学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §9 疾患別各論 骨および軟部腫瘍 / QJ34P059

理由で解く 柔道整復師

QJ34P059 整形外科学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問59
問題
転移性骨腫瘍で正しいのはどれか。
選択肢
1 原発巣の症状が先行する。
2 疼痛の寛解・増悪を繰り返す。
3 長管骨の骨幹端部に好発する。
4 溶骨性病変が多い。
解答
正解4(溶骨性病変が多い。)
解説

転移性骨腫瘍は骨にできる悪性腫瘍のなかで最も多く、その病変の大半は骨が溶けて抜ける「溶骨性」である。したがって正しいのは 4

骨に住みついた癌細胞は、PTHrP や RANKL といった物質を介して破骨細胞を活性化させる。つまり癌細胞が直接骨を削るのではなく、癌が破骨細胞をけしかけて骨を壊させ、その跡地で増殖するのが転移性骨腫瘍の本質である。この機序から、単純エックス線では骨が虫食い状に抜けた溶骨性像が典型となり、病的骨折や高カルシウム血症を招きやすい。血液検査では ALP が骨転移のスクリーニング指標となり(造骨性転移や広範な骨破壊で上昇する)、前立腺癌では PSA が高値を示す。例外的に骨を作らせる造骨性(硬化性)転移を示す代表が前立腺癌で、乳癌は溶骨性が主体だが造骨性が混じることもある。転移先は赤色骨髄が豊富で血流の遅い脊椎・骨盤・肋骨、および大腿骨や上腕骨の近位側に集中し、肘・膝より末梢への転移はまれである。とくに脊椎転移では、腫瘍や圧潰した椎体が脊髄・馬尾を圧迫して下肢麻痺・膀胱直腸障害をきたすことがあり、これらを認めたら施術を続けず直ちに医師へつなぐ。なお、溶骨性病変をきたすが「転移」ではない疾患として多発性骨髄腫(骨髄の形質細胞が腫瘍化した原発性の造血器腫瘍。頭蓋骨の打ち抜き像が典型)があり、転移性骨腫瘍とは別枠で整理しておく。

✓ 4. 正しい
溶骨性病変が多い。
破骨細胞が活性化されて骨吸収が進むため、溶骨性病変が大多数を占める。造骨性を示すのは前立腺癌が代表で、乳癌では混合型もみられるが、全体としては溶骨性が主体と覚えてよい。溶骨が進むと骨は容易に折れるため、軽い外力での病的骨折や、血中へカルシウムが流れ出すことによる高カルシウム血症(口渇・多尿・意識障害)に注意する。
✗ 1. 誤り
原発巣の症状が先行する。
原発巣が先に見つかるとは限らない。腰背部痛や病的骨折など骨転移の症状が初発症状となり、その精査で肺癌・腎癌・甲状腺癌などが発見される例は珍しくない。柔道整復師の臨床では、中高年で外傷歴に見合わない持続痛・夜間痛がある場合、既往のがんの有無にかかわらず悪性腫瘍を鑑別に置き、速やかに医師へ紹介する姿勢が求められる。とくに下肢の脱力やしびれ、排尿・排便の異常を伴うときは脊椎転移による脊髄圧迫を疑い、緊急に対応する。
✗ 2. 誤り
疼痛の寛解・増悪を繰り返す。
痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返すのは変形性関節症など機械的な要因による痛みの特徴である。転移巣の痛みは腫瘍の増大とともに持続性・進行性に強くなり、安静にしても和らがず、夜間にも眠りを妨げる。「休めば楽になる痛みかどうか」を問診で確かめることが、鑑別の実践的な手がかりになる。
✗ 3. 誤り
長管骨の骨幹端部に好発する。
骨幹端部を好発部位とするのは骨肉腫である(同じ原発性骨腫瘍でも骨巨細胞腫は骨端、ユーイング肉腫は骨幹が好発なので、「原発性=骨幹端」とひとまとめにはできない)。転移は血流に乗って運ばれるため、成人で赤色骨髄が残る脊椎・骨盤・肋骨・胸骨と、大腿骨・上腕骨の近位側(骨幹〜近位)に生じやすい。「骨肉腫は長管骨の骨幹端(膝周囲)、転移性は脊椎・骨盤・肋骨と長管骨の近位」と対にして押さえると混同しにくい。
ポイント
  • 骨の悪性腫瘍で最も多いのは転移性骨腫瘍。原発巣は肺癌・乳癌・前立腺癌・腎癌・甲状腺癌が代表。
  • 癌細胞が破骨細胞を活性化させるため溶骨性が多数派。造骨性の代表は前立腺癌。
  • 好発部位は赤色骨髄が豊富な脊椎・骨盤・肋骨と、大腿骨・上腕骨の近位側。肘・膝より末梢はまれ。
  • ALPは骨転移のスクリーニング指標(造骨性転移・広範な骨破壊で上昇)。前立腺癌ではPSA高値。
  • 痛みは持続性・進行性で夜間痛・安静時痛を伴う。病的骨折と高カルシウム血症が要注意の合併症。
  • 脊椎転移では脊髄圧迫による下肢麻痺・膀胱直腸障害に注意。疑えば施術を続けず直ちに医師へ。
  • 骨転移が先に見つかることもある。原因の説明がつかない持続痛は医師へ紹介する。
  • 溶骨性でも「転移ではない」疾患に多発性骨髄腫(形質細胞の原発性腫瘍、頭蓋骨の打ち抜き像)がある。
比較表
比較項目溶骨性転移造骨性(硬化性)転移
頻度多数を占める少ない
代表的な原発巣肺癌・乳癌(混合型のこともある)・腎癌・甲状腺癌・消化器癌前立腺癌(代表的な例外)
単純エックス線像骨が抜けて黒く写る(虫食い状)骨が白く濃く写る
血液検査高カルシウム血症をきたしやすい。ALPも上昇しうるALPが著明に上昇。前立腺癌ではPSA高値
起こりやすい問題病的骨折・高カルシウム血症病的骨折は比較的少ない
比較項目転移性骨腫瘍骨肉腫(原発性)
好発年齢中高年10歳代
好発部位脊椎・骨盤・肋骨、長管骨の近位側長管骨の骨幹端部(膝周辺に多い)
病変数多発することが多い単発が原則
血液検査ALP上昇(骨転移のスクリーニング指標)、前立腺癌ではPSA高値血清ALPが高値になりやすい(成長期は生理的にも高値で解釈に注意)
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