学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §15 各論(骨折) 頭部・体幹 / QJ32P076

理由で解く 柔道整復師

QJ32P076 柔道整復理論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午後 問76
問題
チャンス(Chance)骨折の発生機転はどれか。2つ選べ。
選択肢
1 椎体全体への圧迫力
2 椎弓への強い牽引力
3 椎体前方支柱部への圧迫力
4 椎体中間支柱部への捻転力
解答
正解2(椎弓への強い牽引力)、3(椎体前方支柱部への圧迫力)
解説

この問題は「2つ選べ」。チャンス骨折はシートベルト(腰ベルト)を支点に体幹が前方へ折れ曲がった際に生じる屈曲・伸延損傷で、前方は圧迫、後方は引き裂かれる。よって2と3の組合せが発生機転にあたる。

胸腰椎移行部を Denis の三支柱(前方=椎体前2/3と前縦靱帯、中間=椎体後1/3と後縦靱帯、後方=椎弓・椎間関節・棘上棘間靱帯)で考えると、損傷型の違いが整理できる。腰ベルトだけを装着した状態で急減速すると、ベルトの位置が回転軸になって体幹が前屈し、椎体の前方支柱には圧迫(屈曲)力が、椎弓や棘突起などの後方要素には強い牽引(伸延)力が同時に働く。その結果、椎体前方が潰れながら後方要素が水平に裂けるように離開する横断骨折となり、これがチャンス骨折である。脊椎の後方要素が破綻しているため不安定になりやすく、腹腔内臓器損傷を合併することも多い。この機転が疑われる患者では体幹をねじらず一体で保持し、脊椎固定のうえ速やかに搬送する。

✓ 2. 正しい
椎弓への強い牽引力
前屈の回転軸が椎体より前方(ベルトの位置)にあるため、後方要素は引き離される方向に力を受ける。椎弓・棘突起・棘間靱帯が水平に裂け、後方支柱が破綻することが本骨折の本質。
✓ 3. 正しい
椎体前方支柱部への圧迫力
同じ前屈の運動によって、椎体の前方は押し潰される。前方は圧迫、後方は伸延という相反する力が一つの椎骨に同時に働くのがチャンス骨折の成り立ちである。
✗ 1. 誤り
椎体全体への圧迫力
椎体全体に軸方向の圧迫が加わって椎体が四方に破裂するのは破裂骨折(バースト骨折)の機転。骨片が脊柱管内へ突出して神経症状を生じうる点も含めて、チャンス骨折とは別の型である。
✗ 4. 誤り
椎体中間支柱部への捻転力
回旋(捻転)が主体で三支柱が破綻するのは骨折脱臼型の機転。チャンス骨折は回旋ではなく、屈曲と伸延の組合せによって水平に裂ける損傷である。
ポイント
  • チャンス骨折=シートベルト損傷。屈曲+伸延で椎体前方が圧迫、後方要素が牽引されて水平に裂ける。
  • Denis の三支柱=前方(椎体前2/3・前縦靱帯)/中間(椎体後1/3・後縦靱帯)/後方(椎弓・椎間関節・棘上棘間靱帯)。
  • 軸圧で椎体が破裂するのは破裂骨折、回旋主体で三支柱が破綻するのは骨折脱臼。
  • 好発は胸腰椎移行部。後方支柱が破綻するため不安定になりやすい。
  • 腹腔内臓器損傷の合併に注意し、体幹をねじらず脊椎固定のうえ搬送する。
比較表
損傷型力の加わり方破綻する支柱
圧迫骨折屈曲+圧迫前方支柱のみ(比較的安定)
破裂骨折軸圧(椎体全体への圧迫)前方+中間支柱
チャンス骨折屈曲+伸延(前方は圧迫、後方は牽引)後方・中間支柱が伸延で破綻
骨折脱臼回旋・剪断が加わる三支柱すべて(最も不安定)
この問題の解説の修正を依頼する

解説に誤り・改善点があればお知らせください。件名と本文は自動入力済みです(編集できます)。お名前・メールアドレスは任意です。送信内容は玄康株式会社(黒澤一弘)に届きます。