学習トップ理由で解く 柔道整復師解剖学 ▸ §2 運動器系 / QJ32A053

理由で解く 柔道整復師

QJ32A053 解剖学

出典:第32回柔道整復師国家試験(2024)午前 問53
問題
前斜角筋と中斜角筋の間を通過するのはどれか。
選択肢
1 総頸動脈
2 内頸静脈
3 鎖骨下動脈
4 鎖骨下静脈
解答
正解3(鎖骨下動脈)
解説

前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨で囲まれる三角形の隙間を斜角筋隙(斜角筋三角)といい、ここを通り抜けるのは鎖骨下動脈と腕神経叢である。したがって正しいのは3の鎖骨下動脈。

前斜角筋は第3〜6頸椎横突起の前結節から起こり第1肋骨の前斜角筋結節に、中斜角筋は第2〜7頸椎横突起の後結節から起こり第1肋骨上面に停止する。この2つの停止部にはさまれた第1肋骨上面には鎖骨下動脈溝があり、その溝に乗るように鎖骨下動脈が走り、すぐ上後方を腕神経叢が並んで通る。これに対して鎖骨下静脈は前斜角筋の前面を回り込むので、斜角筋隙は通らない。つまり前斜角筋を境にして、後ろ=鎖骨下動脈と腕神経叢、前=鎖骨下静脈、と前後に仕切られる形になる。「動脈と神経は筋の間、静脈は筋の前」と一組で覚えると位置関係が崩れない。ただし前斜角筋を越えた先では話が変わる:鎖骨下動脈・鎖骨下静脈・腕神経叢はいずれも鎖骨と第1肋骨にはさまれた肋鎖間隙をそろって通過して腋窩へ向かうため、肋鎖間隙は静脈専用の通路ではない。本問が問うているのはあくまで前斜角筋と中斜角筋のを通るかどうかであり、そこで動脈・神経と静脈が分かれる、という一点である。なお総頸動脈と内頸静脈は迷走神経とともに頸動脈鞘に包まれ、前斜角筋よりも内側かつ前方を縦に走るので、そもそも斜角筋隙とは別の通り道である。

✓ 3. 正しい
鎖骨下動脈
鎖骨下動脈は第1肋骨上面の鎖骨下動脈溝をたどり、前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)を抜け、さらに肋鎖間隙を経て第1肋骨外側縁で腋窩動脈へと移行する。斜角筋隙の部分では腕神経叢も同じ隙間を通るため、ここが狭くなると上肢のしびれ・痛みと橈骨動脈拍動の減弱が同時に現れうる(斜角筋症候群。誘発テストはアドソン、モーリー)。試験対策としては「斜角筋隙を通るのは鎖骨下動脈と腕神経叢の2つ」と数までセットで記憶しておくとよい。
✗ 1. 誤り
総頸動脈
総頸動脈は内頸静脈・迷走神経とともに頸動脈鞘に包まれ、前斜角筋より内側前方を上行して甲状軟骨上縁の高さで内頸動脈と外頸動脈に分かれる(右は腕頭動脈から、左は大動脈弓から直接分岐)。斜角筋の間ではなく胸鎖乳突筋の深部を通る血管なので、頸部の脈管は「正中寄り=頸動脈鞘の通り道」「外側=斜角筋隙の通り道」と2系統に分けて整理しておこう。
✗ 2. 誤り
内頸静脈
内頸静脈は頸静脈孔から出て頸動脈鞘の中を総頸動脈の外側で下行し、前斜角筋の内側前方で鎖骨下静脈と合流して静脈角をつくる。走行がそもそも斜角筋隙より内側にあるため筋の間は通らない。合流点である静脈角には左に胸管、右に右リンパ本幹が注ぐという知識まで結び付けて覚えると、リンパ系の設問にもそのまま使える。
✗ 4. 誤り
鎖骨下静脈
鎖骨下静脈は前斜角筋の前面を通るため斜角筋隙は通らず、第1肋骨と鎖骨にはさまれた肋鎖間隙を走って内頸静脈と合流する。つまり動脈と静脈は前斜角筋をはさんで前後に分かれており、この一点を押さえれば動静脈の取り違えは防げる。なお鎖骨下動脈・鎖骨下静脈・腕神経叢は、その先で鎖骨と第1肋骨の間(肋鎖間隙)をそろって通る。したがって肋鎖間隙が狭くなる肋鎖症候群では橈骨動脈拍動の減弱もしびれも起こりうる(エデンテスト=肋鎖テスト)。臨床と結び付けるなら症状の違いではなく「どの関門が狭くなるか=どの誘発テストが陽性か」(斜角筋隙=アドソン/モーリー、肋鎖間隙=エデン、小胸筋下=ライト)で整理するとよい。
ポイント
  • 斜角筋隙=前斜角筋・中斜角筋・第1肋骨で囲まれる隙間。通過するのは鎖骨下動脈と腕神経叢の2つ。
  • 鎖骨下静脈は前斜角筋のを通るので斜角筋隙は通らない。合言葉は「動脈と神経は筋の間、静脈は筋の前」。
  • その先の肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)は静脈専用ではない。鎖骨下動脈・鎖骨下静脈・腕神経叢がそろって通る関門で、ここが狭くなる肋鎖症候群では橈骨動脈拍動の減弱もしびれも起こる(エデンテスト)。
  • 横隔神経(C3〜C5)も前斜角筋の前面を内下方へ下行する。静脈と同じ「前を通る組」としてまとめて覚える。
  • 総頸動脈・内頸静脈・迷走神経は頸動脈鞘に一括され、前斜角筋より内側前方を走る別ルート。
  • 内頸静脈と鎖骨下静脈の合流部が静脈角。左静脈角に胸管、右静脈角に右リンパ本幹が注ぐ。
比較表
構造前斜角筋との位置関係前斜角筋の高さでの通り道(→その先)一緒に走るもの
鎖骨下動脈後ろ(前斜角筋と中斜角筋の間)斜角筋隙(第1肋骨の鎖骨下動脈溝)→ さらに肋鎖間隙を経て腋窩へ腕神経叢
腕神経叢後ろ(前斜角筋と中斜角筋の間)斜角筋隙 → さらに肋鎖間隙を経て腋窩へ鎖骨下動脈
鎖骨下静脈斜角筋隙は通らず筋の前面を迂回 → 肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)横隔神経は同じ筋の前面を下行/肋鎖間隙では動脈・腕神経叢と合流
総頸動脈内側前方頸動脈鞘(斜角筋隙・肋鎖間隙とは無関係)内頸静脈・迷走神経
内頸静脈内側前方頸動脈鞘 → 静脈角で鎖骨下静脈と合流総頸動脈・迷走神経
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