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理由で解く 臨床医学各論

Q27H080 呼吸器疾患

出典:鍼灸 第27回(2019) 問題80
問題
「67歳の女性。胸部エックス線写真で右上肺野の末梢側に2cm大の結節影があり、気管支内視鏡検査で肺癌と診断された。」遠隔転移を調べる上で必要な検査はどれか。
選択肢
1 呼吸機能
2 冠動脈造影
3 脳造影MRI
4 心エコー
解答
正解3(脳造影MRI)
解説

右上肺野末梢側の2cm大の結節で肺癌と診断された症例の続きです。問われているのは「遠隔転移」を見る検査なので、肺から離れた臓器に転移巣がないかを画像で調べられる脳造影MRIが正解です。

転移とは、腫瘍細胞が原発巣から離れた場所に運ばれ、そこで増殖して新しい腫瘍巣をつくることです。悪性腫瘍の進行度を表すTNM分類のMはまさに「遠隔転移の有無」を意味し、これが治療方針と予後を大きく左右するため、診断後には遠隔臓器の検索が必須になります。肺癌の細胞は血流に乗って全身へ運ばれる(血行性転移)ため、肝臓・副腎・骨のほか脳も転移巣のできやすい場所です。なかでも脳は、転移巣ができると周囲に脳浮腫(ときに腫瘍内出血)を生じて頭蓋内圧亢進に至り、症状と予後への影響が大きいので、症状がなくても診断時に画像で確認します。造影剤を用いたMRIは小さな脳転移巣をとらえるのに適しており、この目的にかなっています。

✗ 1. 誤り
呼吸機能
呼吸機能検査は肺活量や一秒量など肺のはたらきを調べる検査で、手術に耐えられるかを見る際には役立ちます。しかし肺以外の臓器に転移巣があるかを知ることはできず、遠隔転移の検索にはなりません。
✗ 2. 誤り
冠動脈造影
冠動脈造影は心臓を養う冠動脈の狭窄や閉塞を見る検査で、狭心症など虚血性心疾患の診断に用います。調べているのは血管の内腔であって腫瘍の広がりではないため、遠隔転移の有無の判定には使えません。
✓ 3. 正しい
脳造影MRI
脳は転移巣ができると脳浮腫(ときに腫瘍内出血)から頭蓋内圧亢進をもたらす、臨床上重要な遠隔転移の場所です。造影MRIは小さな転移巣も描出しやすく、この四つのうち、原発巣から離れた臓器に転移巣があるかどうかを探す目的で行う画像検査は脳造影MRIだけです。
✗ 4. 誤り
心エコー
心エコー(心臓超音波検査)は心腔の動きや弁膜、心囊液の有無をみる検査で、心機能の評価が主な目的です。脳・肝臓・副腎・骨といった肺癌の転移が多い臓器を調べる検査ではないため、遠隔転移を探す検査としては脳造影MRIが優先されます。
ポイント
  • 転移=腫瘍細胞が原発巣から離れた場所で増殖して新しい腫瘍巣をつくること。悪性腫瘍に特徴的な性質。
  • TNM分類のT=原発腫瘍の大きさと広がり(周囲への浸潤)、N=所属リンパ節転移の有無と範囲、M=遠隔転移の有無。病期は予後と密接に関係する。
  • 脳転移は脳浮腫(ときに腫瘍内出血)をきたし、頭蓋内圧亢進を招いて致死的になりうる。頭蓋内圧が下がるのではない点に注意する。
  • 血行性転移は肺・肝臓に起こりやすく、心臓・筋・脾臓にはほとんど起こらない。副腎・骨髄も受けやすい。
  • 3つの誤答肢は目的がそれぞれ違う。呼吸機能検査=肺のはたらき(術前に手術へ耐えられるかを見る)、冠動脈造影=冠動脈の狭窄・閉塞(虚血性心疾患の診断)、心エコー=心腔の動き・弁膜・心囊液(心機能の評価)。いずれも遠隔臓器の転移巣を探す検査ではない。
  • 重要用語: 遠隔転移, TNM分類, 脳転移, 頭蓋内圧亢進, 血行性転移 を正確に理解しておくこと。
比較表
検査主に見ているもの本来の目的遠隔転移の検索になるか
呼吸機能肺活量・一秒量など肺のはたらき換気障害の型の判定・術前に手術へ耐えられるかの評価ならない
冠動脈造影冠動脈の狭窄・閉塞虚血性心疾患の診断ならない
脳造影MRI脳内の病変(転移巣)離れた臓器にできた転移巣の検出なる
心エコー心腔の動き・弁膜・心囊液心機能・弁膜症・心囊液貯留の評価主目的ではない(転移の多い臓器は調べられない)
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