学習トップ理由で解く 解剖学第8章 ▸ J. 脊髄神経 / Q0617

理由で解く 解剖学

Q0617 神経系

出典:鍼灸 第30回(2022) 問題16
問題
横隔膜について正しいのはどれか。
選択肢
1 呼気筋である。
2 頸神経に支配される。
3 起始部は腱中心である。
4 迷走神経は大動脈裂孔を通る。
解答
正解2(頸神経に支配される。)
解説
✗ 1. 誤り
呼気筋である。
横隔膜は収縮することでドーム状の天井が平たく押し下がり、胸腔が拡大して空気が流入する「主要な吸気筋」である。呼気は通常安静時には肺の弾性収縮による受動運動で、強制呼気時に内肋間筋や腹筋群が働く。横隔膜=呼気筋は誤り。
✓ 2. 正しい
頸神経に支配される。
横隔膜は頸神経叢から起こる「横隔神経(C3〜C5 が主体、特に C4)」が運動支配する。C4 神経根損傷(高位頸髄損傷)では両側横隔膜麻痺を来し自発呼吸が不可能となるため、「C3・4・5 keep the diaphragm alive」と覚えられる。横隔神経は前頸部を前斜角筋の前面を下行して胸郭上口から胸腔に入り、心膜の外側に沿って下行して横隔膜に到達する。筋自体は胸腹腔の境界にあるが、発生学的に頸部由来の筋が下降したため、支配神経は頸部のままという発生史の名残が支配神経との不整合を生んでいる。
✗ 3. 誤り
起始部は腱中心である。
横隔膜の起始部は胸骨部(剣状突起後面)・肋骨部(第7〜12肋骨内面)・腰椎部(右脚・左脚)で、停止部が「腱中心」である。腱中心はドーム中央の腱板で、ここに筋線維が放射状に収束する。起始と停止が逆である。
✗ 4. 誤り
迷走神経は大動脈裂孔を通る。
迷走神経(X)は食道とともに「食道裂孔(T10 レベル)」を通って腹腔に入る。大動脈裂孔(T12 レベル)を通るのは大動脈・奇静脈・胸管で、迷走神経は通らない。もう1つの大静脈孔(T8 レベル)には下大静脈+右横隔神経枝が通る。三裂孔の高さを「大静脈8・食道10・大動脈12」とセットで覚える。
ポイント
  • 横隔膜は C3〜C5(主に C4)由来の横隔神経に支配される吸気筋。起始は胸骨・肋骨・腰椎部、停止は腱中心。
  • 覚え方のコツ: 「C3・4・5 keep the diaphragm alive」「大静脈8・食道10・大動脈12」。裂孔高位は偶数のリズムで暗記。
  • 関連知識: 食道裂孔には食道+迷走神経、大動脈裂孔には大動脈+胸管+奇静脈、大静脈孔には下大静脈が通る。三裂孔の内容を一体で暗記する。
  • よくある間違い: 迷走神経を「大動脈裂孔」と誤認しやすい。迷走神経は食道に密着しながら食道裂孔を通る。
  • 臨床応用: C4 以高の高位頸髄損傷では横隔神経麻痺で自発呼吸が不能となり、人工呼吸器が必須となる。片側横隔神経麻痺でもしゃっくり様運動や奇異性運動が起こりうる。
比較表
裂孔 椎体高位 通過する主な構造
大静脈孔 T8 下大静脈・右横隔神経枝
食道裂孔 T10 食道・迷走神経
大動脈裂孔 T12 大動脈・胸管・奇静脈
解説画像
鍼灸 第30回(2022) 問題16|横隔膜について正しいのはどれか。 解説図
鍼灸 第30回(2022) 問題16|横隔膜について正しいのはどれか。
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