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理由で解く 理学療法士

QP55A009 基礎理学療法学

出典:第55回理学療法士国家試験(2020)午前 問9
問題
74歳の男性。肺尖部がんによる腕神経叢への直接浸潤により環指・小指〜前腕中央・内側にかけて痛覚過敏を訴えている。腕神経叢への浸潤部位はどれか。
選択肢
1 C7神経根
2 C8神経根
3 下神経幹
4 外側神経束
5 後神経束
解答
正解3(下神経幹)
解説

環指・小指〜前腕内側の感覚はC8〜T1(尺側)領域。この2根が合してできる下神経幹への浸潤で説明できる。肺尖部がん(Pancoast腫瘍)は下位腕神経叢を侵しやすい。

肺尖部に生じた腫瘍(Pancoast腫瘍)は解剖学的位置関係から、腕神経叢のうち最下部を走る下神経幹(C8・T1由来)を直接浸潤しやすい。訴えである環指・小指の尺側と前腕中央〜内側の感覚は、C8(手部尺側)およびT1(前腕内側)のデルマトーム/末梢神経支配に一致する。C8とT1の神経根はまず合流して下神経幹を形成するため、この単一の浸潤部位で環指・小指と前腕内側の両症状を包括的に説明できる。したがって浸潤部位は下神経幹が最も適切である。臨床的には下位腕神経叢麻痺(Klumpke型)として手内在筋の障害や尺側優位の感覚障害を呈し、交感神経(星状神経節)が侵されればHorner症候群を合併する。

✗ 1. 誤り
C7神経根
中指・前腕背側中央(橈側〜中央)の感覚が主で、尺側の症状分布と一致しない
✗ 2. 誤り
C8神経根
手部尺側・環指小指は説明できるが、T1が担う前腕内側を含まず単独では不十分
✓ 3. 正しい
下神経幹
C8とT1が合流して形成。環指・小指(C8)と前腕内側(T1)の両方を一括して説明でき、Pancoast腫瘍の好発浸潤部位
✗ 4. 誤り
外側神経束
C5〜C7由来で、正中神経外側根・筋皮神経を含み橈側〜前腕外側を支配。尺側の症状と不一致
✗ 5. 誤り
後神経束
橈骨神経・腋窩神経を含み上肢背側の運動・感覚が主で、尺側感覚障害の分布と不一致
ポイント
  • 下神経幹=C8+T1由来、尺側(環指・小指・前腕内側)を支配
  • Pancoast腫瘍は下位腕神経叢を浸潤しやすい(Klumpke型麻痺)
  • 星状神経節浸潤でHorner症候群を合併
比較表
腕神経叢の神経幹・神経束と支配
構成由来主な支配領域
上神経幹C5・C6肩・上腕外側
中神経幹C7前腕背側中央
下神経幹C8・T1手・前腕の尺側(内側)
外側神経束C5〜C7前腕外側(筋皮・正中神経外側根)
後神経束C5〜T1上肢背側(橈骨・腋窩神経)
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