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理由で解く 臨床医学各論

Q0604 代謝・栄養疾患

出典:鍼灸 第32回(2024) 問題59
問題
ビタミンB1欠乏でみられるのはどれか。
選択肢
1 ペラグラ
2 萎縮性胃炎
3 巨赤芽球性貧血
4 多発性末梢神経障害
解答
正解4(多発性末梢神経障害)
解説
✗ 1. 誤り
ペラグラ
ペラグラはナイアシン(ニコチン酸、ビタミンB3)欠乏で生じる疾患であり、ビタミンB1欠乏ではない。ペラグラの三徴は「3Dの法則」として知られ、皮膚炎(Dermatitis)・下痢(Diarrhea)・認知症(Dementia)がみられる。日光曝露部位の皮膚炎が特徴的である。トリプトファンの摂取不足やイソニアジド投与もペラグラの原因となりうる。
✗ 2. 誤り
萎縮性胃炎
萎縮性胃炎は慢性胃炎の一型であり、ビタミンB1欠乏の症状ではない。萎縮性胃炎では胃粘膜の萎縮により壁細胞が減少し、内因子の分泌が低下する結果、ビタミンB12の吸収障害をきたして悪性貧血(巨赤芽球性貧血)の原因となる。すなわち萎縮性胃炎はビタミンB12欠乏の原因であり、B1欠乏とは無関係である。
✗ 3. 誤り
巨赤芽球性貧血
巨赤芽球性貧血はビタミンB12または葉酸の欠乏により、DNA合成障害が生じて赤芽球の核成熟が遅延することで起こる大球性貧血(MCV上昇)である。ビタミンB12欠乏では悪性貧血のほか、ハンター舌炎(平滑な赤い舌)や亜急性連合脊髄変性症(後索・側索の脱髄による深部感覚障害と痙性麻痺)を合併する。ビタミンB1欠乏では貧血は生じない。
✓ 4. 正しい
多発性末梢神経障害
ビタミンB1(チアミン)は糖質代謝における補酵素(チアミンピロリン酸: TPP)として重要であり、ピルビン酸脱水素酵素やα-ケトグルタル酸脱水素酵素の補酵素として作用する。欠乏すると末梢神経がエネルギー不足に陥り、多発性末梢神経障害(脚気)がみられる。脚気では四肢遠位部の感覚障害・筋力低下・腱反射低下に加え、心不全(脚気心: 高拍出性心不全)・浮腫を合併する。さらに重症例ではウェルニッケ脳症(意識障害・眼球運動障害・小脳失調の三徴)を発症し、治療が遅れるとコルサコフ症候群(記銘力障害・見当識障害・作話)に移行する。
ポイント
  • ビタミンB1欠乏=脚気(末梢神経障害+心不全+浮腫)+ウェルニッケ脳症。アルコール多飲者や偏食者でみられ、グルコース投与前にビタミンB1を投与しないとウェルニッケ脳症が増悪することがある。
  • ウェルニッケ脳症からコルサコフ症候群への移行(ウェルニッケ-コルサコフ症候群)は不可逆的な場合が多く、早期のビタミンB1投与が重要である。
  • 重要用語: ビタミンB1(チアミン)、多発性末梢神経障害、脚気、脚気心、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群 を正確に理解しておくこと。
比較表
ビタミン 欠乏症 特徴
B1 脚気、ウェルニッケ脳症 糖質代謝の補酵素(チアミンピロリン酸)
B2 口角炎、口唇炎、舌炎、脂漏性皮膚炎 酸化還元反応の補酵素(FAD・FMN)
B6 口角炎、末梢神経障害、貧血 アミノ酸代謝の補酵素
B12 巨赤芽球性貧血、ハンター舌炎、亜急性連合脊髄変性症 内因子と結合し回腸末端で吸収
ナイアシン ペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症) 3Dの法則(Dermatitis, Diarrhea, Dementia)
葉酸 巨赤芽球性貧血、下痢、舌炎 DNA合成に必要
C 壊血病(歯肉出血・皮下出血・創傷治癒遅延) コラーゲン合成に必要
A 夜盲症、眼球乾燥、皮膚乾燥・角化 視覚・上皮組織の維持に必要
D くる病(小児)、骨軟化症(成人) Ca・Pの吸収促進、骨石灰化
E 溶血性貧血、神経障害 抗酸化作用
K 出血傾向、新生児メレナ 凝固因子(II, VII, IX, X)合成に必要
解説画像
鍼灸 第32回(2024) 問題59|ビタミンB1欠乏でみられるのはどれか。 解説図
鍼灸 第32回(2024) 問題59|ビタミンB1欠乏でみられるのはどれか。
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