学習トップ理由で解く 柔道整復師整形外科学 ▸ §4 総論 整形外科的治療法 / QJ34P057

理由で解く 柔道整復師

QJ34P057 整形外科学

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午後 問57
問題
人工関節形成術で正しいのはどれか。
選択肢
1 人工材料にセラミックは使用しない。
2 急性期の感染性関節疾患には行わない。
3 手指関節は適応でない。
4 高齢者では行わない。
解答
正解2(急性期の感染性関節疾患には行わない。)
解説

人工関節形成術は、破壊された関節面を金属・ポリエチレン・セラミックなどの人工材料に置き換えて、除痛と可動域・支持性の再建を図る手術です。活動性(急性期)の関節感染は最も重要な禁忌であり、正答は2です。

なぜ感染だけが特別扱いされるのかを、インプラントの性質から理解しておくと忘れません。人工関節は血流のない異物です。細菌がその表面に付着すると、多糖体の膜(バイオフィルム)をつくって身を守るため、白血球も抗菌薬も届かなくなります。つまり「入れた瞬間に、免疫の届かない細菌の住処を作ってしまう」ことになり、感染は鎮まらず、早期の抜去・再手術に至ります。したがって急性期の化膿性関節炎では、まず関節穿刺・洗浄・デブリドマンと全身抗菌薬で感染を鎮静化させ、炎症反応が陰性化して十分な期間が経ってから、あらためて二期的に人工関節を行うのが原則です。主な適応は、保存療法で除痛が得られない変形性股・膝関節症、関節リウマチ、特発性大腿骨頭壊死症などで、これらには寛骨臼側とあわせて置換する全置換術(THA)が行われます。大腿骨頸部内側骨折(Garden III・IV型)も人工関節の適応ですが、こちらで標準的に行われるのは骨頭だけを置き換える人工骨頭置換術(半関節形成術=hemiarthroplasty)であり、全置換とは術式も適応判断も異なる点を区別して覚えてください。

✓ 2. 正しい
急性期の感染性関節疾患には行わない。
活動性の感染下では、インプラント表面にバイオフィルムが形成されて感染制御が不可能になるため、絶対的禁忌です。感染が疑われる関節では、人工関節を急がず、まず起炎菌の同定と感染鎮静化を優先し、沈静化を確認したうえで二期的置換を計画します。
✗ 1. 誤り
人工材料にセラミックは使用しない。
セラミック(アルミナ、ジルコニアなど)は実際に広く使われています。硬く摩耗しにくいうえに親水性が高く、摩耗粉が引き起こす骨溶解(ゆるみの主因)を減らせるため、股関節の骨頭ボールや摺動面に採用されています。材料は金属(チタン合金、コバルトクロム合金)、超高分子量ポリエチレン、セラミックを組み合わせて使うのが標準です。
✗ 3. 誤り
手指関節は適応でない。
関節リウマチによるMP関節やPIP関節の高度破壊・変形に対して、シリコン製の人工指関節置換術が行われます。股・膝ほど数は多くありませんが、肩・肘・足関節を含め、荷重関節以外にも適応は広がっています。
✗ 4. 誤り
高齢者では行わない。
むしろ高齢者が主たる対象です。人工関節には耐用年数(摩耗・ゆるみによる再置換の問題)があるため、活動性が高く残りの人生が長い若年者ほど適応は慎重に判断され、逆に高齢者では良い適応となります。年齢そのものではなく、全身状態・活動度・感染巣の有無で判断します。
ポイント
  • 絶対的禁忌は「活動性の感染」。インプラント表面のバイオフィルムで抗菌薬も免疫も無効になるため。
  • 感染例は、洗浄・デブリドマン+抗菌薬で沈静化させてから二期的に置換する。
  • 術式の使い分け:大腿骨頸部内側骨折には人工骨頭置換術(半置換)、変形性股関節症・関節リウマチ・大腿骨頭壊死にはTHA(全置換)。
  • 材料は金属・超高分子量ポリエチレン・セラミックの組合せ。セラミックは摩耗が少なく骨溶解を抑える。
  • 適応関節は股・膝が中心だが、肩・肘・足・手指(RAのMP/PIP)にも及ぶ。
  • 耐用年数の問題から、慎重になるのは高齢者ではなく若年者側。
比較表
適応となる状況避ける・慎重にする状況
病態変形性股・膝関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死(→全置換/THA)/大腿骨頸部内側骨折(→人工骨頭置換術=半置換)活動性の化膿性関節炎・骨髄炎(絶対的禁忌)
年齢高齢者(活動度が落ち着き、耐用年数内で経過しやすい)若年者(再置換の可能性が高く適応は慎重)
全身状態手術・リハビリに耐えうるコントロール不良の全身感染、高度な易感染状態
目的除痛が第一、次いで可動域と支持性除痛以外の目的だけでの安易な適応
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