学習トップ理由で解く 柔道整復師病理学概論 ▸ §4 退行性病変・代謝障害 / QJ32A119

理由で解く 柔道整復師

QJ32A119 病理学概論

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問119
問題
神経原性筋萎縮を示すのはどれか。
選択肢
1 皮膚筋炎
2 多発性筋炎
3 筋ジストロフィー
4 筋萎縮性側索硬化症
解答
正解4(筋萎縮性側索硬化症)
解説

神経原性筋萎縮とは、筋そのものではなく筋を支配する運動ニューロンが壊れた結果として起こる萎縮です。選択肢のうち運動ニューロンが一次的に変性するのは筋萎縮性側索硬化症(ALS)だけで、残る3つはいずれも筋線維自体が傷む筋原性の疾患です。

骨格筋は運動ニューロンから絶えず神経栄養的な刺激を受けることで、その量と質を保っています。脊髄前角細胞や運動神経の軸索が変性すると、その1本の神経が受け持っていた筋線維(運動単位)がまとめて縮むため、組織像では萎縮した線維が周囲に押しつぶされて角ばった小角化線維となり、それが地図状にひとかたまりで並ぶ群集萎縮を示します。生き残った神経が近くの脱神経線維を支配し直すと、同じ線維型が固まって配列する群化(type grouping)も現れます。これに対し筋原性萎縮では、筋線維の大小不同・壊死と再生・中心核・間質の線維化や脂肪置換が筋束内に散在し、分布が運動単位と一致しません。つまり「萎縮のかたまり方が運動単位に沿うか、ばらばらに散るか」が両者を分ける最大の手がかりです。

✓ 4. 正しい
筋萎縮性側索硬化症
上位運動ニューロン(皮質脊髄路=側索)と下位運動ニューロン(脊髄前角細胞)が選択的に変性していく疾患です。前角細胞が脱落すると、その支配下の筋線維が神経の栄養を失って脱神経性に萎縮するため、まさに神経原性筋萎縮を示します。筋原性疾患と区別する決め手になるのは、組織像・筋電図・血液検査の3点です。組織像では前述の小角化線維・群集萎縮・群化がみられ、筋電図では線維自発電位に加えて高振幅・長持続の運動単位電位が記録されます(筋原性では低振幅・短持続)。また筋自体は一次的には正常なので血清CKの上昇は軽度にとどまります(筋原性では中等度〜著明に上昇)。なおALSでは感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡が起こりにくいことが「陰性四徴」として知られていますが、これは末梢神経障害(感覚障害を伴う)や脊髄病変(感覚障害・膀胱直腸障害を伴う)との鑑別に役立つALS特有の所見です。皮膚筋炎・多発性筋炎・筋ジストロフィーなどの筋疾患でも感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害は通常生じないため、陰性四徴を筋原性との鑑別根拠に使うことはできません。混同しやすい点なので整理して覚えましょう。
✗ 1. 誤り
皮膚筋炎
自己免疫機序で筋に炎症が起こる炎症性筋疾患で、萎縮の原因は筋線維側にあります。血管周囲の免疫反応を反映して筋束の辺縁の線維が縮む筋束周辺性萎縮が特徴で、神経支配の単位とは無関係な分布です。上眼瞼の紫紅色の皮疹(ヘリオトロープ疹)や手指関節背面の紅斑(ゴットロン徴候)を伴い、悪性腫瘍の合併に注意が必要な疾患として押さえておきましょう。
✗ 2. 誤り
多発性筋炎
こちらも炎症性筋疾患で、細胞傷害性T細胞が筋線維そのものを攻撃して壊すため筋原性萎縮を示します。体幹に近い近位筋優位の筋力低下(立ち上がりや階段昇降、髪をとかす動作の困難)が主体で、筋が壊れる病気なので血清CKは著明に上昇します。皮膚症状を欠く点で皮膚筋炎と区別されます。
✗ 3. 誤り
筋ジストロフィー
筋線維膜を裏打ちする構造蛋白(デュシェンヌ型ではジストロフィン)が遺伝的に欠損・異常となり、収縮のたびに筋線維が壊れて変性・壊死と再生を繰り返す遺伝性の筋疾患です。再生が追いつかなくなると筋は脂肪組織や線維組織に置き換わり、下腿が太く見えるのに力は入らない仮性肥大が生じます。原因は最初から筋にあるので、神経原性ではなく筋原性萎縮の典型例です。動揺性歩行や登攀性起立(ガワーズ徴候)も併せて覚えておきましょう。
ポイント
  • 神経原性筋萎縮=運動ニューロンや末梢神経が障害され、二次的に筋が縮む。小角化線維・群集萎縮・群化(type grouping)が組織像の目印。
  • 筋原性筋萎縮=筋線維自体の病気。大小不同・壊死と再生・中心核・脂肪/線維組織への置換が散在性にみられる。
  • 神経原性か筋原性かを分ける根拠は組織像・筋電図・血清CKの3点。神経原性は高振幅・長持続の電位+CK軽度上昇、筋原性は低振幅・短持続の電位+CK中等度〜著明上昇。
  • ALSは上位運動ニューロン(側索)と下位運動ニューロン(前角)の両方が変性する。筋は元気なのでCK上昇は軽度にとどまる。
  • ALSの陰性四徴(感覚障害・眼球運動障害・膀胱直腸障害・褥瘡が起こりにくい)は、末梢神経障害や脊髄病変との鑑別に用いる所見。筋疾患でもこれらは通常みられないため、筋原性との鑑別根拠にはならない。
  • 皮膚筋炎・多発性筋炎・筋ジストロフィーは、原因が最初から筋にあるのですべて筋原性。
  • 病名に「筋」の字が入っていても、どこが最初に壊れるかで判断する。「筋萎縮性側索硬化症」の“側索”が神経の病気であるサイン。
  • 施術の現場で進行性の筋力低下や筋萎縮に気づいたら、原因の鑑別には神経学的評価が要るため、早めに医師へつなぐ判断をとる。
比較表
比べる点神経原性筋萎縮筋原性筋萎縮
最初に壊れる場所脊髄前角細胞・運動神経軸索筋線維そのもの
萎縮の分布運動単位ごとに地図状(群集萎縮)筋束内に散在性、線維の大小不同
組織像の特徴小角化線維、群化(type grouping)壊死と再生、中心核、脂肪・線維組織への置換
血清CK正常〜軽度上昇中等度〜著明に上昇
筋電図高振幅・長持続の電位、線維自発電位低振幅・短持続の電位
代表疾患筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、末梢神経障害筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎
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