学習トップ理由で解く 柔道整復師一般臨床医学 ▸ §15 主要な疾患 血液疾患 / QJ33P037

理由で解く 柔道整復師

QJ33P037 一般臨床医学

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問37
問題
巨赤芽球性貧血の原因になるのはどれか。
選択肢
1 胃全摘出術
2 胆嚢摘出術
3 虫垂切除術
4 結腸切除術
解答
正解1(胃全摘出術)
解説

巨赤芽球性貧血はビタミンB12または葉酸の欠乏で起こります。B12の吸収に必須の内因子は胃の壁細胞がつくるため、胃を全部摘出すると数年後に発症します。正答は1です。

食物中のビタミンB12はタンパク質と結合しており、胃酸とペプシンによって遊離したあと、胃底腺の壁細胞が分泌する内因子と結合し、その複合体として回腸末端で吸収されます。胃全摘ではこの内因子が完全に失われるため、B12はほとんど吸収できなくなります。ビタミンB12と葉酸はDNA合成に不可欠なので、欠乏すると細胞核の成熟だけが遅れ、細胞質ばかりが大きく育った巨赤芽球が骨髄にあふれ、末梢血では大球性正色素性貧血(MCV高値)を示します。肝臓に3〜5年分の貯蔵があるため、術直後ではなく数年遅れて症状が現れるのが特徴です。同じ機序で、自己免疫性の萎縮性胃炎により内因子が失われるものを悪性貧血と呼びます。

✓ 1. 正しい
胃全摘出術
胃底腺の壁細胞が失われて内因子が分泌されなくなり、ビタミンB12を吸収できなくなります。肝臓の貯蔵が尽きる術後数年で巨赤芽球性貧血を発症するため、胃全摘後はビタミンB12の定期的な補充(筋注など)と、血液検査による経過観察が欠かせません。
✗ 2. 誤り
胆嚢摘出術
胆嚢は肝臓でつくられた胆汁を貯めて濃縮する袋であり、摘出しても胆汁は肝臓から十二指腸へ流れ続けます。術後に脂肪の多い食事で下痢しやすくなることはありますが、内因子の分泌やビタミンB12の吸収経路には関与しないため、巨赤芽球性貧血の原因にはなりません。
✗ 3. 誤り
虫垂切除術
虫垂は盲腸から突出したリンパ組織に富む小器官で、栄養素の消化・吸収はほとんど担っていません。切除しても消化吸収機能は保たれ、造血に必要なビタミンの供給が損なわれることはありません。
✗ 4. 誤り
結腸切除術
結腸のおもな役割は水分と電解質の吸収、および便の形成であり、ビタミンB12の吸収は行いません。B12が吸収されるのは小腸の終わりである回腸末端で、ここを広範囲に切除した場合にはB12欠乏が問題になりますが、結腸の切除だけでは巨赤芽球性貧血は起こりません。
ポイント
  • ビタミンB12の吸収には「胃の壁細胞がつくる内因子」と「回腸末端」の両方が必要。どちらが欠けても巨赤芽球性貧血になる。
  • 胃全摘後は肝臓の貯蔵(3〜5年分)が尽きてから発症するため、数年遅れて現れる。
  • 血液所見は大球性正色素性貧血(MCV高値)。無効造血によりLDH上昇・間接ビリルビン軽度上昇を伴い、汎血球減少をきたすこともある。
  • ビタミンB12欠乏ではハンター舌炎や、四肢のしびれ・深部感覚障害(亜急性連合性脊髄変性症)などの神経症状が加わる。葉酸欠乏では神経症状は出にくい。
  • MCVで方向づける:小球性なら鉄欠乏性貧血、大球性なら巨赤芽球性貧血。原因検索のために医療機関での血液検査をすすめる。
比較表
項目巨赤芽球性貧血鉄欠乏性貧血
欠乏する物質ビタミンB12または葉酸
MCV(赤血球の大きさ)大球性(高値)小球性(低値)
MCHC(色素)正色素性低色素性
代表的な原因胃全摘、悪性貧血、回腸末端の切除、偏食・妊娠(葉酸)慢性出血(月経過多・消化管出血)、成長期・妊娠
特徴的な所見ハンター舌炎、神経症状(B12欠乏)、LDH高値さじ状爪(スプーンネイル)、異食症、口角炎
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