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理由で解く 解剖学

Q0584 神経系

出典:あマ指 第13回(2005) 問題19
問題
三叉神経支配の筋はどれか。
選択肢
1 咬 筋
2 胸骨舌骨筋
3 顎舌骨筋
4 眼輪筋
解答
正解1(咬 筋) または 3(顎舌骨筋) 〈複数正答:いずれも正解〉
解説

三叉神経は3本の枝のうち第3枝の下顎神経(V3)だけが運動線維をもち、頭蓋底の卵円孔を通って咀嚼筋と口腔底の筋を支配する。咬筋と顎舌骨筋がともにこの下顎神経支配にあたるため、1と3のどちらを選んでも正解となる。

頭頸部の筋は「どの鰓弓から生じたか」で支配神経が決まる。第1鰓弓(下顎弓)から生じた筋=咀嚼筋(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)と顎舌骨筋・顎二腹筋前腹・鼓膜張筋・口蓋帆張筋は三叉神経(下顎神経)支配、第2鰓弓から生じた筋=表情筋・顎二腹筋後腹・アブミ骨筋は顔面神経支配である。一方、舌骨より下にある舌骨下筋群は鰓弓由来ではなく頸部の体節に由来するため、頸神経ワナ(C1〜C3)が支配する。つまりこの問題は「顔まわりの筋=顔面神経」と丸暗記していると解けず、噛む筋(V3)/表情をつくる筋(VII)/舌骨を引き下げる筋(頸神経ワナ)の3系統に仕分けできるかが分かれ目になる。三叉神経の残る2枝、眼神経(V1)と上顎神経(V2)は純粋な感覚枝で、支配する筋をもたない。3枝は頭蓋を出る孔も異なり、V1は上眼窩裂、V2は正円孔、V3は卵円孔を通るので、卵円孔を通った枝だけが筋を動かすと押さえておくとよい。

✓ 1. 正しい
咬 筋
咬筋は頬骨弓から下顎枝の外面・下顎角に張る強力な咀嚼筋で、下顎を引き上げて咬みしめる働きをもつ。第1鰓弓由来であり、下顎神経(V3)の枝である咬筋神経に支配される。したがって三叉神経支配の筋であり、正解の一つである。
✗ 2. 誤り
胸骨舌骨筋
胸骨舌骨筋は胸骨柄の後面や鎖骨の胸骨端から起こり、舌骨体の下縁に至る舌骨下筋群の一つで、嚥下や発声のときに舌骨を引き下げる。支配は頸神経ワナ(頸神経C1〜C3に由来する神経のループ)で、三叉神経とは無関係である。舌骨より下にある筋、と位置で覚えると顎舌骨筋と混同しにくい。
✓ 3. 正しい
顎舌骨筋
顎舌骨筋は下顎骨内面の顎舌骨筋線から舌骨に張り、左右が正中で合わさって口腔底(口腔隔膜)をつくる筋で、嚥下のときに舌骨と口腔底を持ち上げる。これも第1鰓弓由来であるため、下顎神経(V3)から出る下歯槽神経の枝=顎舌骨筋神経に支配される(咬筋神経がV3の直接の枝であるのに対し、こちらは一段先で分かれる枝である)。よって三叉神経支配の筋であり、こちらを選んでも正解となる。
✗ 4. 誤り
眼輪筋
眼輪筋は眼裂の周囲を輪状に取り巻く表情筋で、まぶたを閉じる(閉瞼・瞬目)働きをもつ。第2鰓弓由来のため顔面神経(VII)の支配であり、三叉神経支配ではない。まぶたを開く上眼瞼挙筋は動眼神経(III)支配で、閉じる眼輪筋(顔面神経)とは別系統なので、開瞼と閉瞼を対にして覚えるとよい。
ポイント
  • 三叉神経で運動線維をもつのは下顎神経(V3)だけ。眼神経(V1)と上顎神経(V2)は純粋な感覚枝で、支配する筋をもたない。
  • 3枝は頭蓋を出る孔が違う——V1眼神経=上眼窩裂、V2上顎神経=正円孔、V3下顎神経=卵円孔。運動線維はV3だけなので、卵円孔を通った枝だけが筋を支配する。
  • 下顎神経が支配する筋は、咀嚼筋4つ(咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋)+顎舌骨筋・顎二腹筋前腹・鼓膜張筋・口蓋帆張筋。顎二腹筋は前腹が下顎神経、後腹が顔面神経と、1つの筋で支配が分かれる代表例。
  • 覚え方は鰓弓で仕分ける。第1鰓弓=三叉神経、第2鰓弓=顔面神経(表情筋・顎二腹筋後腹)、第3鰓弓=舌咽神経、第4・6鰓弓=迷走神経。
  • 舌骨下筋群(胸骨舌骨筋・肩甲舌骨筋・胸骨甲状筋・甲状舌骨筋)は鰓弓由来ではなく頸神経ワナ(C1〜C3)の支配。ただし甲状舌骨筋だけは例外で、C1の線維が舌下神経に乗って走る甲状舌骨筋枝が支配する。舌骨の上にあってV3支配の顎舌骨筋との区別も問われやすい。
  • 重要用語: 三叉神経, 下顎神経(V3), 卵円孔, 咀嚼筋, 顎舌骨筋, 頸神経ワナ, 甲状舌骨筋枝 を正確に理解しておくこと。
比較表
筋支配神経由来・所属主な働き
咬筋三叉神経(下顎神経V3・咬筋神経)第1鰓弓・咀嚼筋下顎を引き上げて咬みしめる
顎舌骨筋三叉神経(下顎神経V3・顎舌骨筋神経)第1鰓弓・舌骨上筋群口腔底をつくり舌骨を挙上する
顎二腹筋 前腹三叉神経(下顎神経V3)第1鰓弓・舌骨上筋群舌骨の挙上・開口を助ける
顎二腹筋 後腹顔面神経(VII)第2鰓弓・舌骨上筋群舌骨を後上方へ引く
眼輪筋顔面神経(VII)第2鰓弓・表情筋まぶたを閉じる(閉瞼・瞬目)
上眼瞼挙筋動眼神経(III)眼窩の筋まぶたを開く(開瞼)
胸骨舌骨筋頸神経ワナ(C1〜C3)頸部体節・舌骨下筋群舌骨を引き下げる
甲状舌骨筋舌下神経に伴って走るC1(甲状舌骨筋枝)頸部体節・舌骨下筋群舌骨を引き下げる/喉頭を挙上する
解説画像
あマ指 第13回(2005) 問題19|三叉神経支配の筋はどれか。 解説図
あマ指 第13回(2005) 問題19|三叉神経支配の筋はどれか。
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