学習トップ理由で解く 解剖学第8章 ▸ J. 脊髄神経 / Q0616

理由で解く 解剖学

Q0616 神経系

出典:あマ指 第17回(2009) 問題18
問題
横隔膜について誤っている記述はどれか。
選択肢
1 頸神経の枝に支配される。
2 吸気筋として働く。
3 大動脈裂孔を迷走神経が通る。
4 腰椎の椎体に起始を持つ。
解答
正解3(大動脈裂孔を迷走神経が通る。)
解説
✗ 1.
頸神経の枝に支配される。
✗ 正しい。 横隔膜の運動支配は頸神経叢(C3〜C5)から出る横隔神経が担う。「C3・4・5 keeps the diaphragm alive」の語呂で有名。腰神経や脊髄神経ではなく、頸部から長く下行して胸郭を縦断する独特な走行を持つ。本記述は正しい。
✗ 2.
吸気筋として働く。
✗ 正しい。 横隔膜は収縮で尾側(腹側)に押し下がり、胸郭容積を増大させて肺への空気流入(吸気)を生じる。安静時呼吸の約70%を横隔膜が担い、残りを外肋間筋などが補助する。努力呼吸では胸鎖乳突筋・斜角筋などの呼吸補助筋も動員される。本記述は正しい。
✓ 3. 誤り
大動脈裂孔を迷走神経が通る。
横隔膜には3つの大きな裂孔があり、高さ順に「大静脈孔(T8、下大静脈)・食道裂孔(T10、食道+迷走神経前後幹)・大動脈裂孔(T12、下行大動脈+胸管+奇静脈)」と整理される。迷走神経は食道に絡みつきながら下行するため食道裂孔を通過し、大動脈裂孔を通るのは大動脈・胸管・奇静脈である。したがって「大動脈裂孔を迷走神経が通る」は誤りで、これが正解の選択肢となる。
✗ 4.
腰椎の椎体に起始を持つ。
✗ 正しい。 横隔膜の起始は腰椎部(L1〜L3椎体の前面、内側弓状靭帯・外側弓状靭帯)、胸骨部(剣状突起後面)、肋骨部(第7〜12肋軟骨内面)の3つ。腰椎椎体への起始は正しい記述である。
ポイント
  • 横隔膜3裂孔の通過物は「8(下大静脈)→10(食道+迷走神経)→12(大動脈+胸管+奇静脈)」と椎体番号で暗記する。迷走神経は食道に絡み、大動脈裂孔には心筋・反回神経枝も関連しない。
  • 覚え方のコツ: 「8・10・12の等差+2椎体」で裂孔レベルを記憶。迷走神経は「食道と一緒に旅する神経」と覚え、食道裂孔通過を確実にする。横隔神経は「C3・4・5」と連番で脳裏に刻む。
  • 関連知識: 迷走神経は頸部で頸動脈鞘内を下行し、胸部で反回神経を分岐(右は鎖骨下動脈下、左は大動脈弓下でUターン)したのち、左右の迷走神経は食道周囲で食道神経叢を形成し、最終的に前迷走神経幹(左由来中心)と後迷走神経幹(右由来中心)に再編成されて食道裂孔を通って腹腔内臓(胃・肝・腎・腸前2/3)へ至る。
  • よくある間違い: 「大動脈と迷走神経を一緒に通す」と思い込む誤り(迷走神経は食道裂孔)/下大静脈を食道裂孔と勘違いする誤り/横隔神経を胸神経由来と思い込む誤り(頸神経叢C3〜C5由来)。
  • 臨床応用: 食道裂孔ヘルニアでは胃の一部が食道裂孔から胸腔に脱出し、胸やけ・逆流性食道炎を呈する。迷走神経切断術(胃潰瘍に対して以前行われた)は前後迷走神経幹を食道裂孔付近で切離するもので、通過位置の知識が必須である。
比較表
裂孔 椎体レベル 主な通過物
大静脈孔 T8 下大静脈・右横隔神経末梢枝
食道裂孔 T10 食道・迷走神経前後幹・左右胃動脈の食道枝
大動脈裂孔 T12 下行大動脈・胸管・奇静脈
解説画像
あマ指 第17回(2009) 問題18|横隔膜について誤っている記述はどれか。 解説図
あマ指 第17回(2009) 問題18|横隔膜について誤っている記述はどれか。
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