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理由で解く 理学療法士

QP60A003 理学療法治療学

出典:第60回理学療法士国家試験(2025)午前 問3
問題
80歳の男性。間質性肺疾患の急性増悪で入院中。酸素化が不良で気管切開による人工呼吸管理を受けている。肺炎は認めないが血圧変動が大きい。
その後、人工呼吸器を離脱して気管切開孔を閉鎖したが、右肺に気胸を生じた。胸腔ドレナージにより空気漏れは消失して気胸は改善し、ドレーンを抜去して経鼻酸素療法中である。胸部エックス線写真を図に示す。この時期の理学療法で最も適切なのはどれか。
図
選択肢
1 酸素療法中は床上安静にとどめる。
2 呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を強制的に拡張させる。
3 修正Borgスケール9以上の強度で運動療法を行う。
4 呼吸筋力の低下に対して吸気筋トレーニングを行う。
5 呼吸数/一回換気量(f/TV)が150以上であれば筋力増強運動を行う。
解答
正解4(呼吸筋力の低下に対して吸気筋トレーニングを行う。)
解説

気胸(特にドレナージ未施行の活動性)合併例では、患側胸郭を拡張させる手技や吸気負荷を高める介入は空気漏れを助長するため慎重を要する。長期人工呼吸後は呼吸筋力低下(横隔膜機能不全)をきたしやすく吸気筋トレーニングが有効な場面もあるが、それは気胸が安定していることが前提。f/TV(RSBI)は≧105でウィーニング困難・≧150は強い浅速呼吸を示す運動中止/負荷軽減の指標であり増強運動の適応ではない。修正Borgは3〜5が運動強度目安で9以上は過負荷、状態安定なら床上安静固定も不適。なお本問は採点除外問題。

本問は80歳男性の連続症例(誤嚥性肺炎→人工呼吸器管理→気管切開孔閉鎖→その後に右気胸を生じ経鼻酸素療法中)に対し、この時期に最も適切な理学療法を問う臨床判断問題である。提示画像は正面(PA/AP)胸部単純X線写真で、左上に『右』・右上に『左』の向き表示があり、心電図モニタ用の金属クリップ電極とリード線が体表に重なる。両肺野に間質性陰影の増強がみられるが、設問前提の『右肺気胸』を示す明瞭な臓側胸膜線・無血管透亮帯は本解像度では確信をもって同定しづらい。もっとも本問はテキスト肢による臨床判断問題であり、正答は画像から一意に導くものではなく病態理解から判断する。\n\n各肢:肢1は長期臥床が廃用・呼吸機能低下を招くため一律の床上安静は不適。肢2は患側胸郭を強制拡張すると空気漏れを助長し気胸を増悪させるため禁忌的で明確な誤り。肢3は修正Borg 9以上(非常にきつい)は不安定な呼吸状態に過負荷で不適(目安は3〜5)。肢5のf/TVはRSBI(浅速呼吸指数)で、≧105でウィーニング困難、150は浅速呼吸が強い状態を意味し、負荷増強ではなく中止・軽減の指標であるため誤り。肢4は長期人工呼吸後の呼吸筋力低下に対する吸気筋トレーニングで、気胸が安定していれば呼吸効率改善に有効となりうるため選択肢中では最も適切とされ、解説サイトでも想定正答は4とされる。\n\nただし重要な注意点として、本問(第60回PT午前問3)は厚生労働省により採点除外等の取扱いとなった問題である(PTでは午前3・17・20、午後31・46が採点除外)。理由は設問設定が不明確で単一の正解を確定できないためとされる。実際、ドレナージ未施行の活動性気胸下では吸気筋トレーニング(肢4)も吸気時の胸腔内陰圧・経肺圧を高めて空気漏れを助長しうるため相対的禁忌となり得え、『気胸が安定していれば正しいが、活動性なら不適』という前提依存の曖昧さが残る。このため公式正答は空([])で提供されており、本解説では『肢1・2・3・5は明確な誤り、肢4が条件付きの想定正答だが、活動性気胸という設定では肢4も確実とは言えず、公式には採点除外=単一正答なし』と整理する。

✗ 1. 誤り
酸素療法中は床上安静にとどめる。
長期臥床は廃用症候群・呼吸機能低下を助長する。気胸・酸素療法中でも全身状態が安定すればポジショニングや早期離床が原則で、一律の床上安静固定は不適
✗ 2. 誤り
呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を強制的に拡張させる。
患側を強制的に拡張させる手技は胸腔内の空気漏れ(air leak)を助長し気胸を増悪させうる禁忌的介入。拡張させるなら健側であり患側ではない
✗ 3. 誤り
修正Borgスケール9以上の強度で運動療法を行う。
Borg 9は『非常にきつい』に相当し、呼吸状態が不安定な本例には過負荷。呼吸リハの運動強度目安は修正Borg 3〜5程度
✓ 4. 正しい
呼吸筋力の低下に対して吸気筋トレーニングを行う。
長期人工呼吸管理後は呼吸筋力低下をきたしやすく、気胸が安定していれば有効となりうるため選択肢中では最も適切とされる。ただし活動性気胸では吸気負荷が胸腔内圧を高め空気漏れを助長する懸念があり、気胸の安定が前提(条件付き=出題上の想定正答)
✗ 5. 誤り
呼吸数/一回換気量(f/TV)が150以上であれば筋力増強運動を行う。
f/TV(RSBI=浅速呼吸指数)高値は浅く速い呼吸・ウィーニング困難を示す運動中止/負荷軽減の指標であり、150以上で筋力増強を行うのはむしろ不適
本問は、厚生労働省が「設問が不明確で正解が得られないため」として採点対象から除外した問題です(第60回理学療法士国家試験 午前第3問。正答値表も空欄で、連問前半の午前第2問のみ正答4で有効とされています)。原問は右肺の気胸が未処置のまま経鼻酸素療法中という設定で、その状態では選択肢4の吸気筋トレーニングも吸気時の胸腔内圧変動によって空気漏れを助長しうるため、5つの選択肢すべてに難があり「最も適切」が決まりませんでした。そこで演習として成立させるため、当方で設問文の「その後、人工呼吸器を離脱して気管切開孔を閉鎖したが、右肺に気胸を生じ、経鼻酸素療法中である。」を「その後、人工呼吸器を離脱して気管切開孔を閉鎖したが、右肺に気胸を生じた。胸腔ドレナージにより空気漏れは消失して気胸は改善し、ドレーンを抜去して経鼻酸素療法中である。」に改変し、あわせて選択肢2を「呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を拡張させる。」→「呼吸理学療法手技で気胸側の胸郭を強制的に拡張させる。」に改変しました(他の設問文・選択肢は原問のままです)。気胸が安定したことを明示することで、長期人工呼吸管理後の呼吸筋力低下(横隔膜機能不全)に対する吸気筋トレーニング=選択肢4だけが適切な介入となり、正答が定まります。図の胸部エックス線写真は原問のままですので、画像から気胸の有無を読み取るのではなく、病態と各介入の適否で判断してください。
ポイント
  • 長期人工呼吸後は呼吸筋力低下
  • 気胸側の積極的拡張は禁忌的
  • RSBI(f/VT)は高値=浅速呼吸=離脱困難
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