学習トップ理由で解く 柔道整復師必修問題 ▸ §17 肩関節烏口下脱臼の診察および整復 / QJ34A018

理由で解く 柔道整復師

QJ34A018 必修問題

出典:第34回柔道整復師国家試験(2026)午前 問18
問題
肩関節烏口下脱臼に対するスティムソン法で正しいのはどれか。
選択肢
1 約30分間重錘牽引する。
2 重錘の重さは約10kgとする。
3 重錘牽引中に肩関節を軽度内・外転させる。
4 重錘を落とさないようにしっかり把持させる。
解答
正解2(重錘の重さは約10kgとする。)
解説

スティムソン(Stimson)法は、腹臥位で患肢を下垂させ、上肢の自重と重錘による持続牽引で筋の攣縮がゆるむのを待つ整復法です。重錘の重さは本邦の成書で約10kgとされ、本問の正答もこれです。

患者を診察台の上で腹臥位にし、患側上肢を台の縁から垂らして、手関節部にバンドなどで重錘を装着します。重力方向の一定した牽引が続くと、三角筋・大胸筋・肩甲下筋などの防御性収縮が徐々に弱まり、骨頭が自然に関節窩へ戻ります。牽引は時間を区切って評価するのが原則で、10〜20分程度でいったん整復の有無を確認し、得られなければ肩甲骨を内方へ押すなどの補助操作を加えるか、他の方法へ切り替えます。てこの原理を使わないため、腋窩神経損傷や関節唇・骨への追加損傷が起こりにくいのが最大の利点です。重要なのは「牽引の一定性」と「患者の脱力」で、この2つが崩れると整復されません。

✓ 2. 正しい
重錘の重さは約10kgとする。
本邦の成書では重錘は約10kgとされています。軽すぎれば筋の攣縮に打ち勝てず、重すぎれば疼痛でかえって防御性収縮を招くため、その中間としてこの重さが用いられます(文献により幅があり、海外文献では4〜5kg程度の記載もあります)。本問はこの成書記載を問うものです。
✗ 1. 誤り
約30分間重錘牽引する。
時間を先に決めて牽引し続ける方法ではありません。10〜20分程度でいったん整復の有無を確認し、得られなければ肩甲骨を内方へ押す補助操作を加えるか他法へ切り替える、という手順で進めます。漫然と牽引を延長すると疼痛やしびれが強まるうえ、評価と切り替えの機会を失います。
✗ 3. 誤り
重錘牽引中に肩関節を軽度内・外転させる。
この方法の主役は「一定方向の持続牽引」です。内転・外転を加えると牽引の向きが揺らぎ、そのたびに筋が再び緊張して弛緩が振り出しに戻ります。牽引中は肢位を保ち、動かさずに待ちます。
✗ 4. 誤り
重錘を落とさないようにしっかり把持させる。
握らせると前腕から上腕の筋が働き、狙っている脱力が得られません。重錘は手関節にバンドで確実に固定し、患者には「腕の力を完全に抜いてください」と伝えて、落下の心配をなくした状態で待たせます。
ポイント
  • 体位は腹臥位、患肢を診察台の縁から下垂させる。上肢の自重+重錘が牽引力になる。
  • 重錘は本邦の成書で約10kg。手関節にバンドで固定し、握らせない(握ると筋が働き弛緩しない)。
  • 牽引時間は先に決め打ちせず、時間を区切って評価する(10〜20分程度で整復の有無を確認し、無効なら補助操作か他法へ)。
  • てこを用いない愛護的な方法で、追加損傷のリスクが低い。牽引中は肢位を動かさない。
  • 整復の確認:肩峰下の陥凹(三角筋部の張りの消失)とモーレンハイム窩の膨隆が消え、自動運動が可能になる。整復後は必ず腋窩神経(三角筋部の知覚)と橈骨動脈拍動を確認する。
比較表
整復法原理体位・要点注意点
スティムソン法自重+重錘の持続牽引で筋弛緩を待つ腹臥位・患肢下垂、約10kgを手関節に、時間を区切って評価患者を脱力させる。牽引中は動かさない
ヒポクラテス法牽引+踵を支点にしたてこ背臥位、術者の踵を腋窩に当て長軸牽引腋窩の神経・血管を圧迫しうる
コッヘル法外旋→内転→内旋の回旋てこ屈曲位で段階的に操作骨折を合併した例では危険
ゼロポジション牽引法肩甲棘と上腕骨長軸を一致させ筋の張力を最小化約150°挙上位で長軸牽引牽引方向の設定精度が要る
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