学習トップ理由で解く 臨床医学各論第7章 ▸ A. 糖代謝異常 / Q0556

理由で解く 臨床医学各論

Q0556 代謝・栄養疾患

出典:鍼灸 第29回(2021) 問題84
問題
「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」神経症状発現の病態生理として正しいのはどれか。
選択肢
1 浮腫
2 虚血
3 炎症
4 圧迫
解答
正解2(虚血)
解説
✗ 1. 誤り
浮腫
浮腫は糖尿病性動眼神経麻痺の主な病態生理ではない。糖尿病に関連する浮腫としては、糖尿病性黄斑浮腫(血液網膜関門の破綻による黄斑部の浮腫)や腎症に伴う全身性浮腫(ネフローゼ症候群による低アルブミン血症)が挙げられるが、いずれも動眼神経障害の機序とは異なる。
✓ 2. 正しい
虚血
糖尿病性動眼神経麻痺は、動眼神経を栄養する栄養血管(vasa nervorum)の微小血管障害による虚血が主な病態生理である。長期の高血糖により栄養血管の基底膜肥厚や血管内腔の狭小化が進行し、神経への血液供給が低下して虚血性神経障害が発生する。虚血は神経の中心部(運動線維が走行)に及びやすく、神経外周部を走行する瞳孔を支配する副交感神経線維は比較的保たれる。このため対光反射が正常で眼瞼下垂がない不完全麻痺の臨床像を呈する。
✗ 3. 誤り
炎症
炎症による脳神経障害はサルコイドーシス(非乾酪性肉芽腫による神経浸潤)、結核性髄膜炎、ウイルス性脳神経炎などで認められる。これらの疾患では通常、多発性脳神経障害や髄膜刺激症状を伴い、糖尿病性単神経障害とは臨床像が異なる。本症例では炎症を示唆する所見(発熱、髄液異常など)は記載されていない。
✗ 4. 誤り
圧迫
圧迫による動眼神経麻痺は後交通動脈瘤の破裂前兆やテント切痕ヘルニアなどで生じる。圧迫では神経外周部が先に障害されるため、瞳孔を支配する副交感神経線維が早期に障害され、散瞳(瞳孔散大)と対光反射消失を伴う。本症例では対光反射が正常であるため圧迫は否定的であり、虚血性(糖尿病性)と判断できる。この瞳孔所見の違いが鑑別の最重要ポイントである。
ポイント
  • 糖尿病性動眼神経麻痺の病態は栄養血管(vasa nervorum)の微小血管障害による「虚血」である。
  • 虚血性(糖尿病性)と圧迫性(動脈瘤性)の鑑別:虚血性は対光反射正常(瞳孔保持)、圧迫性は散瞳+対光反射消失。この違いは神経内の線維配置(運動線維=中心部、瞳孔線維=外周部)で説明できる。
  • 糖尿病性単神経障害は急性発症が多いが、通常数週〜数ヵ月で自然回復する。
  • 重要用語: 虚血、微小血管障害、vasa nervorum、対光反射保持、圧迫性動眼神経麻痺との鑑別 を正確に理解しておくこと。
比較表
機序 虚血性(糖尿病性) 圧迫性(動脈瘤性)
原因 栄養血管の微小血管障害 後交通動脈瘤、テント切痕ヘルニアなど
障害部位 神経中心部(運動線維) 神経外周部(瞳孔線維)
瞳孔所見 正常(対光反射保持) 散瞳(対光反射消失)
眼瞼下垂 軽度〜なし 著明
予後 自然回復(数週〜数ヵ月) 緊急対応が必要
解説画像
鍼灸 第29回(2021) 問題84|「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」神経症状発現の病態生理として正しいのはどれか。 解説図
鍼灸 第29回(2021) 問題84|「70歳の男性。約20年前に2型糖尿病と診断され薬物治療を受けている。最近急に複視が出現した。正中視で右眼は外転位をとっている。対光反射は異常なく眼瞼下垂もない。」神経症状発現の病態生理として正しいのはどれか。
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