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理由で解く 理学療法士

QP54P020 理学療法評価学

出典:第54回理学療法士国家試験(2019)午後 問20
問題
65歳の男性。右利き。突然の意識障害で搬送された。くも膜下出血の診断で、破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を施行された。発症後3か月の頭部CTを図に示す。この患者に出現しやすい症状はどれか。
図
選択肢
1 上着の左右を間違えて袖を通す。
2 ジェスチャーの模倣ができない。
3 移動する時に左側の人や物にぶつかりやすい。
4 知っている人なのに声を聞かないとわからない。
5 担当理学療法士に毎日初対面のように挨拶をする。
解答
正解5(担当理学療法士に毎日初対面のように挨拶をする。)
解説

前方正中(前交通動脈領域)のクリップ像=前交通動脈瘤クリッピング後で、基底前脳障害による前向性健忘(毎日初対面のように挨拶)が最も出現しやすい。

別冊No.2の頭部CT(単純・水平断3スライス)では、下段の頭頂に近いスライスで前方正中(大脳半球間裂=前大脳動脈・前交通動脈領域)に2個の高吸収な金属クリップとアーチファクトが確認でき、破裂脳動脈瘤クリッピング後(前交通動脈瘤が最多)の所見である。中段では左右の側脳室拡大も見られる。前交通動脈瘤の破裂・クリッピングは、基底前脳(内側中隔核・Broca対角帯核)や脳弓、前部帯状回を巻き込み、新しい記憶を形成できない前向性健忘を来しやすい。担当理学療法士に毎日初対面のように挨拶をするのはこの前向性健忘の典型像であり、選択肢5が正答。他の選択肢(更衣失行=右頭頂葉、観念運動失行=左頭頂葉、左半側空間無視=右頭頂葉、相貌失認=右後頭側頭葉)に対応する頭頂葉・後頭側頭葉の限局病変はCT上認められない。

✗ 1. 誤り
上着の左右を間違えて袖を通す。
上着の左右を間違えて袖を通すのは非優位(右)頭頂葉障害の症状。CTに右頭頂葉の限局病変はなく、本例は前方正中のクリップ(前交通動脈領域)が主体で該当しない
✗ 2. 誤り
ジェスチャーの模倣ができない。
ジェスチャーの模倣ができないのは優位(左)頭頂葉障害の症状。CTに左頭頂葉病変は見られず該当しない
✗ 3. 誤り
移動する時に左側の人や物にぶつかりやすい。
移動時に左側の人や物にぶつかるのは右頭頂葉障害の症状。CTに右頭頂葉の限局病変はなく該当しない
✗ 4. 誤り
知っている人なのに声を聞かないとわからない。
顔でわからず声でわかるのは両側・右後頭側頭葉(紡錘状回)障害の症状。CTに該当領域の病変はなく該当しない
✓ 5. 正しい
担当理学療法士に毎日初対面のように挨拶をする。
記憶障害(前向性健忘):毎日初対面のように挨拶するのは新しい記憶が形成できない前向性健忘。CT下段で前方正中(前交通動脈領域)に金属クリップがあり前交通動脈瘤クリッピング後と読め、基底前脳・脳弓の障害で健忘を来す。脳室拡大も伴い最も出現しやすい症状
ポイント
  • 前交通動脈瘤破裂=前脳基底部健忘
  • 前向健忘(新規記憶の障害)が特徴
  • 失行・無視・失認は別部位の障害
比較表
症状と責任病巣
症状主な責任病巣
記憶障害(健忘)前脳基底部(前交通動脈領域)
半側空間無視右頭頂葉
着衣失行右頭頂葉
観念運動失行左頭頂〜前頭葉
相貌失認両側後頭側頭葉
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