を受けやすく、とくに小児期の上腕骨外顆骨折の後に外反肘が残ると、神経が引き伸ばされて遅発性尺骨神経麻痺をきたす(顆上骨折後の内反肘に伴う遅発性尺骨神経麻痺の報告もある)。橈骨神経は上腕骨骨幹部の後面(橈骨神経溝)に接して走るため、骨幹部骨折で受傷時に麻痺を起こしやすい。顆上骨折でも受傷時に橈骨神経・正中神経(前骨間神経)の麻痺がみられることはあるが、「遅れて出てくる」麻痺として問われるのは尺骨神経である。
ポイント
  • 上腕骨顆上骨折の大多数は、肘伸展位で手をついて生じる伸展型である。
  • 最も警戒すべき合併症は阻血性拘縮(フォルクマン拘縮)。顆上部前方を走る上腕動脈の圧迫と前腕屈筋群の区画内圧上昇が原因となる。
  • 受傷直後から手指の激痛(とくに他動伸展時痛)・蒼白・脈拍触知不良・知覚異常・運動麻痺を繰り返し確認する。脈が触れていても阻血は否定できない。疑えば固定を緩めて直ちに整形外科の緊急対応につなぐ。
  • 変形が残ったときは内反肘。外反肘になりやすいのは小児期の上腕骨外顆骨折の後である。
  • 遅れて出る神経麻痺は橈骨神経ではなく尺骨神経のもの。尺骨神経は内側上顆後方の尺骨神経溝を骨に接して走るため障害されやすく、小児期の上腕骨外顆骨折後に外反肘が残ると牽引されて遅発性尺骨神経麻痺をきたす。
  • 重要用語: 阻血性拘縮(フォルクマン拘縮), 伸展型, 内反肘, 遅発性尺骨神経麻痺 を正確に理解しておくこと。
比較表
項目上腕骨顆上骨折上腕骨外顆骨折
典型的な受傷機序肘伸展位で手をついて顆上部が折れる(伸展型が大多数)手をついて肘が内反強制され、外側顆が裂離する
骨折の部位関節外(顆上部=骨幹端)関節内(外側顆)
遺残しやすい変形内反肘外反肘
遅れて出る神経麻痺頻度は高くない外反肘の遺残により尺骨神経が引き伸ばされ、遅発性尺骨神経麻痺
急性期に警戒する合併症阻血性拘縮(フォルクマン拘縮)=上腕動脈の圧迫骨癒合不全・偽関節
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