学習トップ理由で解く 理学療法士第12章 ▸ 実地 / QP57A008

理由で解く 理学療法士

QP57A008 理学療法治療学

出典:第57回理学療法士国家試験(2022)午前 問8
問題
52歳の女性。踏み台から転落して左踵骨骨折を受傷し、手術が行われた。術後翌日の単純エックス線写真を図に示す。この患者に対する運動療法で正しいのはどれか。
図
選択肢
1 術後翌日から距腿関節の可動域練習を行う。
2 術後翌日から膝関節の可動域練習を行う。
3 術後翌日から部分荷重を始める。
4 術後1週から外固定内での距踵関節の等尺性運動を行う。
5 術後2週からMP関節の可動域練習を行う。
解答
正解2(術後翌日から膝関節の可動域練習を行う。)
解説

踵骨骨折の経皮的鋼線(Kワイヤー)固定では、足関節・距骨下関節の運動と荷重は制限するが、固定範囲から外れた膝関節は術後翌日から可動域練習を行える。

側面像では踵部後方から3本のKワイヤーが刺入され、踵骨内でX字状に交差し、1本は距骨側へ、1本は前足部方向へ抜けている。鋼線の末端は皮外で折り曲げられており、経皮的鋼線固定に外固定を併用した術直後の状態である。この固定は踵骨と距骨下(距踵)関節・足関節近傍を貫くため、距腿関節の可動域練習(選択肢1)はワイヤーと外固定に妨げられ、整復位を崩す危険があって術後翌日には行えない。踵骨は体重を直接受け止める骨であり、鋼線だけの固定では荷重に耐える強度がなく、術後翌日の部分荷重(選択肢3)は転位を招く。距踵関節は骨折した踵骨が作る関節そのもので、等尺性収縮であっても周囲筋が踵骨を牽引するため、術後1週での運動(選択肢4)は早すぎる。これに対し膝関節は骨折・固定部位から離れた近位関節で、鋼線固定の影響をまったく受けない。したがって廃用や拘縮を防ぐ目的で術後翌日から膝関節の可動域練習を始めるのが正しい。なおMP関節(中足趾節関節)も鋼線の固定範囲外で制動されておらず術後早期から動かせるので、「術後2週から」と遅らせる選択肢5は誤りである。

✗ 1. 誤り
術後翌日から距腿関節の可動域練習を行う。
距腿関節はKワイヤーと外固定で制動されており、術後翌日の可動域練習は整復位を崩す
✓ 2. 正しい
術後翌日から膝関節の可動域練習を行う。
膝関節は固定範囲外で影響を受けない。廃用・拘縮予防のため術後翌日から可動域練習を行う
✗ 3. 誤り
術後翌日から部分荷重を始める。
踵骨は荷重を受ける骨。鋼線固定のみで術後翌日に部分荷重すると転位を招く
✗ 4. 誤り
術後1週から外固定内での距踵関節の等尺性運動を行う。
距踵関節は骨折した踵骨が作る関節。等尺性収縮も踵骨を牽引するため術後1週では早い
✗ 5. 誤り
術後2週からMP関節の可動域練習を行う。
MP関節は固定範囲外で術後早期から動かせる。術後2週まで待つのはかえって遅い
ポイント
  • 踵骨骨折術後は距踵・距腿関節への早期負荷を避ける
  • 骨折部に関与しない膝関節ROMは早期から可能
  • 荷重は骨癒合を待ち段階的に、足趾運動は早期に開始
比較表
踵骨骨折術後の運動療法の可否(早期)
介入早期の可否理由
膝関節ROM骨折部に無関係
足趾(MP)ROM可(早期から)廃用・浮腫予防
距腿・距踵関節ROM不可骨折部へのストレス
荷重不可(数週後に段階的)整復位の保持
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