学習トップ理由で解く 理学療法士第12章 ▸ 実地 / QP58P008

理由で解く 理学療法士

QP58P008 理学療法治療学

出典:第58回理学療法士国家試験(2023)午後 問8
問題
6歳の女児。公園で転倒し、骨折の診断で同日緊急手術を受けた。術後のエックス線写真を図に示す。術後の患側上肢の理学療法で正しいのはどれか。
図
選択肢
1 術後1週で筋力増強運動を開始する。
2 肘関節の運動は自動より他動を優先する。
3 術後2週で肩関節の可動域練習を開始する。
4 仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始する。
5 術後翌日に急激な痛みがあっても手指運動を行う。
解答
正解4(仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始する。)
解説

小児上腕骨顆上骨折の鋼線固定後、肘の可動域練習は再転位・化骨性筋炎を避けるため仮骨形成(骨癒合)を待って開始する。

画像は6歳女児の左肘の単純X線正面像で、遠位上腕骨顆上部を2本のKワイヤーで交差固定(クロスピンニング)した術後像である。小児に多い上腕骨顆上骨折に対する徒手整復+経皮的鋼線固定術後として矛盾しない。この時点では骨折部は金属で固定されているだけで仮骨(骨癒合)は形成されていない。肘関節、とりわけ上腕骨顆上骨折後は、早期の他動運動・強制的な可動域練習・筋力増強を行うと再転位や化骨性筋炎を生じやすい。したがって肘関節の可動域練習は、仮骨形成が確認され骨癒合が進んでから開始するのが原則であり、選択肢4が正しい。一方、肩関節や手指は固定されていないため、循環障害徴候がないことを確認したうえで早期から愛護的に自動運動を行い廃用を予防する。ただし術後翌日の急激な痛みはVolkmann拘縮(コンパートメント症候群)を疑う警告徴候であり、運動を優先せず評価が必要である(選択肢5は誤り)。

✗ 1. 誤り
術後1週で筋力増強運動を開始する。
鋼線固定のみで仮骨形成前の時期に筋力増強を行うと固定部に負荷がかかり再転位を招く。骨癒合前の筋力増強は早すぎる
✗ 2. 誤り
肘関節の運動は自動より他動を優先する。
肘関節(特に上腕骨顆上骨折後)は他動・強制運動で化骨性筋炎や再転位を起こしやすい。運動は自動運動を優先し他動は避ける
✗ 3. 誤り
術後2週で肩関節の可動域練習を開始する。
固定されているのは肘(遠位上腕骨)であり肩関節は自由。肩の可動域練習は廃用予防のため術直後から早期に行うべきで、2週まで待つ理由はない
✓ 4. 正しい
仮骨形成してから肘関節の可動域練習を開始する。
本図は上腕骨顆上骨折に対する交差鋼線固定後で仮骨形成前の状態。肘のROM練習は仮骨形成・骨癒合の進行を確認してから開始することで再転位と化骨性筋炎を防ぐ
✗ 5. 誤り
術後翌日に急激な痛みがあっても手指運動を行う。
上腕骨顆上骨折はVolkmann拘縮(前腕コンパートメント症候群)の危険がある。術後の急激な痛みは循環・神経障害の警告徴候であり、運動を続けず速やかに評価すべき
ポイント
  • 小児肘骨折術後は仮骨形成後に肘ROM開始
  • 肘は他動より自動運動を優先
  • 術後の急な痛み・腫脹は合併症を疑い運動中止
比較表
小児肘周辺骨折 術後管理の原則
項目対応
肘関節ROM仮骨形成後に開始
肘の運動様式自動運動を優先(他動は慎重)
急な痛み・腫脹・しびれ神経血管障害を疑い運動中止・評価
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