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理由で解く 柔道整復師

QJ33P023 リハビリテーション医学

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午後 問23
問題
20歳の男性。高速道路で自動車運転中に横転して受傷した。搬送先の病院で撮影した左上腕の単純エックス線写真(別冊No.1)を別に示す。左手に運動麻痺がみられ、急性期治療後も麻痺は残存している。使用すべき装具はどれか。
図
選択肢
1 把持装具
2 短対立装具
3 手背屈装具
4 ナックルキャスト
解答
正解3(手背屈装具)
解説

左上腕の骨折後に左手の運動麻痺が残存——上腕骨の後面を回る橈骨神経の麻痺(下垂手)が典型である。手関節を背屈位に保持する3の手背屈装具が適応となる。

橈骨神経は上腕骨の後面を橈骨神経溝(らせん溝)に沿って外下方へ回り込むため、上腕骨骨幹部の骨折では骨片や腫脹によって直接ダメージを受けやすい(骨幹部遠位1/3の骨折はHolstein-Lewis骨折と呼ばれ、とくに橈骨神経麻痺の合併で知られる)。麻痺すると手関節の背屈、MP関節の伸展、母指の外転・伸展ができなくなり、手が力なく垂れる下垂手(drop wrist)となる。手指を曲げる屈筋群(正中・尺骨神経支配)は残っているので、握る力自体はあるのに手関節が固定できないため、腱が有効に働かず物をつかめない。そこで手関節を軽度背屈位に保持してやると、残存する屈筋群が本来の張力を発揮でき、握り動作が実用レベルに戻る。同時に手関節屈曲位での拘縮や伸筋腱の過伸長を防ぐ意味もある。橈骨神経麻痺は牽引・圧迫による一過性のものなら数か月で回復することが多いので、回復を待つ間は装具で肢位を守りながら、他動運動で関節可動域を維持していくのが基本方針となる。

✗ 1. 誤り
把持装具
把持装具(手関節駆動式把持装具・テノデーシス装具)は、残存している手関節背屈の力をリンク機構で母指と示指・中指のつまみ動作に変換する装具である。主にC6レベルの頸髄損傷が対象になる。本例は背屈そのものが麻痺しているため、装具を動かす原動力がなく機能しない。
✗ 2. 誤り
短対立装具
対立装具は母指の対立位を保つ装具で、正中神経麻痺による母指球筋の萎縮(猿手)で母指の対立ができない場合に用いる。手関節を含まないものが短対立装具、含むものが長対立装具。本例で失われているのは背屈・伸展であり、対立は保たれているため適応が異なる。
✓ 3. 正しい
手背屈装具
橈骨神経麻痺による下垂手に対する標準的な装具。いわゆるコックアップ・スプリントで、手関節を軽度背屈位に保持することで手指屈筋を効かせて把持動作を可能にし、手関節屈曲拘縮も予防する。神経の回復までの機能代償と変形予防を同時に担う。
✗ 4. 誤り
ナックルキャスト
MP関節の過伸展を抑えて軽度屈曲位に保つ装具で、尺骨神経麻痺による鷲手(MP関節過伸展+IP関節屈曲)の変形予防・矯正に用いる。虫様筋・骨間筋の脱落を補う目的であり、手関節背屈の消失を補う本例の課題には対応しない。
ポイント
  • 上腕骨骨幹部骨折 → 橈骨神経麻痺 → 下垂手。橈骨神経溝(らせん溝)を走行するという解剖から必ず導けるようにする。
  • 下垂手には手背屈装具(コックアップ・スプリント)。手関節を背屈位に保持し、残存する手指屈筋を活かして把持を可能にする。
  • 末梢神経麻痺と装具の対応:橈骨神経=下垂手→手背屈装具/正中神経=猿手→対立装具/尺骨神経=鷲手→ナックルキャスト(虫様筋バー)。
  • 把持装具は「手関節背屈の力を、つまみに変換する」装具。背屈が残っていることが前提で、C6頸髄損傷が主な対象。
  • 装具装着中も他動的な関節可動域訓練を続け、拘縮を防ぎながら神経回復を待つ。
比較表
装具主な対象特徴的な変形・障害目的
把持装具C6頸髄損傷手指の随意運動が消失、手関節背屈は残存背屈の力をリンクでつまみ動作に変換
短対立装具正中神経麻痺猿手(母指対立不能・母指球萎縮)母指を対立位に保持
手背屈装具橈骨神経麻痺下垂手(手関節背屈・手指伸展不能)手関節を背屈位に保持し把持を可能にする
ナックルキャスト尺骨神経麻痺鷲手(MP過伸展・IP屈曲)MP関節の過伸展を防ぎ軽度屈曲位に保つ
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