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理由で解く 柔道整復師

QJ33A127 病理学概論

出典:第33回柔道整復師国家試験(2025)午前 問127
問題
乳癌で誤っているのはどれか。
選択肢
1 HER2の過剰発現は予後良好因子とされる。
2 近年日本では若年者に増加している。
3 組織学的には腺癌が多い。
4 男性にも発生する。
解答
正解1(HER2の過剰発現は予後良好因子とされる。)
解説

HER2の過剰発現は乳癌の増殖能の高さを反映し、本来は予後不良因子とされる。誤っているのは1。

乳癌は乳管や小葉の上皮から発生する腺癌で、ホルモン受容体(ER・PgR)とHER2の有無によって性格が大きく分かれる。HER2は細胞膜にある増殖因子受容体で、遺伝子増幅によって過剰に発現するとその癌は増殖が速く、転移・再発しやすい。ここで区別したいのが「予後因子(放っておいたときの悪さ)」と「効果予測因子(その薬が効くかどうか)」で、HER2陽性は予後不良因子であると同時に抗HER2薬(トラスツズマブなど)の効果予測因子でもある。したがって現在の治療成績は改善しているが、HER2陽性そのものが良好のしるしになるわけではない。ER・PgR陽性型は比較的おとなしく内分泌療法が奏効し、ER・PgR・HER2いずれも陰性のトリプルネガティブは化学療法が主体となる。

✓ 1. これが答え(誤っている記述)
HER2の過剰発現は予後良好因子とされる。
逆で、HER2の過剰発現・遺伝子増幅は増殖能が高く再発しやすいことを示す予後不良因子である。ただし同時に抗HER2薬がよく効くことの目印でもあるため、免疫組織化学やFISHでHER2の状態を調べたうえで治療方針を決める。予後因子と効果予測因子を分けて理解しておくと、この種の設問で迷わない。
✗ 2. 正しい記述(答えではない)
近年日本では若年者に増加している。
日本の乳癌罹患率は増加が続いており、年齢分布も欧米に比べて若く、40歳代後半から50歳代前半にピークがある。初経の早期化・閉経の遅れ、晩婚・少産などによるエストロゲン曝露期間の延長が背景として挙げられる。若い人の乳房のしこりを年齢だけで軽く見ず、受診をすすめる姿勢が大切である。
✗ 3. 正しい記述(答えではない)
組織学的には腺癌が多い。
乳腺は分泌腺なので、そこから発生する癌も腺癌である。大部分は乳管上皮に由来する浸潤性乳管癌で、小葉癌がこれに次ぐ。非浸潤癌(DCIS・LCIS)は基底膜を越えていない段階で、転移をきたさない。
✗ 4. 正しい記述(答えではない)
男性にも発生する。
男性にも退縮した乳腺組織があり、男性乳癌は全乳癌の1%程度と少数ながら確かに存在する。乳輪下の硬いしこりとして気づかれることが多く、「男性だから乳癌ではない」と考えられて発見が遅れやすい。男性の胸部のしこりも乳腺疾患の可能性を含めて扱い、医療機関の受診につなげる。
ポイント
  • HER2過剰発現=増殖能が高く再発しやすい「予後不良因子」。同時に抗HER2薬の「効果予測因子」でもある。
  • ER・PgR陽性は比較的予後良好で内分泌療法が有効。トリプルネガティブは化学療法が主体。
  • 乳癌の組織型は腺癌が大部分で、浸潤性乳管癌が最多。
  • 日本では罹患率が増加傾向にあり、欧米より若い年代(40歳代後半〜50歳代前半)にピークがある。
  • 男性乳癌は全乳癌の約1%。頻度は低いが存在するので、性別で除外しない。
比較表
サブタイプER・PgRHER2おおまかな予後
(治療を行わない場合)
治療の柱
ホルモン受容体陽性型陽性陰性比較的良好内分泌(ホルモン)療法
ホルモン受容体陽性・HER2陽性型陽性陽性中間内分泌療法+抗HER2薬+化学療法
HER2陽性型陰性陽性不良抗HER2薬+化学療法
トリプルネガティブ陰性陰性不良化学療法

※「おおまかな予後」列は予後因子としての評価(治療を行わなかった場合の見通し)だけを示している。HER2陽性は予後不良因子であると同時に抗HER2薬の効果予測因子でもあり、抗HER2薬を含む治療によって予後は大きく改善する。予後因子(放っておいたときの悪さ)と効果予測因子(その薬が効くかどうか)は別の軸として分けて覚えること。

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