学習トップ理由で解く 柔道整復師柔道整復理論 ▸ §2 総論 運動器損傷の診察 / QJ31P078

理由で解く 柔道整復師

QJ31P078 柔道整復理論

出典:第31回柔道整復師国家試験(2023)午後 問78
問題
高齢者の転倒リスクでないのはどれか。
選択肢
1 足元を注視して歩いている。
2 踵から接地して歩いている。
3 遠近両用メガネをかけている。
4 たくさんの薬を服用している。
解答
正解2(踵から接地して歩いている。)
解説

踵から接地する歩き方は正常な歩行パターンそのもので、つまずきを減らす方向に働く。他の3つはいずれも転倒の危険を高める要因であり、「リスクでない」のは2である。

転倒の要因は、本人側の内的要因(下肢筋力・バランス能力・視力・薬剤・認知機能・既往)と、環境側の外的要因(段差、じゅうたんの端、照明、履物、コード類)に分けて整理すると取りこぼしがない。加齢に伴う歩行の変化として、足関節背屈筋の働きが落ちて足底全体で接地する「すり足」となり、歩幅が狭く、足の振り上げ(トゥクリアランス)が低下する。この状態ではわずかな段差でも足先が引っかかる。逆に踵接地から足趾離地へと重心が滑らかに移る歩行が保たれていることは、背屈筋力と歩行リズムが維持されているサインである。評価では、内的・外的要因を一つずつ点検したうえで、下肢筋力とバランスの運動、履物と屋内環境の見直し、服薬内容について主治医・薬剤師へ相談することを具体的に勧める。

✓ 2. これが答え(転倒リスクにあたらない)
踵から接地して歩いている。
踵接地は正常歩行の初期接地相であり、足関節背屈筋が働いて足尖が持ち上がっている証拠である。つまずきの原因となるすり足・小刻み歩行とは対照的で、転倒リスクを高める所見ではない。この歩行が保てるよう、前脛骨筋の筋力と足関節可動域を維持する運動を続けてもらうとよい。
✗ 1. 転倒リスクにあたる(答えではない)
足元を注視して歩いている。
足元ばかり見て歩くと視線が下がり、前方の障害物や人・車の接近に気づくのが遅れる。頭部前傾で重心も前方へ偏りやすい。足元を見ないと不安という背景には、バランス低下や視力低下、履物の不適合が隠れていることが多く、原因の点検が必要である。
✗ 3. 転倒リスクにあたる(答えではない)
遠近両用メガネをかけている。
遠近両用レンズは下方視で近見用の度数になるため、足元や階段を見下ろしたときに像がぼけたり距離感がずれたりする。段差の踏み外しにつながるため、階段昇降や外出時のレンズの使い分けについて眼科や眼鏡店に相談するよう促す。
✗ 4. 転倒リスクにあたる(答えではない)
たくさんの薬を服用している。
多剤併用(ポリファーマシー)は転倒の代表的な危険因子である。睡眠薬・抗不安薬・抗精神病薬はふらつきや反応の遅れを、降圧薬・利尿薬は起立性低血圧をきたしうる。自己判断で中止させず、お薬手帳を持参して主治医・薬剤師に整理を相談するよう案内する。
ポイント
  • 転倒要因は内的要因(筋力・バランス・視力・薬剤・認知機能)と外的要因(段差・照明・履物・コード)に分けて点検する。
  • 危ないのはすり足・小刻み歩行。踵接地が保たれているのは背屈筋力が働いている良い所見。
  • 足元を注視する歩行は前方の情報を取り逃がし、背景にバランスや視力の問題が隠れることが多い。
  • 遠近両用レンズは下方視で足元がぼけ、階段・段差の踏み外しを招きやすい。
  • 多剤併用は独立した危険因子。中止を勧めるのではなく、主治医・薬剤師への相談につなぐ。
比較表
区分具体例介入の方向
内的要因下肢筋力低下、バランス低下、すり足歩行、視力低下、多剤服用、認知機能低下筋力・バランス運動、視力と服薬の見直しを専門職へ相談
外的要因敷居や敷物の端、暗い照明、滑る床、脱げやすい履物、電気コード段差解消、照明の追加、手すり設置、かかとが固定される履物
リスクとならない所見踵接地からつま先離地への滑らかな歩行、十分な歩幅現在の歩行能力を維持する運動を継続
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